【幼馴染の過去改変はハッピーエンドで終われるか!?】

久久泉

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【 5章 前編 】

1話 〔51〕

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 その日、昼過ぎから降り出した雨は、いまだ止むことはなかった。
 シトシトと庭の木の葉に当たる音から、ときにはザーッっと家の壁や窓を打ち付ける雨音に変わる。

 私は住み慣れたはずの自室に、若干の居心地の悪さを感じながらも、じっと部屋の隅に丸くなって、置かれた状況の深刻さからくる絶望感に愕然となって震えていた。

「どうすればいいのよ……」

 制服のポケットから、あの結晶を取り出して一心に見つめる。
 最初に見たときとほぼ変化はなく、リングが緩やかに自転している。

「この結晶の秘密も……そう簡単には解けそうにないし」

 部屋の置き時計は十七時を回ったところだった。

 玄関のあたりから少し慌ただしい声がしたあとで、自室に近い階段から足音が聞こえてくる。
 階段の板を踏む音はひとりぶんのものしか聞こえなかったので、由那かこの世界の『ミナ』のどちらかが帰宅してきたのだと想像できた。
 弱々しい足取りはこの部屋の前で止まり、ドアハンドルが静かに下りると、ゆっくりと部屋のあるじが入ってきた。

 …………!?

 何故か雨でずぶ濡れの姿になって、こちらのミナは消沈して帰ってきていた……。

 朝は晴れていたので傘を持って行かなかったのはやむをえないとしても、私は学校のロッカーに折りたたみ傘を常備していたので、こんな羽目になるはずはまずない……と思うが。

 自分の過去の記憶を振り返って、こんな日があったのかと思い出してみる。

 去年の六月十四日。

 ――そうだ。この日は雨の中、傘も差さずに家へ帰った……。

 それは、由那がシュウに告白をして、正式にふたりが交際すると決まった日。

 私は小さい頃から一緒だったシュウのことが、物心ついたときには好きになっていた。
 でも、それと同じくらい妹の由那も大好きだったし、由那もシュウのことが好きだということはわかっていた。

 だからこそ由那を傷つけたくなくて、仲のいい幼馴染として接するように心掛けていた。
 そこに、いつしか自然とマリアも輪に入ってきて、ずっと四人でこの関係を続けていきたいと願っていた。

 けれどこの日、ついに由那は告白をして、それまでのバランスは音をたてるように崩れてしまった……。
 私は、シュウと由那のふたりから切り離された気がして……。雨の中、傘を差すのも忘れて打ちひしがれながら帰ったのだった。

 ふたりは悪くない。いずれどちらかと付き合うことは、自然な成り行きだったはずなのに。

 ――結局は、私に告白する勇気が無かっただけ。

 引っ込み思案の由那からは、告白なんてするはずがないと……。
 ずっと変わらない関係が続くと、思っていた自分が甘かっただけだ。

 そうだ、由那はああ見えて、ここぞというときの決断力は私よりも早い。

 もしも、私がこの一年前の世界に時間移動してきたことに、なにか特別な理由があったとすれば……。
 過去のをどうにか改変したいと、心のどこかで願っていたからなのかもしれない……。
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