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十一話「魚に襲われた男」

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「何かあったのかね?」

外の様子が騒がしいので、ゲレさんがドアを開け廊下の様子を伺っています。

「私、見てきます!」

船医を呼べと聞こえました。血を止めるためのタオルがいるとも。

もう聖女ではありませんが、回復魔法が何かの役に立つかもしれません!

「あたしも行くよ!」

「オレも!」

ゲレさんとデリーさんが一緒に来てくれました。

甲板に出ると、お腹から血を流して倒れている人が見えました。船員の服を着た二十代後半ぐらいの色黒の男性です。

彼の横には釣り竿と、口が槍のように尖った子供の背丈ぐらいある細長い魚が。

魚のお腹には複数の槍が刺さり、事切れているようでした。

「何があったんですか?」

近くにいた人に声をかけると。

青い顔をした船員さんが「あいつと釣りをしていたんだが、竿が引いて釣り上げると口の尖った魚が出てきて、魚の野郎そのままあいつの腹に食いつきやがった……!」事情を説明してくれました。

船には魔物よけの結界は張っていましたが、普通のお魚さんは通れるようにしてました。

口が槍のように尖った魚がいるなんて、知らなかったとはいえ私のミスです。

「船医は! 船医はまだか!」

倒れている男性の側で止血をしていた、船員が叫びます。

「それが船医の野郎、食堂で飲んだくれてまして……」

別の船員が答えました。

「畜生! あいつ首だ! 鮫の餌にしてやる!」

もう見ていられません!

「あの! 私に治療させてください!」

人混みをかき分け、倒れている人に駆け寄ります。

「あんた誰だ? 貴族のお嬢様か?」

「貴族ではありません、少しですが回復魔法を使えます! この人を助けられるかもしれません!」

止血している男性の横から、倒れている男の人に手を伸ばす。

倒れている男性の顔は真っ青で、苦しげに息をしていました。息があれば助けられるはず!

最大マクシムム・回復《ベッセルング》!」

男性の体を淡い光が包む。

光がきえると、血が止まり傷口が綺麗に塞がっていた。

「あれ? オレ何してたんだっけ? なんで血まみれなんだ??」

ぼんやりした顔で、怪我をしていた男性が上半身を起こす。

良かった、助けることができました。

「あ、あんたいったい……何者なんだ??」

止血していた男性がポカンとした顔で私を見ていました。


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