幼なじみの彼女に裏切られ、親友と付き合っていたことを知ってしまったので、親友の婚約者であり幼なじみの天敵の悪役令嬢と組みたいと思います

竜頭蛇

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映画館

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 ボーリングやゲームセンターなどが入っているアミューズメント施設が中に入っている駅前の映画館。

「少し外に出るだけでも暑かったから。中に入るだけで生き返るわね」

「風が熱風だったからね。天気予報で猛暑日でいうだけのことはあるよ」

 中に入るとクーラーの冷気があたり、人心地つくと映画館特有のキャラメルポップコーンの甘い匂いが鼻腔をくすぐる。

「キャラメルの香りがするわね」

「あそこにあるフードコーナーのポップコーンの匂いだよ。映画館ではキャラメルのポップコーンを食べるのが定番だから。わざと匂いが漂うようにしているんだよ。お祭りの屋台の売り方と同じ感じだね」

「へえ。施設の中でもこういう売り方をするのは珍しいわね。基本的に匂いが立ち込めるのは嫌うから」

「ここではほとんどポップコーン一強みたいな感じだし。フードコートみたいにお店で比べ競い合ってはいないからね。それにこうしておけば、買わないとなんだか物足りない感覚になるし」

「香りは甘いけど、内情はしっかり計算が入ってるのね」

 麻黒は鹿爪らしい顔をして、フードコーナーの方を見る。
 大企業の息女なので、ポップコーンの売り方に何かしら思うことがあったのかもしれない。

「目の前にあるあの機械は何かしら?」

 やがて入口の近くに券売機に気づいたようで、麻黒さんは券売機について尋ねてきた。

「券売機だよ」

「券売機。ネットで全て済みそうだと思うけど、わざわざ券を出すのね」

「多分元々券でやってたから、今だに券中心の考え方をしているんじゃないかな。店員さんの方も券だと千切るだけだからそこまで大変ではないし」

「この形が一番理には叶っているのね」

 スマホで席のバーコードを出すと券売機のリーダーに通して、券を二つ出す。
 あとはフードコーナーでポップコーンを買えば、映画の上映している部屋に行くだけだ。

 各々ーー俺はキャラメルポップコーンとコーラ、麻黒さんはキャラメルポップコーンと紅茶を購入して、上映室に入っていく。
 まだ上映室は明るく、近くの商業施設の宣伝やマナーに関する映像が流される。

「あのSNSのカメラの人ってここの人だったのね」と麻黒さんが気づきを得ていると、映画の上映が近くなってきたのか、照明が落ちて、映画のCMが流され始めた。
 映画の本編が上映されるまでの感覚が掴めている映画館常連の人たちがゾロゾロと中に入ってくる。
 人気の聞いていただけあり、上映からそこそこ経っているのだが、満席に近い人がやってくる。

「映画ってこんなにたくさん人が来るのね」

「っ」

 先ほど映画のマナーを見ていて、喋るのは原則禁止であることを把握していたからか、麻黒さんが耳元で囁いてきてドキりとする。
 ポップコーンとは違う、女の子特有の甘い匂いがする。
 やましい事はしていないが、なんだかまずいことをしているような気分になってくる。
 おそらく暗い環境が隠れて何かしているような気分にさせているのが、原因だろう。

「この映画は人気作でリピーターも多いからね」

 気を利かして囁いてくれた麻黒さんに申し訳ないので、内心の動揺を誤魔化しつつ、麻黒さんと同じように耳元で囁くと麻黒さんも同じ気分になったのか、顔を赤くした。
 流石に話しかけ続けるのもまずいと思い、映画のCMを見ていると椅子の手元にジュースが置いてあり、隣の席の人が来ていたことに気づいた。
 先ほどまで囁きあっていたことに対して、迷惑だったかと思い、盗み見ると、隣にいるのは転校生だった。
 頬に若干汗を浮かべて、めちゃくちゃ気まずそうな顔をしている。
 休日に同級生の知らない一面を見たのだから、それはそうか。

「ああ、いいよ。そこまで気にしなくても」

 徐に席を立とうとし始めたので、静止をかける。
 映画を見ることは安くないし、こんなことで帰ってもらうのも申し訳ないので、座るように促す。

 それでも遠慮して帰ろうとするのを宥めていると不意に何かを悟ったように転校生は座った。
 若干顔がこわばっている。
 いきなりどうしたのかと思いつつも、映画も始まり始めたし、これ以上かかわずらってもしょうがないかと思い、目の前のスクリーンに視線を戻す。



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