138 / 188
第8章 変わってしまう日常編
【雇用№137】魔族襲撃 後始末編10
しおりを挟む
「それもちょっとというか大分難しいわね。今回の襲撃はかなり被害が多かったのよね。住民の死者数もかなりの数なんだけど、冒険者も何人か亡くなっているのよね。それにガンツさんじゃないけど、それなりに身体に損傷がある人もいるから……。こちらも先月よりも人数が減って期待出来そうにないのよね……。」
「そうなんですね。これだけの規模ですからね。すぐに前と同じ量の供給というのはどこも難しいですわね…。」
「そこをなんとかドラゴンファームさんの方で何卒お願いします。」
エルザさんが僕とウェルザさんに頭を下げてお願いしてくる。
「ちょっ、ちょっとエルザさんやめて下さい。そんなことされてもこちらとしては、なんとか頑張っても先月分と同数あげるのが限界ですよ。薬草の栽培による期間とそれからポーションを作成する期間がどうしてもそれだけかかりますから。」
「そこをなんとかお願いします。上からも、泣き落とししてでも、色仕掛けしてでもウンと言わせてこいって言われてるんです。この量が確保出来ないと、来月同じ規模の襲撃があったら、今回以上の惨劇になってしまいます。」
もう、涙目と涙声でウェルザさんが下から見上げてお願いしてくる。これを可愛い女性がしたものなら破壊力は抜群。ノーと言える男はいないだろう。
「わか……」
分かりましたと僕が言おうとした瞬間、ウェルザさんが僕の前に手を出してきて話を遮った。
「流石にそれでもエルザさん、難しいですわ。私達が出来ることは勿論しますし、出来る限りのサポートはさせて頂きます。役所の方もそれなりに頑張って何か案や対策を出して頂かないと……。私達だけ無茶な納期や納品数をお願いされるのは頂けませんわ」
エルザさんの顔が一瞬笑ったかと思ったらすぐに泣きそう顔に戻った。どうやらこれで落ちると思っていた様だし、僕なら確実に落とされていただろう。ウェルザさんがこの場にいてくれることに感謝である。
「そうですよね。ぐすっん。こちらばかりが要件ばかり出しておかしいですよね。」
また、ウェルザさんが泣き始めてしまった。
「そんな……。」
僕がまたエルザさんを庇おうとすると、ウェルザさんが視線を送ってきて、口を挟むのやめる。
「私共も今回の襲撃で、被害が出ており予算や人員が確保出来ない状態になっているんです。私も昨日は夜遅くまで被害状況の確認してました。」
人手不足でこの状況だと、そうなるよね。というか襲撃のある度に夜中までエルザさんは仕事してるし、頑張っているもんな。まー、その際は僕も付き合って手伝っているんだけど……。
「………。」
黙って聞いている様にウェルザさんからチラチラと鋭い視線が飛んでくる。エルザさんも涙目でこちらを下からチラチラと見上げてくる。
「………。」
助け船が僕から一向に出ないので、そらからもツラツラと役所の事情をエルザさんが僕たちに説明してくる。どれだけ人手が足りないか、どれだけ予算が逼迫しているか同情心を煽る様に訴えてくる。
「………。」
女性の涙はあいも変わらず苦手だ。泣く子と女は、何をしても助けろと誰かが言ってたし、僕の良心もそうしろと囁いてくる。心情的に非常に辛い、エルザさんを手伝いたい、でも、ウェルザさん達に迷惑をかけるのも頂けない。
「役所の現状は分かりました。あなたも非常に辛い思いをされているのね……。」
ウェルザさんが優しい言葉をエルザさんにかける。エルザさんも同情してもらえたと思って。
「では……。」
期待に満ちた目をエルザさんがウェルザさんに向けてくる。もう僕の力はないと言っていいのかも知れない。この場で力、発言権を持っているのは、僕ではなく、ウェルザさんだからだ。
「でも、その要求に対してこれまでと同様では流石にこちらも対応出来ませんわ。人手が不足しているのはこちらも同じです。ポーション代は補填して頂けますが、デーモンとの戦いで、リュウさんの装備が破損してますから、こちらも修理しないといけませんし、安全用に社員にもそれなりの装備が必要になりますもの。エルザさんなら、お分かり頂けますよね。」
「ええ、装備がないとデーモンもインプ相手では戦えませんわ。そして、装備代がポーションの代金以上に費用がかかることも分かってますわ。武器屋さんの方でも、朝から行列が並んで増したし、販売出来るものはないでしょうね。」
「ええ、そうなのよね。うちのファームもポーション作成の事業だけなら、なんとか利益は出るんだけど、魔族襲撃に対してリュウさんがメインで戦おうとすると、利益が出なくなるのよね。もう、赤字よ。あ…か…じ…。」
「わっ、分かりましたわ。リュウさんはうちの役所としても、期待の戦力ですわ。特別に魔石や討伐報酬を10%アップしますわ。」
「エルザさん。偉いわね。でもそれだと全然足りないのよ。もう一声か二声お願い出来ない?」
「うーん、でしたら私とのデート出来る権利を一回付与します。勿論朝まで。」
「それはありがたいけど、私達には、不要なものよ。リュウさんには、チルさんがいますからそういうのはちょっとねー」
エルザさんが頬を染めながら恥ずかしげに発言したが、やむなくウェルザさんの発言に撃沈。頬ではなく顔全体が恥ずかしさで真っ赤である。
「そうなんですね。これだけの規模ですからね。すぐに前と同じ量の供給というのはどこも難しいですわね…。」
「そこをなんとかドラゴンファームさんの方で何卒お願いします。」
エルザさんが僕とウェルザさんに頭を下げてお願いしてくる。
「ちょっ、ちょっとエルザさんやめて下さい。そんなことされてもこちらとしては、なんとか頑張っても先月分と同数あげるのが限界ですよ。薬草の栽培による期間とそれからポーションを作成する期間がどうしてもそれだけかかりますから。」
「そこをなんとかお願いします。上からも、泣き落とししてでも、色仕掛けしてでもウンと言わせてこいって言われてるんです。この量が確保出来ないと、来月同じ規模の襲撃があったら、今回以上の惨劇になってしまいます。」
もう、涙目と涙声でウェルザさんが下から見上げてお願いしてくる。これを可愛い女性がしたものなら破壊力は抜群。ノーと言える男はいないだろう。
「わか……」
分かりましたと僕が言おうとした瞬間、ウェルザさんが僕の前に手を出してきて話を遮った。
「流石にそれでもエルザさん、難しいですわ。私達が出来ることは勿論しますし、出来る限りのサポートはさせて頂きます。役所の方もそれなりに頑張って何か案や対策を出して頂かないと……。私達だけ無茶な納期や納品数をお願いされるのは頂けませんわ」
エルザさんの顔が一瞬笑ったかと思ったらすぐに泣きそう顔に戻った。どうやらこれで落ちると思っていた様だし、僕なら確実に落とされていただろう。ウェルザさんがこの場にいてくれることに感謝である。
「そうですよね。ぐすっん。こちらばかりが要件ばかり出しておかしいですよね。」
また、ウェルザさんが泣き始めてしまった。
「そんな……。」
僕がまたエルザさんを庇おうとすると、ウェルザさんが視線を送ってきて、口を挟むのやめる。
「私共も今回の襲撃で、被害が出ており予算や人員が確保出来ない状態になっているんです。私も昨日は夜遅くまで被害状況の確認してました。」
人手不足でこの状況だと、そうなるよね。というか襲撃のある度に夜中までエルザさんは仕事してるし、頑張っているもんな。まー、その際は僕も付き合って手伝っているんだけど……。
「………。」
黙って聞いている様にウェルザさんからチラチラと鋭い視線が飛んでくる。エルザさんも涙目でこちらを下からチラチラと見上げてくる。
「………。」
助け船が僕から一向に出ないので、そらからもツラツラと役所の事情をエルザさんが僕たちに説明してくる。どれだけ人手が足りないか、どれだけ予算が逼迫しているか同情心を煽る様に訴えてくる。
「………。」
女性の涙はあいも変わらず苦手だ。泣く子と女は、何をしても助けろと誰かが言ってたし、僕の良心もそうしろと囁いてくる。心情的に非常に辛い、エルザさんを手伝いたい、でも、ウェルザさん達に迷惑をかけるのも頂けない。
「役所の現状は分かりました。あなたも非常に辛い思いをされているのね……。」
ウェルザさんが優しい言葉をエルザさんにかける。エルザさんも同情してもらえたと思って。
「では……。」
期待に満ちた目をエルザさんがウェルザさんに向けてくる。もう僕の力はないと言っていいのかも知れない。この場で力、発言権を持っているのは、僕ではなく、ウェルザさんだからだ。
「でも、その要求に対してこれまでと同様では流石にこちらも対応出来ませんわ。人手が不足しているのはこちらも同じです。ポーション代は補填して頂けますが、デーモンとの戦いで、リュウさんの装備が破損してますから、こちらも修理しないといけませんし、安全用に社員にもそれなりの装備が必要になりますもの。エルザさんなら、お分かり頂けますよね。」
「ええ、装備がないとデーモンもインプ相手では戦えませんわ。そして、装備代がポーションの代金以上に費用がかかることも分かってますわ。武器屋さんの方でも、朝から行列が並んで増したし、販売出来るものはないでしょうね。」
「ええ、そうなのよね。うちのファームもポーション作成の事業だけなら、なんとか利益は出るんだけど、魔族襲撃に対してリュウさんがメインで戦おうとすると、利益が出なくなるのよね。もう、赤字よ。あ…か…じ…。」
「わっ、分かりましたわ。リュウさんはうちの役所としても、期待の戦力ですわ。特別に魔石や討伐報酬を10%アップしますわ。」
「エルザさん。偉いわね。でもそれだと全然足りないのよ。もう一声か二声お願い出来ない?」
「うーん、でしたら私とのデート出来る権利を一回付与します。勿論朝まで。」
「それはありがたいけど、私達には、不要なものよ。リュウさんには、チルさんがいますからそういうのはちょっとねー」
エルザさんが頬を染めながら恥ずかしげに発言したが、やむなくウェルザさんの発言に撃沈。頬ではなく顔全体が恥ずかしさで真っ赤である。
0
あなたにおすすめの小説
『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~
鈴白理人
ファンタジー
ラザナキア王国の国民は【スキルツリー】という女神の加護を持つ。
そんな国の北に住むアクアオッジ辺境伯一家も例外ではなく、父は【掴みスキル】母は【育成スキル】の持ち主。
母のスキルのせいか、一家の子供たちは生まれたころから、派生スキルがポコポコ枝分かれし、スキルレベルもぐんぐん上がっていった。
双子で生まれた末っ子、兄のウィルフレッドの【精霊スキル】、妹のメリルの【魔法スキル】も例外なくレベルアップし、十五歳となった今、学園入学の秒読み段階を迎えていた──
前作→『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~
華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』
たったこの一言から、すべてが始まった。
ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。
そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。
それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。
ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。
スキルとは祝福か、呪いか……
ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!!
主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。
ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。
ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。
しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。
一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。
途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。
その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。
そして、世界存亡の危機。
全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した……
※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
異世界で家をつくります~異世界転移したサラリーマン、念動力で街をつくってスローライフ~
ヘッドホン侍
ファンタジー
◆異世界転移したサラリーマンがサンドボックスゲームのような魔法を使って、家をつくったり街をつくったりしながら、マイペースなスローライフを送っていたらいつの間にか世界を救います◆
ーーブラック企業戦士のマコトは気が付くと異世界の森にいた。しかし、使える魔法といえば念動力のような魔法だけ。戦うことにはめっぽう向いてない。なんとか森でサバイバルしているうちに第一異世界人と出会う。それもちょうどモンスターに襲われているときに、女の子に助けられて。普通逆じゃないのー!と凹むマコトであったが、彼は知らない。守るにはめっぽう強い能力であったことを。
※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる