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第三章・デルミーラ視点
37話「門番とムチ」微ざまぁ
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そうしてわたくしは、やっとの思いでシーラッハ公爵家の前にたどりつくことができた。
わたくしの今の状態は、服はボロボロ、髪はボサボサ、おまけに獣の糞尿の匂いが染み付いてとれないという最悪なものだ。
それでも公爵家の使用人なら、わたくしがどんな格好をしていようとも、わたくしが公爵夫人だと気づくはずですわ!
「デルミーラよ、今帰ったわ!
門を開けなさい!」
門の外から邸内に向かって叫ぶ。
そんなわたくしを見て門の外にいた門番は、眉間にしわを寄せわたくしを睨んで来た。
「貴様!
浮浪者の分際で公爵夫人である奥様の名を語るとは何事だ!!」
門番に突き飛ばされ、わたくしは尻もちをついた。
「何をするの!
わたくしは本物のデルミーラよ!」
巻けずにわたくしも門番を睨み返し、言い返す。
「話し方はそれなりに勉強してきたようだが、その格好がすべてを台無しにしているな!
公爵夫人を語るならせめて身なりを整えてから来るべきだったな!
どこの世界に泥まみれで豚や鶏の糞尿の匂いをさせたお貴族様がいるんだよ!
痛い目に会いたくなかったらとっとと失せな!」
門番がわたくしに悪態をつけ、つばを吐いた。
「わたくしが本物のデルミーラ・シーラッハだと言っているでしょう!
あなた、わたくしにつばを吐いたことを後悔しますわよ!
ハリマンに言いつけて紹介状なしで首にしてやるわ!」
「奥様の名前だけではなく、旦那様の名まで呼び捨てにするとはな。許せん!
女だから見逃してやろうと思ったが止めた!
ムチで打ち据えたあと、騎士団に突き出してやる!」
門番は腰に装備していたムチを取り出し、地面に向かって振り下ろした。
「今のは威嚇だ!
次はあんたに当てる!
怪我したくなかったら、土下座して謝罪することだな!」
「誰があなたになど頭を下げるもんですか!
あなたなんか首よ!
いいえ死刑にしてやるわ!!」
「痛い目に合わせなければ分からないようだな!
これでも喰らえ!」
門番がムチを振るう。
わたくしは咄嗟に門番に背中を向け、うずくまった。
ムチはビュッと音を立て、わたくしの纏っていたワンピースを切り裂き、背中に当たる。
ムチが当たった場所に激痛が走った。
「さぁ、今すぐ謝罪しろ!
奥様の名前を語った事を土下座して詫びろ!」
「誰があなたなどに頭を下げるものですか!
誰がなんと言おうと、わたくしはシーラッハ公爵夫人よ!」
「お前のような身の程知らずの女には、謝罪したくなるまでムチを振るうしかないようだな!!」
門番がわたくし背中に再度ムチを振るう。
おそらく背中は痣だらけ、もしかしたら出血しているかもしれない。
傷が治るまで背中の開いたドレスは着れませんわ。
「何の騒ぎだ」
門番が三度目のムチを振り下ろそうとしたとき、門の中から聞き覚えのある声がした。
「頭のおかしい女が奥様の名を語り屋敷の中に入ろうとしたので、懲らしめているところです」
門番はムチを振り下ろすのを止めた。
「何だと?」
この声は……家令のハンスだわ。
「ハンス……わたくしよ。
デルミーラよ」
「まだいうのか! この女め!」
門番の苛立った声が聞こえる。彼がムチを振り上げたとき。
「やめよ!」
ハンスが門番を止めた。
「家令様、なぜ止めるのですか?」
ハンスが制止すると、門番は動きを止めた。
「この者はワタクシの名を知っていた。
公爵家にゆかりの者かもしれん」
「しかし、こんなみすぼらしい格好の者が、公爵家にゆかりがあるとは思えませんが」
「万が一ということもある。
そこの者こちらを向け、よく顔を見せよ」
わたくしはハンスの方を向き、顔がよく見えるように自身の前髪をかき分けた。
「ああ……なんてことだ!
この顔は奥様に間違いない!」
ムチで打たれるとき、咄嗟に顔を庇ったのが幸いした。
ハンスがわたくしに気づいてくれた。
ハンスが門を開け、わたくしの元に近づき跪いた。
「奥様、今までどこに行っていたのですか?
旦那様が心配していたのですよ!」
「ほ、本当に……本物の奥様だった……なんて……」
門番が動揺しているのが、彼の発した声から分かる。
門番がムチを落とし、地面に跪いている。
「ざまぁみなさい……!
あんななんか……首よ」
門番をキッと睨みつける。
「お許しください!
奥様!!」
門番が土下座して謝罪した。
泣こうが、喚こうが、土下座しようが、許してやるもんですか!
「奥様、どうかこの者の罪をお許しください。
この者は屋敷に仕えて日が浅いのです」
そんなことどうでもいいわ!
と叫んで門番の頭をヒールで踏みつけてやりたい!
でも今はそんな気力もないわ。
背中の傷がズキズキと痛むし、空腹でめまいがしてそれどころではない。
「ハンス、お風呂の用意……をして。
それから食事と……ドレスと靴も……お願い」
「かしこまりました、奥様。
ですが傷の手当が先です」
ハンスの言うとおりね。
まずは傷の手当をしないとね。
「奥様を屋敷に運ぶ、手伝いなさい」
「はい!」
ハンスが門番に命じた。
わたくしをムチで打ち据えた門番にお姫様抱っこされるのは釈然としないが、歩く気力もないので許してあげるわ。
普段なら門番風情がわたくしに触れたら、
「着やすく触らないで!」
と言って彼の頬を引っ叩いているところだ。
わたくしがが回復したら、この門番の頬を引っ叩いて、背中をムチで打ち据えて、ヒールで頭を踏んづけたあと、紹介状なしで首にしてやるわ!
わたくしの今の状態は、服はボロボロ、髪はボサボサ、おまけに獣の糞尿の匂いが染み付いてとれないという最悪なものだ。
それでも公爵家の使用人なら、わたくしがどんな格好をしていようとも、わたくしが公爵夫人だと気づくはずですわ!
「デルミーラよ、今帰ったわ!
門を開けなさい!」
門の外から邸内に向かって叫ぶ。
そんなわたくしを見て門の外にいた門番は、眉間にしわを寄せわたくしを睨んで来た。
「貴様!
浮浪者の分際で公爵夫人である奥様の名を語るとは何事だ!!」
門番に突き飛ばされ、わたくしは尻もちをついた。
「何をするの!
わたくしは本物のデルミーラよ!」
巻けずにわたくしも門番を睨み返し、言い返す。
「話し方はそれなりに勉強してきたようだが、その格好がすべてを台無しにしているな!
公爵夫人を語るならせめて身なりを整えてから来るべきだったな!
どこの世界に泥まみれで豚や鶏の糞尿の匂いをさせたお貴族様がいるんだよ!
痛い目に会いたくなかったらとっとと失せな!」
門番がわたくしに悪態をつけ、つばを吐いた。
「わたくしが本物のデルミーラ・シーラッハだと言っているでしょう!
あなた、わたくしにつばを吐いたことを後悔しますわよ!
ハリマンに言いつけて紹介状なしで首にしてやるわ!」
「奥様の名前だけではなく、旦那様の名まで呼び捨てにするとはな。許せん!
女だから見逃してやろうと思ったが止めた!
ムチで打ち据えたあと、騎士団に突き出してやる!」
門番は腰に装備していたムチを取り出し、地面に向かって振り下ろした。
「今のは威嚇だ!
次はあんたに当てる!
怪我したくなかったら、土下座して謝罪することだな!」
「誰があなたになど頭を下げるもんですか!
あなたなんか首よ!
いいえ死刑にしてやるわ!!」
「痛い目に合わせなければ分からないようだな!
これでも喰らえ!」
門番がムチを振るう。
わたくしは咄嗟に門番に背中を向け、うずくまった。
ムチはビュッと音を立て、わたくしの纏っていたワンピースを切り裂き、背中に当たる。
ムチが当たった場所に激痛が走った。
「さぁ、今すぐ謝罪しろ!
奥様の名前を語った事を土下座して詫びろ!」
「誰があなたなどに頭を下げるものですか!
誰がなんと言おうと、わたくしはシーラッハ公爵夫人よ!」
「お前のような身の程知らずの女には、謝罪したくなるまでムチを振るうしかないようだな!!」
門番がわたくし背中に再度ムチを振るう。
おそらく背中は痣だらけ、もしかしたら出血しているかもしれない。
傷が治るまで背中の開いたドレスは着れませんわ。
「何の騒ぎだ」
門番が三度目のムチを振り下ろそうとしたとき、門の中から聞き覚えのある声がした。
「頭のおかしい女が奥様の名を語り屋敷の中に入ろうとしたので、懲らしめているところです」
門番はムチを振り下ろすのを止めた。
「何だと?」
この声は……家令のハンスだわ。
「ハンス……わたくしよ。
デルミーラよ」
「まだいうのか! この女め!」
門番の苛立った声が聞こえる。彼がムチを振り上げたとき。
「やめよ!」
ハンスが門番を止めた。
「家令様、なぜ止めるのですか?」
ハンスが制止すると、門番は動きを止めた。
「この者はワタクシの名を知っていた。
公爵家にゆかりの者かもしれん」
「しかし、こんなみすぼらしい格好の者が、公爵家にゆかりがあるとは思えませんが」
「万が一ということもある。
そこの者こちらを向け、よく顔を見せよ」
わたくしはハンスの方を向き、顔がよく見えるように自身の前髪をかき分けた。
「ああ……なんてことだ!
この顔は奥様に間違いない!」
ムチで打たれるとき、咄嗟に顔を庇ったのが幸いした。
ハンスがわたくしに気づいてくれた。
ハンスが門を開け、わたくしの元に近づき跪いた。
「奥様、今までどこに行っていたのですか?
旦那様が心配していたのですよ!」
「ほ、本当に……本物の奥様だった……なんて……」
門番が動揺しているのが、彼の発した声から分かる。
門番がムチを落とし、地面に跪いている。
「ざまぁみなさい……!
あんななんか……首よ」
門番をキッと睨みつける。
「お許しください!
奥様!!」
門番が土下座して謝罪した。
泣こうが、喚こうが、土下座しようが、許してやるもんですか!
「奥様、どうかこの者の罪をお許しください。
この者は屋敷に仕えて日が浅いのです」
そんなことどうでもいいわ!
と叫んで門番の頭をヒールで踏みつけてやりたい!
でも今はそんな気力もないわ。
背中の傷がズキズキと痛むし、空腹でめまいがしてそれどころではない。
「ハンス、お風呂の用意……をして。
それから食事と……ドレスと靴も……お願い」
「かしこまりました、奥様。
ですが傷の手当が先です」
ハンスの言うとおりね。
まずは傷の手当をしないとね。
「奥様を屋敷に運ぶ、手伝いなさい」
「はい!」
ハンスが門番に命じた。
わたくしをムチで打ち据えた門番にお姫様抱っこされるのは釈然としないが、歩く気力もないので許してあげるわ。
普段なら門番風情がわたくしに触れたら、
「着やすく触らないで!」
と言って彼の頬を引っ叩いているところだ。
わたくしがが回復したら、この門番の頬を引っ叩いて、背中をムチで打ち据えて、ヒールで頭を踏んづけたあと、紹介状なしで首にしてやるわ!
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