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第三章・デルミーラ視点

38話「傷口にしみる」微ざまぁ

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わたくしは門番にお姫様抱っこされたまま、わたくしの部屋まで運ばれ長椅子に降ろされた。

家に帰ってこれたのは嬉しいけど、わたくしの部屋が獣の糞尿臭くなるのは嫌だわ。

この長椅子も気に入っていたけど処分する必要があるわね。

ハンスが主治医を呼んでくるようメイドに指示を出している。

「傷の手当より食事が先よ!
 ハンス食事の用意をして!」

もう何日もろくに食べていない!

わたくしの空腹は限界に達していた。

だがハンスはわたくしの言葉を無視した。

使えないわね!

ハンス、あんたもあとで首にしてやるわ!

すぐに主治医がやってきた。

主治医はわたくしの格好を見て驚き、「まずは奥様をお風呂場に連れていき、シャワーで泥を落とすのだ。傷口を石鹸で洗うのも忘れないように」とメイドに命じた。

「お風呂に入れるのは嬉しいけど、それよりも先に食事がしたいわ! ありあわせの物でもいいから何か作って!」とメイドに命じたが無視された。

どいつもこいつも使えないわね! 全員首にするわよ! 

わたくしは二人のメイドに付き添われ、お風呂に連れて行かれた。

傷口を石鹸で洗われたときは、傷口に泡が染みて泣きそうになった。

お風呂から上がるとバスローブが用意されていた。

部屋に戻るとわたくしが座っていた長椅子はなくなり、別の椅子が置かれていた。

前の椅子は臭うので処分されたのだろう。

お風呂から上がったわたくしは、長椅子にうつ伏せで横になるように言われた。

主治医に傷口に消毒用のアルコールをかけられ、また泣きそうになった。実際少し涙が出た。

消毒が終わると、主治医はわたくしの傷口に薬を塗り、包帯を巻いた。傷口に薬を塗られたとき、涙がポロポロ溢れた。

なんで泡も消毒用のアルコールも塗り薬もこんなにも傷口にしみるの!

あの門番にも同じ苦しみを与えてやりたい!

あの門番へのムチ打ちは百回は必要ね!

傷の手当てが終わると、主治医は帰って行った。

メイドに着替えを持ってくるように頼んだが、メイドが持ってきたのは白無地のワンピースだった。

やはり当家のメイドは使えないわ。ワンピースでも赤や黄色やオレンジなど華やかな色の物が沢山あるのに、なんでこんな地味な服を持って来たのかしら?

汚れていないだけましね。疲れているし今日はこの服で我慢するわ。

わたくしはバスローブから、白い無地のワンピースに着替えた。
 
ベルを鳴らしハンスを呼ぶ。

「傷の手当てが終わったのなら、食事よ!
 キッチンの食材を全部使って、何でもいいから作ってきなさい!
 今は質よりも量がほしいわ!」

「承知いたしました」

ハンスはようやく、メイドに料理を作るように命じた。

鴨のコンフィ、舌平目のムニエル、ガレット、キッシュロレーヌ、オニオングラタンスープ、ムール貝の白ワイン蒸し、ラタトゥイユ、パテドカンパーニュ、ローストチキン、タルタルステーキ、ブイヤベース、クロックムッシュ、マカロン、ミルフィーユ、
カヌレ、クリームブリュレ、チョコレートタルト、チョコレートムース、洋ナシのアイスクリーム・チョコレートソースがけ…………料理名がわたくしの頭の中をぐるぐると回る。

今はお腹が好きすぎて食べることしか考えられない。

一時間後。

「お食事の用意ができました」

ハンスが呼びに来た。

一時間が一日に感じるほど長かった。

「お部屋の移動をお願いします」

「この部屋で食べるわ!
 料理を持ってきて!」

お腹が空きすぎて、移動をすることすら億劫だ。

「それはできません」

「わたくしに口答えをする気!
 ハンス、あなた首にされたいの!」

どいつもこいつも、わたくしの神経を逆撫でしますわ!

 
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