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生まれてきたことを喜ぶことはできると思うんだ
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いよいよまた年の暮れが迫ったけど、私はやっぱりウンチの処分場にいた。
もちろん、休みの日はしっかり休むことにしてるけどね。
「まだ処分場に行ってるんですか?」
休みを利用して帰ってきたアルカセリスにはそうボヤかれるけど、これは必要なことだからね。彼女がそうやってボヤくのも、結局、私を気遣ってってことは分かってるんだよ。
「ありがとう。セリス」
彼女の気遣いに私がお礼を言うと、アルカセリスは、
「む~…」
と不服そうに口を尖らせるものの、以前のようには噛み付いてこなくなった。言っても無駄なのが分かったというか、それが私という人間なんだって彼女も悟ったっていうか。
エマと一緒にお風呂に入って、彼女の傷痕をマッサージした後、エマにマッサージしてもらってリフレッシュして、今度はアルカセリスをマッサージする。
彼女には頑張ってほしいからね。
それから、またベントのところに帰って、彼にたっぷりと愛してもらう。
なんてことを繰り返していたある日……
「…っぷ、う……?」
仕事中、私は急に吐き気をもよおしてしまった。
「って……まさか……」
その『まさか』だった。月経が遅れてるのは分かってたから、たぶん間違いないだろうと思ってたけど、自分で自分の体を魔法で調べてみたら、私とは別の<命>が子宮内に息づいてるのが分かった。
「あはははは、くるものがきちゃったか……」
覚悟はしてたつもりだけど、それが本当になるとちょっと気後れするな。
<妊娠>だ。たぶん、二ヶ月くらいかな。
処分場での堆肥化も軌道に乗り、会社の方も、社員達も仕事に慣れてきてくれたこのタイミングというのは、まさに狙ってたかのような感じだな。
「ありがとう、カリン。あなたのおかげで私も<父親>になることができそうだ」
ベントはそう言って私を抱き締めてくれた。
で、アルカセリスはと言うと、
「は…? あ……、えぇ~……!」
って感じで絶句してた。
ただ、その上で、
「……おめでとう、ございます……!」
とは言ってくれたよ。悔しそうだったけどね。
だけど、これで私もまた新しいことに挑戦することになった。今度は、私自身の存在そのものを受け継いでくれる<新しい命>を育てていくという挑戦だ。
私の勝手でこの世界に生み出すことになるこの子を、
『生まれてきてよかった』
って思わせてあげることが、私の役目だと思う。
私は、今、生まれてきてよかったと思ってる。いろいろあったけど、今でも両親や兄のことは許してないけど、だけどそれも含めて、今の私に繋がってるんだな。
だから、どんな世界でも、どんな時代でも、生まれてきたことを喜ぶことはできると思うんだ。
自分のことを認めて、受け止めてくれる人がいたらね。
そうだ。私が受け止めてあげる。あなたのすべてを認めてあげる。
だからありがとう。私のところに来てくれて。
あなたを歓迎します。
もちろん、休みの日はしっかり休むことにしてるけどね。
「まだ処分場に行ってるんですか?」
休みを利用して帰ってきたアルカセリスにはそうボヤかれるけど、これは必要なことだからね。彼女がそうやってボヤくのも、結局、私を気遣ってってことは分かってるんだよ。
「ありがとう。セリス」
彼女の気遣いに私がお礼を言うと、アルカセリスは、
「む~…」
と不服そうに口を尖らせるものの、以前のようには噛み付いてこなくなった。言っても無駄なのが分かったというか、それが私という人間なんだって彼女も悟ったっていうか。
エマと一緒にお風呂に入って、彼女の傷痕をマッサージした後、エマにマッサージしてもらってリフレッシュして、今度はアルカセリスをマッサージする。
彼女には頑張ってほしいからね。
それから、またベントのところに帰って、彼にたっぷりと愛してもらう。
なんてことを繰り返していたある日……
「…っぷ、う……?」
仕事中、私は急に吐き気をもよおしてしまった。
「って……まさか……」
その『まさか』だった。月経が遅れてるのは分かってたから、たぶん間違いないだろうと思ってたけど、自分で自分の体を魔法で調べてみたら、私とは別の<命>が子宮内に息づいてるのが分かった。
「あはははは、くるものがきちゃったか……」
覚悟はしてたつもりだけど、それが本当になるとちょっと気後れするな。
<妊娠>だ。たぶん、二ヶ月くらいかな。
処分場での堆肥化も軌道に乗り、会社の方も、社員達も仕事に慣れてきてくれたこのタイミングというのは、まさに狙ってたかのような感じだな。
「ありがとう、カリン。あなたのおかげで私も<父親>になることができそうだ」
ベントはそう言って私を抱き締めてくれた。
で、アルカセリスはと言うと、
「は…? あ……、えぇ~……!」
って感じで絶句してた。
ただ、その上で、
「……おめでとう、ございます……!」
とは言ってくれたよ。悔しそうだったけどね。
だけど、これで私もまた新しいことに挑戦することになった。今度は、私自身の存在そのものを受け継いでくれる<新しい命>を育てていくという挑戦だ。
私の勝手でこの世界に生み出すことになるこの子を、
『生まれてきてよかった』
って思わせてあげることが、私の役目だと思う。
私は、今、生まれてきてよかったと思ってる。いろいろあったけど、今でも両親や兄のことは許してないけど、だけどそれも含めて、今の私に繋がってるんだな。
だから、どんな世界でも、どんな時代でも、生まれてきたことを喜ぶことはできると思うんだ。
自分のことを認めて、受け止めてくれる人がいたらね。
そうだ。私が受け止めてあげる。あなたのすべてを認めてあげる。
だからありがとう。私のところに来てくれて。
あなたを歓迎します。
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