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第3章 高平陵の変
第1話 迷当の死
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直接伝えてくれたのは、柳起であった。
戦火に傷つき、血を流しながら、息も絶え絶えの状態で、手勢の五十騎を率いて姜維の下に訪れた。
既に蜀軍は、帰路の途中にあった。
反乱軍の戦況は、次の通りである。
陳泰を先鋒に、防衛に出て来た将軍のほとんどを引き連れて、郭淮が直接鎮圧に赴いて来た。その数は、六万。
数でこそ勝っていたが、反乱軍にとって衝撃であったのが、大将である郭淮が、目の前の蜀軍よりも反乱軍の鎮圧に本腰を入れた事であった。
涼州や、雍州西方の豪族達は、魏のやり方に反発を覚えながらも、郭淮自体は嫌いでは無かったのだ。
今回の挙兵も、魏に反発はしたが、郭淮とは出来る事ならあまり矛を交えたくないと思う豪族が多く、そのほとんどが様子見の態度に出たのである。
七万の内、反乱軍で戦力となったのは四万程。その内の三万は、迷当の兵である。
対して魏軍の六万は、覚悟が違った。
負ければ、祖国を失う。
将軍から一兵卒に至るまで、皆がそれを覚悟していた。
いくら精強と言われる涼州軍でも、士気が振るわない状態での衝突は、敗北を呼ぶだけ。
そこで迷当は自ら陣頭に立ち、兵を鼓舞した。
また魏軍でも、陳泰が先頭を走り、兵を奮起させた。
力と力のぶつかり合いで、その戦闘は熾烈を極めたと言う。
迷当と陳泰は、やがて一騎打ちの格好になった。勝負は、互角だった。
百斤の大鉞を縦横に振るう迷当と、空気すら切り裂かんばかりに大刀を振るう陳泰。
迷当はその規格外な巨躯に見合う鎧が無いのか、上半身は裸で戦場を駆けていた。
熾烈を極めた戦闘も、やがて全ての兵士が、二人の一騎打ちに見入っていたと言う。
何百合も刃を打ち合い、そして、迷当は陳泰に討たれた。
決着は「運」が僅かに陳泰へ傾いただけ。それだけのことだったと、柳起は涙ながらに語った。
「その後、大王を失った我が軍はあっという間に瓦解。私は、手勢を率いて何とか仇を討とうとしましたが、それすら、叶いませんでした」
「そうか……」
「大王は、姜将軍に『すまない』と、その一言だけを伝えてくれと」
「大局を見据え、一軍の将たる者の戦としては、決して大王の戦は褒められたものではない。しかし、あの御方はひたすらに武士であった。もうとっくに隠居してもおかしくない年齢で、壮絶な戦死を遂げる事が出来たのだ。それもまた、本望であろう」
幼い頃に、命を救ってくれた恩人であった。
父の無い姜維にとって、初めて、尊敬の念を抱いた大人であった。
涙は流さなかった。痛む胸を、敢えて誇らしげに張ることで、姜維は迷当に対しての敬意を表した。
「今後、私達は姜維様の下で働きたく存じます。是非、兵卒の端にでも加えていただきたい」
「大王の下では何を」
「偵察部隊を率いておりました」
「分かった。まずは傷を癒し、そして、柳春にも会いに来てくれ。大王の死に、心を痛めているだろうから」
「御意」
戦火に傷つき、血を流しながら、息も絶え絶えの状態で、手勢の五十騎を率いて姜維の下に訪れた。
既に蜀軍は、帰路の途中にあった。
反乱軍の戦況は、次の通りである。
陳泰を先鋒に、防衛に出て来た将軍のほとんどを引き連れて、郭淮が直接鎮圧に赴いて来た。その数は、六万。
数でこそ勝っていたが、反乱軍にとって衝撃であったのが、大将である郭淮が、目の前の蜀軍よりも反乱軍の鎮圧に本腰を入れた事であった。
涼州や、雍州西方の豪族達は、魏のやり方に反発を覚えながらも、郭淮自体は嫌いでは無かったのだ。
今回の挙兵も、魏に反発はしたが、郭淮とは出来る事ならあまり矛を交えたくないと思う豪族が多く、そのほとんどが様子見の態度に出たのである。
七万の内、反乱軍で戦力となったのは四万程。その内の三万は、迷当の兵である。
対して魏軍の六万は、覚悟が違った。
負ければ、祖国を失う。
将軍から一兵卒に至るまで、皆がそれを覚悟していた。
いくら精強と言われる涼州軍でも、士気が振るわない状態での衝突は、敗北を呼ぶだけ。
そこで迷当は自ら陣頭に立ち、兵を鼓舞した。
また魏軍でも、陳泰が先頭を走り、兵を奮起させた。
力と力のぶつかり合いで、その戦闘は熾烈を極めたと言う。
迷当と陳泰は、やがて一騎打ちの格好になった。勝負は、互角だった。
百斤の大鉞を縦横に振るう迷当と、空気すら切り裂かんばかりに大刀を振るう陳泰。
迷当はその規格外な巨躯に見合う鎧が無いのか、上半身は裸で戦場を駆けていた。
熾烈を極めた戦闘も、やがて全ての兵士が、二人の一騎打ちに見入っていたと言う。
何百合も刃を打ち合い、そして、迷当は陳泰に討たれた。
決着は「運」が僅かに陳泰へ傾いただけ。それだけのことだったと、柳起は涙ながらに語った。
「その後、大王を失った我が軍はあっという間に瓦解。私は、手勢を率いて何とか仇を討とうとしましたが、それすら、叶いませんでした」
「そうか……」
「大王は、姜将軍に『すまない』と、その一言だけを伝えてくれと」
「大局を見据え、一軍の将たる者の戦としては、決して大王の戦は褒められたものではない。しかし、あの御方はひたすらに武士であった。もうとっくに隠居してもおかしくない年齢で、壮絶な戦死を遂げる事が出来たのだ。それもまた、本望であろう」
幼い頃に、命を救ってくれた恩人であった。
父の無い姜維にとって、初めて、尊敬の念を抱いた大人であった。
涙は流さなかった。痛む胸を、敢えて誇らしげに張ることで、姜維は迷当に対しての敬意を表した。
「今後、私達は姜維様の下で働きたく存じます。是非、兵卒の端にでも加えていただきたい」
「大王の下では何を」
「偵察部隊を率いておりました」
「分かった。まずは傷を癒し、そして、柳春にも会いに来てくれ。大王の死に、心を痛めているだろうから」
「御意」
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