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新世代

走・凱編 野営

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新暦〇〇二九年九月十六日。



そう達からも、草原の真っ只中に陣取ったローバーと、周囲の警戒のために外に出たビアンカの姿は辛うじて見えていただろう。

しかしここまでで見慣れていたそれらのことを、そう達はあまり警戒していなかった。焦ることなく少しずつ慣らしていく形になった彼女の接し方が功を奏したんだろうな。

だから普段と変わらず狩りを行う。怪我をしたかいも、さほど問題なさそうだ。

ドローンのカメラでそんなそう達の様子を見ながら、ビアンカもホッとしている。

と同時に、警戒を緩めることもない。

自動小銃を常に構えて、他のレオンの群れが仮の営巣地とした辺りを睨みつける。

そちらの方にももちろんドローンは飛ばしている。

だが、そのカメラに映ったレオン達は、そう達に比べて明らかに痩せていた。子供達に至っては毛皮越しにさえはっきりと肋骨が浮かんで見えるほどだ。

だから本当は俺としても何とかしてやりたいという気持ちはある。あるんだが、決定的に獲物の数が少ないんだ。<畑>によってこの辺りに居ついている草食動物の数とて、そう達の群れを維持した上で、草食動物自身の数を維持することが可能な程度しかいない。それらを奪われては、バランスが崩れてしまう。

最悪、密林で獲物で確保してそれを届けるという方法もあるにはあるが、あまりそれをすると今度はそう達の狩りの勘が鈍ってしまうかもしれない。逆に、向こうのレオンやオオカミ竜オオカミの群れに餌を供給すると今度はこっちが自力で餌を得られなくなってしまってずっと俺達が面倒見なきゃいけなくなるかもしれない。

となれば、残酷ではあっても、そういう形でレオンやオオカミ竜オオカミ達に手を貸すわけにもいかないと俺は判断してる。

とは言え、手をこまねいているつもりもない。

警戒に当たっているドーベルマンDK-aを使って、警備と同時に、ビアンカとの間の位置に新たな<畑>を作って、そこにいる草食動物らに豊富な餌を提供し、数を増やすことを目指す。

実はインパラ竜インパラが大量死したことが分かった時点で始めたことだったんだが、さすがに二ヶ月程度では十分な成果が出るようなものじゃない。それでも何もしないわけにもいかないというだけだ。

種から育てていては時間がかかるので、コーネリアス号の周辺に自生していたものを植え替えるという形でまずは体裁を整える。こちらに配していたドーベルマンDK-aを総動員して休みなく作業を行う。

その間、ビアンカはローバーを使って簡易のテントを張り、野営した。生活に必要な物資は、コーネリアス号からドーベルマンDK-aを使って供給する。メンテナンスのためにメイフェアやイレーネやセシリアがコーネリアス号に訪れた時には、そのついでに物資を差し入れもしたんだ。

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