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【 2章 】
3話 〔14〕
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一般的に使用される計測器には、本当にその数値が正確なものかを測るための、より高精度な計測器や基準が存在する。
重さの基準でいえば、最近ニュースにもなった『キログラム原器』の定義が変更されたことで有名だ。
そして、時間の基準であれば、一秒を一秒として決定しているもの。かつては地球の自転周期から換算された八万六千四百分の一を『秒』と定義してこられたが、現在では原子核の運動周期を基準とした時計。すなわち原子時計が採用されている。
「なるほどな、それぞれ基準側に二個と測定側に二個用いることで、相互に固体誤差が無いかチェックしようってことか!」
「そういうことよね? マリア」
「はい! そうすれば、何かの結果が見えると思うんですよ!」
確かに。一見地味だけど、それを知ることには意味がある。
「ここは形式的に原子時計は基準となるふたつをAとB。測定のふたつをCとDとするなら――」
「相対性理論が正しければ……。実験後は(A=B)≠(C=D)の結果になるよね……?」
もし違う結果が出たとしたら、それは相対性理論が正しくないという証明になる。
「それで、どうやって実験するのがいいかしら」
「やっぱり飛行機に乗って往復ですか!?」
「どこまで行くつもりだよ、僕はそんなにお金なんて持って無いからな」
私もこの実験のために飛行機を使えるほど裕福ではない。
「なるべく速い乗り物がいいとは思うけど、あたし達の予算じゃちょっと無理ね」
「それなら、スカイツリーがいいんじゃないかな……?」
私が腕を組んで思案していると、由那は私達でも実行できそうな案を勧めてきてくれた。この学校からでもいまから行けない距離じゃない。
スカイツリーは説明するまでもなく、2012年に開業した世界一の自立式電波塔で、その全高は六百三十四メートルというのは誰もが知るところではあるが、一般客用のエレベーターで上れるのは、天望回廊の四百五十メートルまでとなっている。
「いいですね! スカイツリー。みんなで上りましょう!」
気の早いマリアは、もう勝手にはしゃいだりしているけれど……。
「あのねぇ、みんなで上ったら誰が地上でこの装置を持つのよ」
「ツリーかぁ。待って、ちょっと調べてみる」
取り出したケータイで、シュウは何やらネット検索しだした。すぐにいくつかの情報がヒットする。
「エレベーターの速度は六百メートル毎分ってことだったから、時速だと三十六キロメートルだろ? 実験にしてはちょっと物足りなくないか」
「うん……、エレベーターはそれほどだけど、たぶん大丈夫……」
シュウが言う物足りないとは、この実験での基準であって、最長エレベーターの三百五十メートルを加速・減速も含めておよそ五十秒なんてスピードは、本来なら驚嘆すべきことである。
重さの基準でいえば、最近ニュースにもなった『キログラム原器』の定義が変更されたことで有名だ。
そして、時間の基準であれば、一秒を一秒として決定しているもの。かつては地球の自転周期から換算された八万六千四百分の一を『秒』と定義してこられたが、現在では原子核の運動周期を基準とした時計。すなわち原子時計が採用されている。
「なるほどな、それぞれ基準側に二個と測定側に二個用いることで、相互に固体誤差が無いかチェックしようってことか!」
「そういうことよね? マリア」
「はい! そうすれば、何かの結果が見えると思うんですよ!」
確かに。一見地味だけど、それを知ることには意味がある。
「ここは形式的に原子時計は基準となるふたつをAとB。測定のふたつをCとDとするなら――」
「相対性理論が正しければ……。実験後は(A=B)≠(C=D)の結果になるよね……?」
もし違う結果が出たとしたら、それは相対性理論が正しくないという証明になる。
「それで、どうやって実験するのがいいかしら」
「やっぱり飛行機に乗って往復ですか!?」
「どこまで行くつもりだよ、僕はそんなにお金なんて持って無いからな」
私もこの実験のために飛行機を使えるほど裕福ではない。
「なるべく速い乗り物がいいとは思うけど、あたし達の予算じゃちょっと無理ね」
「それなら、スカイツリーがいいんじゃないかな……?」
私が腕を組んで思案していると、由那は私達でも実行できそうな案を勧めてきてくれた。この学校からでもいまから行けない距離じゃない。
スカイツリーは説明するまでもなく、2012年に開業した世界一の自立式電波塔で、その全高は六百三十四メートルというのは誰もが知るところではあるが、一般客用のエレベーターで上れるのは、天望回廊の四百五十メートルまでとなっている。
「いいですね! スカイツリー。みんなで上りましょう!」
気の早いマリアは、もう勝手にはしゃいだりしているけれど……。
「あのねぇ、みんなで上ったら誰が地上でこの装置を持つのよ」
「ツリーかぁ。待って、ちょっと調べてみる」
取り出したケータイで、シュウは何やらネット検索しだした。すぐにいくつかの情報がヒットする。
「エレベーターの速度は六百メートル毎分ってことだったから、時速だと三十六キロメートルだろ? 実験にしてはちょっと物足りなくないか」
「うん……、エレベーターはそれほどだけど、たぶん大丈夫……」
シュウが言う物足りないとは、この実験での基準であって、最長エレベーターの三百五十メートルを加速・減速も含めておよそ五十秒なんてスピードは、本来なら驚嘆すべきことである。
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