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突発イベント
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映画は確かにヒットしたと言うだけあって、内容がわかりやすく、面白く、豪華な演出もあり、老若男女問わずに受けるのも頷ける。
上映途中なので、オチはどうなるのか、わからないが、この完成度と評判ならば奇を衒って外すことはないだろう。
このまま、順当に仲間の協力のもと最後の壁を乗り越えて、ヒロインと結ばれ、大団円といったところか。
物語も佳境だなと思いながら、見ていると右手に人肌の温もりが触れた。
麻黒さんが手掛けを使わないと言うことだったので、使わせてもらっていたが、遠慮していて、つい使ってしまったのだろうか。
だがその割には手が俺の手に重なってから引かれずにそのままになっている。
と言うよりも動いている。
何事かと思うと麻黒さんの手はオレの手の下に差し入れられ、優しく指の間に、麻黒さんの指が絡ませられた。
形からすると恋人繋ぎだ。
流石にここで閉じないと言うのは酷い裏切りなような気がして、開かれたままだった指を閉じた。
麻黒さんの方から少し吐息の漏れた音が聞こえた。
結構思い切った行動だったので、麻黒さんも緊張していたのかもしれない。
「一体、これを見せつけることになんの意味が」
そのまま映画を見ていると転校生が何か呟いたように聞こえたが、映画の派手な効果音にかき消されてなにをいっているのかはわからなかった。
ーーー
「やっぱり映画館で見るのは一味違うわね」
麻黒さんはポップコーンとジュースのカップを片付けると、再び恋人繋ぎをして、そう尋ねてきた。
映画館で初めて見る訳ではない俺としても一味違ったものになった。
付き合ってた頃でもこう言うことはなかったからな。
「満足してもらえてよかったよ。俺も映画館は好きだから」
「映画も公開されることが多いシーズンだし、また都合が合ったら行きましょう」
「いいよ。また行こう」
手をつなぎ合ってることでいつもよりも近い距離にいる麻黒さんにそう返事をすると、映画を見ている間に体が硬くなっているので、アミューズメントに誘い、ホッケーやボーリングをして体をほぐした後、帰路についた。
ーーー
逢魔が時。
夏夢はフラフラしながら、家路についていた。
映画を見ていたら秋也と陽菜、花園親子と遭遇してしまったため、これ以上同じ行動を共にすることを避けるために続けて映画を見ることにし、合計4時間近く座った姿勢のままでいたので、体がすっかり固まってしまっていて、いまだに本調子とは程遠い動きをしていた。
「故意か、そうじゃないか、わからないけど、なぜかひたすらイチャイチャしているのを見せつけられただけで碌なものじゃなかった」
ぶつぶつと文句を言いながら、歩いて行くと不意に車の音がした。
よくあることなので、夏夢は特に気にせず歩いていくと、前から四人いる悪役令嬢のうちの一人である聖精華の母親の珠子が向こうから歩いてきた。
向かい合ったこの体制で変に動くのもかえって警戒されるので、そのまま内心の動揺を隠して、歩いて行く。
「あら、あなた、さっき映画館にいた子かしら?」
「ええ、そうです」
話の輪など広げたくはないが、この特徴的な色をした髪色で嘘をついてもすぐにバレるので正直に答える。
「どこかであったような気がするのだけど、思い出せないのだけど、あなたの方は何か覚えはあるかしら?」
「いや、私は特に覚えはないです」
「ごめなさいね。おばさんの勘違いだったみたい。夜道には気をつけてね」
珠子はそう言うと夏夢の前を通り過ぎていた。
夏夢は直接の面識はないが、潜在的な脅威として兼ねてから珠子のことは知っていたので、嘘をついたのだが、それが見破られずに済んだのでホッと一息つく。
すると安心しすぎてしまったのか、こけてしまった。
「大丈夫?」
珠子の心配する声が聞こえると、なぜだが腹部が熱いことに夏夢は気づいた。
口から何かが漏れ出す。
一体なんなのかと思い、口を拭うと粘着質な血が手に付いていた。
「死なない?」
自分が腹部を銃で撃ち抜かれたことに気づき、走って逃げるために起きあがろうとすると、腹部から夥しい量の血が出て、そのままうつ伏せに倒れてしまった。
そこまで行くと夏夢は本能で詰んだことを悟った。
「やっぱり撃ちすぎちゃったみたいね。いつもは生け取りにするのは他の子に任せてるから加減を間違っちゃった。信者たちの証言にある神様の特徴と一致していたから変に警戒して焦っちゃたのがダメだったわね」
倒れたままでいると意識が遠のいていくことを感じる。
そのまま夏夢の命がこぼれ落ちた。
上映途中なので、オチはどうなるのか、わからないが、この完成度と評判ならば奇を衒って外すことはないだろう。
このまま、順当に仲間の協力のもと最後の壁を乗り越えて、ヒロインと結ばれ、大団円といったところか。
物語も佳境だなと思いながら、見ていると右手に人肌の温もりが触れた。
麻黒さんが手掛けを使わないと言うことだったので、使わせてもらっていたが、遠慮していて、つい使ってしまったのだろうか。
だがその割には手が俺の手に重なってから引かれずにそのままになっている。
と言うよりも動いている。
何事かと思うと麻黒さんの手はオレの手の下に差し入れられ、優しく指の間に、麻黒さんの指が絡ませられた。
形からすると恋人繋ぎだ。
流石にここで閉じないと言うのは酷い裏切りなような気がして、開かれたままだった指を閉じた。
麻黒さんの方から少し吐息の漏れた音が聞こえた。
結構思い切った行動だったので、麻黒さんも緊張していたのかもしれない。
「一体、これを見せつけることになんの意味が」
そのまま映画を見ていると転校生が何か呟いたように聞こえたが、映画の派手な効果音にかき消されてなにをいっているのかはわからなかった。
ーーー
「やっぱり映画館で見るのは一味違うわね」
麻黒さんはポップコーンとジュースのカップを片付けると、再び恋人繋ぎをして、そう尋ねてきた。
映画館で初めて見る訳ではない俺としても一味違ったものになった。
付き合ってた頃でもこう言うことはなかったからな。
「満足してもらえてよかったよ。俺も映画館は好きだから」
「映画も公開されることが多いシーズンだし、また都合が合ったら行きましょう」
「いいよ。また行こう」
手をつなぎ合ってることでいつもよりも近い距離にいる麻黒さんにそう返事をすると、映画を見ている間に体が硬くなっているので、アミューズメントに誘い、ホッケーやボーリングをして体をほぐした後、帰路についた。
ーーー
逢魔が時。
夏夢はフラフラしながら、家路についていた。
映画を見ていたら秋也と陽菜、花園親子と遭遇してしまったため、これ以上同じ行動を共にすることを避けるために続けて映画を見ることにし、合計4時間近く座った姿勢のままでいたので、体がすっかり固まってしまっていて、いまだに本調子とは程遠い動きをしていた。
「故意か、そうじゃないか、わからないけど、なぜかひたすらイチャイチャしているのを見せつけられただけで碌なものじゃなかった」
ぶつぶつと文句を言いながら、歩いて行くと不意に車の音がした。
よくあることなので、夏夢は特に気にせず歩いていくと、前から四人いる悪役令嬢のうちの一人である聖精華の母親の珠子が向こうから歩いてきた。
向かい合ったこの体制で変に動くのもかえって警戒されるので、そのまま内心の動揺を隠して、歩いて行く。
「あら、あなた、さっき映画館にいた子かしら?」
「ええ、そうです」
話の輪など広げたくはないが、この特徴的な色をした髪色で嘘をついてもすぐにバレるので正直に答える。
「どこかであったような気がするのだけど、思い出せないのだけど、あなたの方は何か覚えはあるかしら?」
「いや、私は特に覚えはないです」
「ごめなさいね。おばさんの勘違いだったみたい。夜道には気をつけてね」
珠子はそう言うと夏夢の前を通り過ぎていた。
夏夢は直接の面識はないが、潜在的な脅威として兼ねてから珠子のことは知っていたので、嘘をついたのだが、それが見破られずに済んだのでホッと一息つく。
すると安心しすぎてしまったのか、こけてしまった。
「大丈夫?」
珠子の心配する声が聞こえると、なぜだが腹部が熱いことに夏夢は気づいた。
口から何かが漏れ出す。
一体なんなのかと思い、口を拭うと粘着質な血が手に付いていた。
「死なない?」
自分が腹部を銃で撃ち抜かれたことに気づき、走って逃げるために起きあがろうとすると、腹部から夥しい量の血が出て、そのままうつ伏せに倒れてしまった。
そこまで行くと夏夢は本能で詰んだことを悟った。
「やっぱり撃ちすぎちゃったみたいね。いつもは生け取りにするのは他の子に任せてるから加減を間違っちゃった。信者たちの証言にある神様の特徴と一致していたから変に警戒して焦っちゃたのがダメだったわね」
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