僕の宝具が『眼鏡』だったせいで魔界に棄てられました ~地上に戻って大人しく暮らしているつもりなのに、何故か頼られて困ります~

織侍紗(@'ω'@)ん?

文字の大きさ
36 / 49

三十六話 再会

しおりを挟む
「アリス様、こんな時です。ご無理はなさらないで下さい」

 じっと真剣な眼差しで盤面に広げられた地図を睨むアリス。その背後に立つ歴戦の戦士といったような雰囲気を漂わせる壮年の男性はアリスにそう声をかけた。

「気にしないで、フランクリン。お兄様やお姉様にやらせる訳にはいかないから」

 アリスは振り向くこともせず、そう答えてからこう続けた。

「それに、私も彼もある程度の覚悟は出来て居たのだから大丈夫。そう、大丈夫よ」

「アリス様……申し訳ございません」

 その時、ドアの外からアリスを呼ぶ声が聞こえた。

「アリス様!」

 アリスは自身を呼ぶ声に対して、入室するように促す。

「いいわ、入りなさい」

「失礼致します」

 そしてアリスは入ってきた兵士に対して、盤面から視線を移すことなくこう尋ねた。

「どうしたのかしら? また悪い知らせ?」

「いえ……そういう訳では無いのですが」

「どうした? 言ってみろ」

 フランクリンが兵士に内容を告げるように促すと、兵士はこう言葉を返す。

「はい! 傭兵希望の冒険者が二人参りました」

「へぇ、こんな時に珍しいわね。で、それがどうかしたのかしら」

「アリス様のおっしゃる通り、報告する必要など無かろう? 何処かの隊に参加させとけばいいのだから」

 アリスもフランクリンもさほど興味を示す様子はない。たった二人の冒険者が参加したところで殆ど意味などないと思っていたから、それは当然のことであった。
 しかし、兵士は少し困った様子で言葉を続ける。

「それが……その内の一人がアリス様のお知り合いで、お目通りをしたいと」

「私の知り合い? こんな時に来る知り合いの冒険者なんて居たかしら」

「名はゲイルと名乗っては居るのですが……眼鏡をかけた、気弱な冒険者としてはとても頼りなさそうな青年なのですが……」

 その兵士の言葉にアリスは初めて盤面から視線を外してしまうほどの動揺を見せた。

「う、うそ! ゲイル兄! っていや、帰って貰って!」

 落ち着かない様子のアリスにフランクリンは低い声で、だが優しく声をかけた。

「アリス様、お言葉ですがここはお会いしておいた方がいいのでは? 時折呟いていた、あの・・ゲイルですよね?」

「…………」

「おい、入ってもらえ!」

「は……」

 黙り込んでしまったアリスに代わり、フランクリンは兵士に入室させるように促した。
 兵士が立ち去り暫くすると、ゲイルとミューが部屋へ姿を現す。

「アリス! 大きくなったね。それにやっぱり王女様なんだなぁ」

「ゲイル兄……ゲイル兄は全然変わらない……」

 澄んだ眼差しでアリスはじっとゲイルを見つめた。ふとゲイルの背後に居た女性に気がついたフランクリンが、こう尋ねる。

「そちらの美女は?」

「俺はミュー。ゲイルの幼なじみって感じかな? まー色々あって一緒に旅してるんだよ」

「そっか。あれから三年。ゲイル兄にも色々あるよね」

「ま、まあね……」

 自身は三年経ったなどと微塵も思ってないゲイルは苦笑いを浮かべてしまった。

「アリスもおっきくなったし、ファーガソンとか皆も大きくなったんだろうなぁ……」

「……!! 今はその名は!」

 フランクリンがゲイルを止める。がそのフランクリンをアリスが制してからゲイルにこう告げた。

「大丈夫よ。フランクリン。ゲイル兄。ファーガソンは先日処刑されました」

「……は? な、なんだって?」

 思っても見なかった言葉にゲイルは激しく動揺してしまう。

「ファーガソン殿は我が部隊の一つを率いておってな。先月のこと、先陣を切ってグーブンドルデの一部隊と一戦交えたのだが、部隊は全滅し、ファーガソン殿は捕虜として捕らえられたんだ」

「ど、どうして! どうしてそんなことに!」

「それは……」

 口篭るフランクリン。すると、またもアリスが片手で制してから口を開いた。

「私が話すわ。ファーガソンと私は婚約したの。だから私の国がグーブンドルデと戦争することになった時、私の国に来てくれたし、先陣を切って戦ってくれた。そして、王女の婚約者として捕虜になり、降伏しなかった見せしめに処刑された。以上が経緯よ」

「う、うそだ……」

「嘘なんか吐いてもしょうがないじゃない。先日、グーブンドルデから通達があったわ。ファーガソンを処刑したってね」

 そう言ってアリスは一枚の紙を盤面に広げた。ミューはその紙を見てゲイルにこう告げる。

「ゲイルには悪いけど、確かにそう書いてあるね。ファーガソンを最上級の犯罪者として処刑したって書いてある」

「ぼ、僕がもっと早く来てれば……」

 落ち込んでそう呟くゲイルに対して、アリスは自身へも語りかけるかのように、こう答えた。

「ゲイル兄は悪くないわ。そう、悪くなんかない……」

 そして天を仰ぎ、じっと一点を見つめながらフランクリンにこう告げる。

「フランクリン。ちょっと外して貰えるかしら」

「かしこまりました」

 フランクリンが扉を閉めると、部屋にはアリスが泣き喚く声が響き渡ったのだった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。 そう、ノエールは転生者だったのだ。 そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。

夏見ナイ
ファンタジー
伯爵家の三男リアムは【鑑定不能】スキル故に「無能」と追放され、辺境に捨てられた。だが、彼が覚醒させたのは神すら解析不能なユニークスキル《概念創造》! 認識した「概念」を現実に創造できる規格外の力で、リアムは快適な拠点、豊かな食料、忠実なゴーレムを生み出す。傷ついたエルフの少女ルナを救い、彼女と共に未開の地を開拓。やがて獣人ミリア、元貴族令嬢セレスなど訳ありの仲間が集い、小さな村は驚異的に発展していく。一方、リアムを捨てた王国や実家は衰退し、彼の力を奪おうと画策するが…? 無能と蔑まれた少年が最強スキルで理想郷を築き、自分を陥れた者たちに鉄槌を下す、爽快成り上がりファンタジー!

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流@3/19書籍発売!
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

処理中です...