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十六話
しおりを挟む卒業パーティー当日、練習のときより豪華な白のドレスを着せてもらい、ダイヤとサファイアがふんだんに使われた華美なアクセサリーを装備し、髪を綺麗に結ってもらい、薄く化粧を施され、馬車に乗りこんだ。
ドレスは肩や鎖骨と背中が空いたデザインで、胸はハンカチのようなもので膨らまされていた。
馬車の中でレオナルド様は「鎖骨と肩と背中に、私の所有印をつけられないのが口惜しい」と漏らされた。
その代わり、見えないところにはいつもの何倍もキスマークをつけられているのだが。
馬車の中でレオナルド様にキスを迫られたけど、メイクが崩れてしまうし、多分キスだけではすまないので、やんわりと拒否した。
レオナルド様は残念そうに顔を離し「パーティーが終わったら朝まで抱く」と、言ってニコリと笑った。明日は足腰が立たなくなりそうだな。
パーティー会場に入ったとき、たくさんの人の視線がレオナルド様に注がれた。
ついでに隣にいる僕にも好奇の視線が注がれた。
レオナルド様はミュールフェルト公爵家の嫡男で、ミハエル王太子殿下のご学友で、成績優秀、文武両道、将来は国の重臣になることを期待されている。注目を集めても仕方ない。
そのレオナルド様が連れてきた人間を、好奇心からジロジロ見る心理も分かる。
貧乏男爵家の令息で、クラスでも目立たない存在だった僕には、この視線のシャワーはきつい。
レオナルド様のパートナーが僕のような男ですみません。愛人風情が目立つ場に出てきてすみませんと、僕は終始心の中で謝っていた。
僕のそんな気持ちを知ってか知らでか、レオナルド様は僕を大衆の視線から庇うよう抱き寄せた。
周りから「うわぁ!」とか「キャー!」という声が上がった。僕は聞こえないふりをし、会場に入った。
レオナルド様はパーティー会場で人だかりが出来ている場所、ミハエル王太子殿下のもとに真っすぐに向かった。
王太子殿下の周りに出来ていた人だかりは、レオナルド様に気づくと海が割けるように避け、あっと言う間に王太子殿下へと続く道ができた。
レオナルド様は王太子殿下の側まで近づくと「ミハエル王子と話がしたい、すまないが外してくれ」と言った。
王太子殿下に群がっていた人たちは、蜘蛛の子を散らすようにいなくなった。
「強引だね」と言って王太子殿下が苦笑いを浮かべる。
王太子殿下は王族特有の銀の髪と紫の目をしていて、近くで見るとゴージャスなオーラが半端なかった。
一生話しかけることも叶わない雲の上の存在だと思っていた王太子殿下を間近にし、僕はあまりの眩しさに立ちくらみを覚えた。
倒れそうになる僕をレオナルド様が支えてくださった。
「ミハエル、紹介しよう、サフィール・ハルシュタインだ」
「はっ、ははは……初めまして! おっ、おおお……王太子、でっ、殿下! サフィール・ハルシュタ……インと申し……」
「サフィールくんだぁ!!」
僕が言い終える前に、ミハエル王太子殿下が言葉をかぶせてきた。
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