32 / 71
【 3章 】
9話 〔32〕
しおりを挟む
「あたしは忘れ物を取って帰るから、みんなは先に帰っててもいいわよ」
「わかった。なら僕らはたぶん寄り道して帰ると思うから、何かあったら連絡して」
「オーケー、じゃあね」
私は三人を見送ったあと、そそくさと自分の教室に戻って、体操着の入ったバッグを手に取った。
「やれやれだわ。んと、ほかに何も忘れてないかな?」
服の上からぽんぽんと片手を当ててポケットを探る。ケータイ……、ハンカチ、原子時計……。
「…………!?」
パチン! 手慣れた棋士が盤に駒を指すような……。頭のなかで、大事なひと欠片が綺麗にはまる音がした。
私はついに理解した……。これはもう確信といっても過言じゃない。
「これよ、パズルは解けたわ!」
やっぱり……、異変の元凶はこの原子時計しかない。理屈ではわからないけれど、確かにこの原子時計には、得体の知れない秘密があるとしか考えられない。
昨日のエレベーターでの現象は、私がコレを持っている間に起こった。
家に帰ってからは机の上に置かれていたので、何も起こらなかったわけだし。
今日の数々の現象も、すべて私がコレを身に付けている間にだけ起きていた。だから体育の時間は体操着に着替えていたから大丈夫だったんだ……。
この原子時計には、絶対に感覚を狂わせる作用があるのは、もはや疑う余地がない。
調べなければならない……。その小さなとっかかりをようやく見つけた。
でも、それだけではじゅうぶんではない。
すぐに確かめてみたい……。衝動にかられ、急いで部室へと引き返した。
期待していなかったが、やはり部室にはもう人影はない。それでも、まだかすかに温度が残る室内に足を踏み入れ明かりを点ける。
鞄と体操着入のバッグを机に置いて、自分の席に腰を落とした。
何気なく腕時計を一瞥すると、針は午後の六時三十分を回っているが、それよりもいまは知りたい気持ちが先に立った。
「まだわからないことはあるのよね……」
昨日の由那には、なぜか何も起こらなかったのも不思議だ。
四個の原子時計のうち、このDの固体にだけ問題があるのか? それとも私に問題があるのか? もしくはその両方か。
制服の上着の内ポケットから原子時計を取り出す。
あらためて原子時計をじっくりと調べてはみたものの、外観からでは特に何の変哲も見受けらない。
原子時計のケースは底面にある小さなネジ数箇所で締められている。
「ちょっと分解したらダメかなぁ? ダメだとは思うけど……。でもバラしてみたい」
机に突っ伏して、手の中で原子時計を転がす。
「あっそうだわ! 確かこれに電池が内臓されてるって言ってたわよね……。電池が切れちゃったから交換しようとしたってことにして、一回開けて見ちゃおう」
迷っていても埒が明かないので、ここは適当な理由をつけて思い切ってやってみることにした。
「わかった。なら僕らはたぶん寄り道して帰ると思うから、何かあったら連絡して」
「オーケー、じゃあね」
私は三人を見送ったあと、そそくさと自分の教室に戻って、体操着の入ったバッグを手に取った。
「やれやれだわ。んと、ほかに何も忘れてないかな?」
服の上からぽんぽんと片手を当ててポケットを探る。ケータイ……、ハンカチ、原子時計……。
「…………!?」
パチン! 手慣れた棋士が盤に駒を指すような……。頭のなかで、大事なひと欠片が綺麗にはまる音がした。
私はついに理解した……。これはもう確信といっても過言じゃない。
「これよ、パズルは解けたわ!」
やっぱり……、異変の元凶はこの原子時計しかない。理屈ではわからないけれど、確かにこの原子時計には、得体の知れない秘密があるとしか考えられない。
昨日のエレベーターでの現象は、私がコレを持っている間に起こった。
家に帰ってからは机の上に置かれていたので、何も起こらなかったわけだし。
今日の数々の現象も、すべて私がコレを身に付けている間にだけ起きていた。だから体育の時間は体操着に着替えていたから大丈夫だったんだ……。
この原子時計には、絶対に感覚を狂わせる作用があるのは、もはや疑う余地がない。
調べなければならない……。その小さなとっかかりをようやく見つけた。
でも、それだけではじゅうぶんではない。
すぐに確かめてみたい……。衝動にかられ、急いで部室へと引き返した。
期待していなかったが、やはり部室にはもう人影はない。それでも、まだかすかに温度が残る室内に足を踏み入れ明かりを点ける。
鞄と体操着入のバッグを机に置いて、自分の席に腰を落とした。
何気なく腕時計を一瞥すると、針は午後の六時三十分を回っているが、それよりもいまは知りたい気持ちが先に立った。
「まだわからないことはあるのよね……」
昨日の由那には、なぜか何も起こらなかったのも不思議だ。
四個の原子時計のうち、このDの固体にだけ問題があるのか? それとも私に問題があるのか? もしくはその両方か。
制服の上着の内ポケットから原子時計を取り出す。
あらためて原子時計をじっくりと調べてはみたものの、外観からでは特に何の変哲も見受けらない。
原子時計のケースは底面にある小さなネジ数箇所で締められている。
「ちょっと分解したらダメかなぁ? ダメだとは思うけど……。でもバラしてみたい」
机に突っ伏して、手の中で原子時計を転がす。
「あっそうだわ! 確かこれに電池が内臓されてるって言ってたわよね……。電池が切れちゃったから交換しようとしたってことにして、一回開けて見ちゃおう」
迷っていても埒が明かないので、ここは適当な理由をつけて思い切ってやってみることにした。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。
四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……?
どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、
「私と同棲してください!」
「要求が増えてますよ!」
意味のわからない同棲宣言をされてしまう。
とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。
中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。
無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる