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【 TBA 】
2話 〔37〕
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空腹を満たしたあとは、シャワーを浴びてから自室に籠もった。
特にすることもなく、ベッドで横になると自然と目蓋が重くなり、浅い眠りにつきかけたときだった。
突然、ケータイの着信音で微睡みから引き戻された。
まるで、さながら天才画家サルバドール・ダリが『記憶の固執』などで用いたといわれるイメージ制作法を試された気分だ。
発信者は由那。なんともいえない不安に掻き立てられて、間を置かずにケータイを取った。
「由那。どうかしたか」
「シュウちゃん、あのね……」
スピーカーから聞こえる由那の声は、か細くいまにも泣き声に変わりそうだった。
こんなことは滅多にない。すぐに何かあったのだと――。いや、未那に問題があったのだと察するにはじゅうぶんだった。
「うん。どうした?」
「お姉ちゃんが……まだ帰ってこないの……」
「連絡は? ……ないか」
「メールも返ってこないし……、電話も何回もかけてるけど、呼び出しはしてるのに電話には出ないよ……」
居留守でも使う必要がなければ、その状況が普通なわけがない。
考えられるとすれば、ケータイをどこかに無くして受け取れないか、本人がいまだ帰宅していないことを考慮すれば、意識不明。最悪の場合は……誘拐という線もありえる。
「わかった。いまからそっちに行くから由那も出られるか?」
「う、うん……」
ケータイを切ってベッドから跳ね起きると、有り合わせの私服に着替えて、速攻で家を飛び出した。
途中で未那のケータイに電話をかけたが、やっぱりコールする音だけが続く。
「クソッ!」
徐々に胸騒ぎが大きくなる。未那は僕達に心配させるようなことはしない。だから絶対何か悪いことが起こっているに違いないと、そう思わざるを得ない状況にある……。
由那の家に駆けつけると、まだ制服姿の由那が自分のケータイを握り締めて玄関先に立って待っていてくれた。
「シュウちゃん……どうしたらいい……」
動揺でいつもの冷静さはなく心細い声が届く。きっと、冷たい夜の帳の所為も重なって、肩も小さく震えている。
「由那。未那のケータイの場所はわからないのか? GPSが使えるだろう」
「それが……お姉ちゃんのアカウントまでは知らなくって……」
やはりそう思いどおり簡単にはいかないようだ。
「そうか。じゃあアテのあるところから探すしかないか」
そう伝えると、由那と一緒に真っ先に思い当たる学校へと歩調を早めた。
到着するとさっさと校門を抜け、校舎の外周をぐるっと回ってみる。
「……! シュウちゃん、アレ……」
由那が校舎の上方を指さす。どうやら大当たりだったらしい。
時刻は二十二時。にもかかわらず職員室の一角と校舎裏手側三階にそれぞれ一点だけ明かりの点いた箇所がある。三階のは紛れもなく理科準備室があるはずの場所だった。
特にすることもなく、ベッドで横になると自然と目蓋が重くなり、浅い眠りにつきかけたときだった。
突然、ケータイの着信音で微睡みから引き戻された。
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発信者は由那。なんともいえない不安に掻き立てられて、間を置かずにケータイを取った。
「由那。どうかしたか」
「シュウちゃん、あのね……」
スピーカーから聞こえる由那の声は、か細くいまにも泣き声に変わりそうだった。
こんなことは滅多にない。すぐに何かあったのだと――。いや、未那に問題があったのだと察するにはじゅうぶんだった。
「うん。どうした?」
「お姉ちゃんが……まだ帰ってこないの……」
「連絡は? ……ないか」
「メールも返ってこないし……、電話も何回もかけてるけど、呼び出しはしてるのに電話には出ないよ……」
居留守でも使う必要がなければ、その状況が普通なわけがない。
考えられるとすれば、ケータイをどこかに無くして受け取れないか、本人がいまだ帰宅していないことを考慮すれば、意識不明。最悪の場合は……誘拐という線もありえる。
「わかった。いまからそっちに行くから由那も出られるか?」
「う、うん……」
ケータイを切ってベッドから跳ね起きると、有り合わせの私服に着替えて、速攻で家を飛び出した。
途中で未那のケータイに電話をかけたが、やっぱりコールする音だけが続く。
「クソッ!」
徐々に胸騒ぎが大きくなる。未那は僕達に心配させるようなことはしない。だから絶対何か悪いことが起こっているに違いないと、そう思わざるを得ない状況にある……。
由那の家に駆けつけると、まだ制服姿の由那が自分のケータイを握り締めて玄関先に立って待っていてくれた。
「シュウちゃん……どうしたらいい……」
動揺でいつもの冷静さはなく心細い声が届く。きっと、冷たい夜の帳の所為も重なって、肩も小さく震えている。
「由那。未那のケータイの場所はわからないのか? GPSが使えるだろう」
「それが……お姉ちゃんのアカウントまでは知らなくって……」
やはりそう思いどおり簡単にはいかないようだ。
「そうか。じゃあアテのあるところから探すしかないか」
そう伝えると、由那と一緒に真っ先に思い当たる学校へと歩調を早めた。
到着するとさっさと校門を抜け、校舎の外周をぐるっと回ってみる。
「……! シュウちゃん、アレ……」
由那が校舎の上方を指さす。どうやら大当たりだったらしい。
時刻は二十二時。にもかかわらず職員室の一角と校舎裏手側三階にそれぞれ一点だけ明かりの点いた箇所がある。三階のは紛れもなく理科準備室があるはずの場所だった。
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