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朝凪 ※
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「メル……」
何度も何度も唇を重ねるディオンの呼吸が荒くなり、胸から伝わる鼓動が早まるのを感じながら、メルリーナは胸元へ伸びて来た手を掴んだ。
「駄目」
「……夕食までは、まだ時間がある」
陽光が降り注ぐ温室の様子を見ればわかるだろうと言うディオンをメルリーナは睨んだ。
「前みたいに、歩けなくなったら夕食の席に出られなくなるでしょう?」
「俺が抱いていけばいいだろ」
「だっ……めっ……」
絶対にそんなことは駄目だと言おうとするのを遮るように、ディオンはメルリーナの舌を絡め取って優しく吸い上げる。
「母上は、早く孫が欲しいんだ。もう、あれこれと揃え始めている」
「……ううんっ!?」
でも、と言い返そうとするたびに口を塞がれ、だんだん息が出来なくなったメルリーナはクラクラしながら、いつも凛として冷静で、きちんとしているグレースの姿を思い浮かべて「まさか」と思う。
グレースなら、きっとちゃんと順番を守れと言うだろう。
「で、も……」
「それに……メルを着飾ることも楽しんでいる。本当は、もう一人娘が欲しかったんだ」
ぜひ娘もと望んでいたグレースだが、ディオンを産んだ後にひどく体調を崩したため、アランが頷かなかったという。
「母上は、俺ひとりでは何かあったらリヴィエール公爵家を継ぐ者がいなくなると心配していて、父上に愛人を持ってはどうかなんて勧めて、本気で怒られた」
アランが、カーディナル海軍との関係を一度清算してリヴィエールへ戻ると決めたのは、カーディナルの社交界にいれば、いつまでもグレースはカーディナル貴族や王族の常識に捕らわれて、自由になれないだろうと思ったからだとディオンはメルリーナと出会った頃の事情を説明した。
「お祖父様も、その方が母上のためになるからと、早々に引退することにしたんだ」
当時、まだまだ元気だったラザールだが、妻を失って独りで暮らす寂しさもあったのだろう。
とにかく元気いっぱいのディオンと頑なで真面目ではあるが、負けん気の強いグレースに、リヴィエール魂を叩き込むことを喜んで引き受けた。
「ああ見えて、母上は手が早い」
ラザールの教えにより、やるなら手加減するなと教えられたグレースは、何事も全力だ。
「きっと、メルと気が合う」
それは一体、どういう意味だと睨めば、誤魔化すように口づけて、無理矢理メルリーナの口を塞ぎ、ドレスの裾を捲り、太股を撫で上げる。
ディオンはグレースの趣味である繊細なレースとフリルが施されたドロワーズを難なく引き下ろし、密かに蜜を湛えていた場所にその指を埋める。
「んっ」
「……どこがいい?」
何のことだと目を見開くメルリーナに、ディオンが真面目な顔で問う。
「大体、俺が一方的に好きなようにしてるから、メルの意見も聞いた方がいいかと思って。その……こういうことも、話し合いが大事だろうってセヴランが……」
そんなことを話し合えるほど、慣れていないと恥ずかしさのあまり涙ぐみ、セヴランを恨んだメルリーナに、ディオンは慌てて指を引き抜いた。
「ご、ごめん、メル。痛かったか? やっぱり、指じゃない方がいいよな。こっちの方が痛くないし」
ディオンの赤い髪があられもなく押し開かれたメルリーナの足の間に沈み、柔らかくて熱いものでいきなり秘裂を舐め上げられた。
「ひやぅっ!」
思わず妙な声を上げてしまったメルリーナは、慌てて手で口を塞いだが、秘裂の上にある敏感なしこりをじゅっと音を立てて吸い上げられ、弓なりに仰け反る。
何が起きているのかわからないまま、身体が痙攣し、瞼の目裏で星が瞬いた。
ぎゅっと硬直した身体が脱力し、緩んだところに再び熱いものを押し当てられ、ビクビクと痙攣する内壁をざらりとなぞられる。
「やっ、あっ!」
今は駄目だとディオンを押し退けようとした手は、絶え間なく与えられる刺激のせいで力が入らず、しかもディオンの大きな手に包み込まれて、シーツの上に縫い止められる。
二度目の絶頂にメルリーナを押し上げたディオンはようやく顔を上げ、濡れた唇を赤い舌で舐めてから、浅い呼吸に弾むメルリーナの胸元に口づける。
巻貝の首飾りを器用にかわし、レースの縁取りのある襟を指で押し下げる。
破れてしまうと慌てるメルリーナが身体を起こそうとすると、待っていたとばかりに背中に手を差し入れて、器用に釦を外してしまう。
「ディ……」
「メルは……いつも美味しそうだ」
そっと口づけられた右胸の先から走る痺れるような快感に、メルリーナが身を捩るとディオンは嬉しそうな顔になる。
もう一方へも同じように口づけて、揺らぐメルリーナの腰を大きな手で押さえると、柔らかい場所と硬く尖った場所を一緒に味わうように大きく口を開いて含む。
舌先が蠢くたびに、甘い痺れが拘束された腰から潤み切った場所へ走る。
こんなところで、こんな風にするなんてひどい、と思うのに、夢中になってメルリーナの身体を味わうディオンの嬉しそうな顔に、嫌だと言えなくなる。
「メル……やっぱり、チェスだけじゃ足りない」
何を言い出すのだと遠のきかけた意識がはっきりしたメルリーナが目を見開くと、ディオンは少しバツの悪そうな顔をしていたが、くしゃくしゃになっていたシャツを脱ぎ捨てた。
「え、ディ……」
「急いで勝てばいいだけだ」
だから、ずるをしない限り勝てないと言おうとしたメルリーナは、狭い入り口を押し開くようにして埋められた熱に驚いた。
「やっ」
キツイ場所を無理矢理開かれている感覚はあったが、思ったほどの痛みも苦しみもなく、むしろ虚ろだった場所を埋められる悦びが勝る。
奥深くまで沈めたディオンは、詰めていた息を吐き出すとジワジワと腹部を侵略する快感の波に身じろぎするメルリーナを見下ろして、蕩けそうな笑みを浮かべた。
「メル」
屈みこんだディオンに耳元で、甘く優しい声で呼ばれると繋がり合った場所が、きゅっと収縮した。
「ん?……メル?」
「ふっ……」
ぞわぞわと背筋を走る快感が爪先まで到達する。
「うっ……ちょっとま……待てって!」
ぎゅうっと激しく収縮しようとするメルリーナの襞から逃れるようにディオンが腰を引く。
奥へと押し込めた襞を逆に掻き出すように引き出した雄芯の刺激に耐え切れず、メルリーナが身体を震わせて昇り詰めると、ディオンは蠢く襞を蹂躙するように腰を打ち付ける。
大きな波が引く前に、次々と小さな波に襲われて、メルリーナは昇り詰めた場所から降りられなくなった。
「ひ、あ、ああああっ! やぁあっ! ディーっ!」
どうしていいのか、どこまでこの快感が続くのかわからずに、ただディオンの広い背中にしがみつき、嵐の海の上で翻弄される小舟のごとく官能の海に漂うしかなかった。
これ以上、見知らぬ場所にひとりで取り残されるのは嫌だった。
「ディー……ディオン……」
隠し切れない劣情を打ち付けながら、メルリーナの様子を窺う眼差しは今にもメルリーナを射殺しそうだ。
一緒に辿り着きたいとぎゅっとその腰に絡めた足で引き寄せれば、ディオンの頬が強張り、歯を食いしばるのがわかった。
「メ、ルっ……」
強く突き上げられた瞬間、身体がふわりと浮いたような感覚に襲われ、ディオンにしがみつけば、その身体もメルリーナと同じように震え、大きな波に攫われている。
息を継ぐように唇を重ね、悲鳴と溜息を互いの呼吸で打ち消し合えば、ジワリと腹の奥に注がれるものを感じた。
熱い精と蜜が混ざり合い、溶け合う。
やがて、波が引き、凪が訪れた。
「……メル……」
メルリーナを固く抱き竦めていたディオンが顔を上げ、じっと見つめる。
空色の瞳には、色んな感情が空を流れる雲のごとく過ぎって行く。
やがて、移ろっていたものはひとつに収束し、そこに留まる。
「メル…………」
耳元で囁かれた言葉に、メルリーナの頬が緩む。
「メルは?」
頬を赤くして、期待の眼差しで問うディオンに、メルリーナは満面の笑みで告げた。
「ディーが勝ったらね?」
何度も何度も唇を重ねるディオンの呼吸が荒くなり、胸から伝わる鼓動が早まるのを感じながら、メルリーナは胸元へ伸びて来た手を掴んだ。
「駄目」
「……夕食までは、まだ時間がある」
陽光が降り注ぐ温室の様子を見ればわかるだろうと言うディオンをメルリーナは睨んだ。
「前みたいに、歩けなくなったら夕食の席に出られなくなるでしょう?」
「俺が抱いていけばいいだろ」
「だっ……めっ……」
絶対にそんなことは駄目だと言おうとするのを遮るように、ディオンはメルリーナの舌を絡め取って優しく吸い上げる。
「母上は、早く孫が欲しいんだ。もう、あれこれと揃え始めている」
「……ううんっ!?」
でも、と言い返そうとするたびに口を塞がれ、だんだん息が出来なくなったメルリーナはクラクラしながら、いつも凛として冷静で、きちんとしているグレースの姿を思い浮かべて「まさか」と思う。
グレースなら、きっとちゃんと順番を守れと言うだろう。
「で、も……」
「それに……メルを着飾ることも楽しんでいる。本当は、もう一人娘が欲しかったんだ」
ぜひ娘もと望んでいたグレースだが、ディオンを産んだ後にひどく体調を崩したため、アランが頷かなかったという。
「母上は、俺ひとりでは何かあったらリヴィエール公爵家を継ぐ者がいなくなると心配していて、父上に愛人を持ってはどうかなんて勧めて、本気で怒られた」
アランが、カーディナル海軍との関係を一度清算してリヴィエールへ戻ると決めたのは、カーディナルの社交界にいれば、いつまでもグレースはカーディナル貴族や王族の常識に捕らわれて、自由になれないだろうと思ったからだとディオンはメルリーナと出会った頃の事情を説明した。
「お祖父様も、その方が母上のためになるからと、早々に引退することにしたんだ」
当時、まだまだ元気だったラザールだが、妻を失って独りで暮らす寂しさもあったのだろう。
とにかく元気いっぱいのディオンと頑なで真面目ではあるが、負けん気の強いグレースに、リヴィエール魂を叩き込むことを喜んで引き受けた。
「ああ見えて、母上は手が早い」
ラザールの教えにより、やるなら手加減するなと教えられたグレースは、何事も全力だ。
「きっと、メルと気が合う」
それは一体、どういう意味だと睨めば、誤魔化すように口づけて、無理矢理メルリーナの口を塞ぎ、ドレスの裾を捲り、太股を撫で上げる。
ディオンはグレースの趣味である繊細なレースとフリルが施されたドロワーズを難なく引き下ろし、密かに蜜を湛えていた場所にその指を埋める。
「んっ」
「……どこがいい?」
何のことだと目を見開くメルリーナに、ディオンが真面目な顔で問う。
「大体、俺が一方的に好きなようにしてるから、メルの意見も聞いた方がいいかと思って。その……こういうことも、話し合いが大事だろうってセヴランが……」
そんなことを話し合えるほど、慣れていないと恥ずかしさのあまり涙ぐみ、セヴランを恨んだメルリーナに、ディオンは慌てて指を引き抜いた。
「ご、ごめん、メル。痛かったか? やっぱり、指じゃない方がいいよな。こっちの方が痛くないし」
ディオンの赤い髪があられもなく押し開かれたメルリーナの足の間に沈み、柔らかくて熱いものでいきなり秘裂を舐め上げられた。
「ひやぅっ!」
思わず妙な声を上げてしまったメルリーナは、慌てて手で口を塞いだが、秘裂の上にある敏感なしこりをじゅっと音を立てて吸い上げられ、弓なりに仰け反る。
何が起きているのかわからないまま、身体が痙攣し、瞼の目裏で星が瞬いた。
ぎゅっと硬直した身体が脱力し、緩んだところに再び熱いものを押し当てられ、ビクビクと痙攣する内壁をざらりとなぞられる。
「やっ、あっ!」
今は駄目だとディオンを押し退けようとした手は、絶え間なく与えられる刺激のせいで力が入らず、しかもディオンの大きな手に包み込まれて、シーツの上に縫い止められる。
二度目の絶頂にメルリーナを押し上げたディオンはようやく顔を上げ、濡れた唇を赤い舌で舐めてから、浅い呼吸に弾むメルリーナの胸元に口づける。
巻貝の首飾りを器用にかわし、レースの縁取りのある襟を指で押し下げる。
破れてしまうと慌てるメルリーナが身体を起こそうとすると、待っていたとばかりに背中に手を差し入れて、器用に釦を外してしまう。
「ディ……」
「メルは……いつも美味しそうだ」
そっと口づけられた右胸の先から走る痺れるような快感に、メルリーナが身を捩るとディオンは嬉しそうな顔になる。
もう一方へも同じように口づけて、揺らぐメルリーナの腰を大きな手で押さえると、柔らかい場所と硬く尖った場所を一緒に味わうように大きく口を開いて含む。
舌先が蠢くたびに、甘い痺れが拘束された腰から潤み切った場所へ走る。
こんなところで、こんな風にするなんてひどい、と思うのに、夢中になってメルリーナの身体を味わうディオンの嬉しそうな顔に、嫌だと言えなくなる。
「メル……やっぱり、チェスだけじゃ足りない」
何を言い出すのだと遠のきかけた意識がはっきりしたメルリーナが目を見開くと、ディオンは少しバツの悪そうな顔をしていたが、くしゃくしゃになっていたシャツを脱ぎ捨てた。
「え、ディ……」
「急いで勝てばいいだけだ」
だから、ずるをしない限り勝てないと言おうとしたメルリーナは、狭い入り口を押し開くようにして埋められた熱に驚いた。
「やっ」
キツイ場所を無理矢理開かれている感覚はあったが、思ったほどの痛みも苦しみもなく、むしろ虚ろだった場所を埋められる悦びが勝る。
奥深くまで沈めたディオンは、詰めていた息を吐き出すとジワジワと腹部を侵略する快感の波に身じろぎするメルリーナを見下ろして、蕩けそうな笑みを浮かべた。
「メル」
屈みこんだディオンに耳元で、甘く優しい声で呼ばれると繋がり合った場所が、きゅっと収縮した。
「ん?……メル?」
「ふっ……」
ぞわぞわと背筋を走る快感が爪先まで到達する。
「うっ……ちょっとま……待てって!」
ぎゅうっと激しく収縮しようとするメルリーナの襞から逃れるようにディオンが腰を引く。
奥へと押し込めた襞を逆に掻き出すように引き出した雄芯の刺激に耐え切れず、メルリーナが身体を震わせて昇り詰めると、ディオンは蠢く襞を蹂躙するように腰を打ち付ける。
大きな波が引く前に、次々と小さな波に襲われて、メルリーナは昇り詰めた場所から降りられなくなった。
「ひ、あ、ああああっ! やぁあっ! ディーっ!」
どうしていいのか、どこまでこの快感が続くのかわからずに、ただディオンの広い背中にしがみつき、嵐の海の上で翻弄される小舟のごとく官能の海に漂うしかなかった。
これ以上、見知らぬ場所にひとりで取り残されるのは嫌だった。
「ディー……ディオン……」
隠し切れない劣情を打ち付けながら、メルリーナの様子を窺う眼差しは今にもメルリーナを射殺しそうだ。
一緒に辿り着きたいとぎゅっとその腰に絡めた足で引き寄せれば、ディオンの頬が強張り、歯を食いしばるのがわかった。
「メ、ルっ……」
強く突き上げられた瞬間、身体がふわりと浮いたような感覚に襲われ、ディオンにしがみつけば、その身体もメルリーナと同じように震え、大きな波に攫われている。
息を継ぐように唇を重ね、悲鳴と溜息を互いの呼吸で打ち消し合えば、ジワリと腹の奥に注がれるものを感じた。
熱い精と蜜が混ざり合い、溶け合う。
やがて、波が引き、凪が訪れた。
「……メル……」
メルリーナを固く抱き竦めていたディオンが顔を上げ、じっと見つめる。
空色の瞳には、色んな感情が空を流れる雲のごとく過ぎって行く。
やがて、移ろっていたものはひとつに収束し、そこに留まる。
「メル…………」
耳元で囁かれた言葉に、メルリーナの頬が緩む。
「メルは?」
頬を赤くして、期待の眼差しで問うディオンに、メルリーナは満面の笑みで告げた。
「ディーが勝ったらね?」
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