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【 7章 】
5話 〔69〕
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僕の部屋から未那の気配が消えた――。
徹夜の疲れと、一晩中駆けずり回ったおかげで脚はガタガタだった。
当然、金曜日の今日は普段どおり授業があることは承知していたけれど、さすがにいまはまだ動けそうにもない。
疲労が限界にきて、虚ろになった意識は思考を停止させ深い眠りについた。
¶
服の中にいれっぱなしだったケータイに電話がかかってきて、着信音で僕の眠りは妨げられた。その相手は個別設定された着信音で、画面を見なくてもすぐに由那からだとわかった。
必ず連絡すると言っておきながら疲れてそのまま寝てしまったのだから、さぞかし心配させてしまっているに違いない。あわててケータイを取って、電話を繋いだ。
「もしもし……由那か」
「あっ……シュウちゃん?」
由那の第一声、落ち込んだ様子はもうそれほど感じられなかった。
「あぁ、ずっと連絡しなくてごめん。結局、未那は見つけられなかった……」
「ううん、しょうがないよ……。シュウちゃんのほうこそ大丈夫?」
言われて意識を身体に向ける。あれだけ重かった脚や全身の疲労はけっこうとれているようだった。
「そうだな、大丈夫。だいぶしんどかったけどマシになってる」
「そっか……それで、少し話したいことがあるから、あとで学校に来れないかな……?」
手の中のケータイ画面の時刻は、十時五十分を少し越えたところ。学校では二限目まで済んで、これから三眼目にはいる時間だ。
普段から放任気味の両親は、朝方帰宅したことを知っていても何も聞かず、時間になっても起こしにはこなかったようだ。
「うん、わかったよ。ちょっと準備を済ませてから行くことにするから、着いたらあとでメールする」
要件だけ済ませるとやんわり電話を切った。やりとりは簡潔だったけれど由那も電話で話すのは得意じゃないし、具体的なことは合って話したほうがいい。
あらためて、すっかり陽が昇って明るく照らされた部屋を虚しく眺めるが、もはや未那を感じることはない。
そこそこお腹も空いていたので、何か食べられる物を求めて居間に向かう。テレビやその辺の電化製品に動きもなく、家の生活感は消えかかっている。
「なんだ、母さんもいないのか」
仕方なく冷蔵庫の中から、あり合わせのものを温めて軽めの御飯にした。
それを食べ終えて、簡単に頭を洗ったり、身の回りを整えると制服に着替えて学校へと向かった。
こんな時間にひとりで登校するのは変な気分だったけど、たまにはそれも新鮮だと感じた。
学校に着いた時には、時刻は十二時半を迎えていて、まだ四限目の授業の最中だったが、当然いまから授業を受ける気になどならなかったので、部室で由那を待つことにした。
部室として使っている理科準備室は、普段から鍵はかかっていないので、いつでも出入り可能だ。それでも部員ぐらいしかこの部屋を利用する人間はいなかったから、物騒なことが起こったという話はこれまで聞いたことがない。
部室の扉を開けて中に入る。勿論、室内にはほかに誰の姿もない……。
授業が終わるまで待つしかないので、戸棚から自分のカップを取り出して、インスタントのコーヒーを入れてポットのお湯を注いだ。お湯はだいぶ温くなっていたけど別に拘りはなかった。
徹夜の疲れと、一晩中駆けずり回ったおかげで脚はガタガタだった。
当然、金曜日の今日は普段どおり授業があることは承知していたけれど、さすがにいまはまだ動けそうにもない。
疲労が限界にきて、虚ろになった意識は思考を停止させ深い眠りについた。
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服の中にいれっぱなしだったケータイに電話がかかってきて、着信音で僕の眠りは妨げられた。その相手は個別設定された着信音で、画面を見なくてもすぐに由那からだとわかった。
必ず連絡すると言っておきながら疲れてそのまま寝てしまったのだから、さぞかし心配させてしまっているに違いない。あわててケータイを取って、電話を繋いだ。
「もしもし……由那か」
「あっ……シュウちゃん?」
由那の第一声、落ち込んだ様子はもうそれほど感じられなかった。
「あぁ、ずっと連絡しなくてごめん。結局、未那は見つけられなかった……」
「ううん、しょうがないよ……。シュウちゃんのほうこそ大丈夫?」
言われて意識を身体に向ける。あれだけ重かった脚や全身の疲労はけっこうとれているようだった。
「そうだな、大丈夫。だいぶしんどかったけどマシになってる」
「そっか……それで、少し話したいことがあるから、あとで学校に来れないかな……?」
手の中のケータイ画面の時刻は、十時五十分を少し越えたところ。学校では二限目まで済んで、これから三眼目にはいる時間だ。
普段から放任気味の両親は、朝方帰宅したことを知っていても何も聞かず、時間になっても起こしにはこなかったようだ。
「うん、わかったよ。ちょっと準備を済ませてから行くことにするから、着いたらあとでメールする」
要件だけ済ませるとやんわり電話を切った。やりとりは簡潔だったけれど由那も電話で話すのは得意じゃないし、具体的なことは合って話したほうがいい。
あらためて、すっかり陽が昇って明るく照らされた部屋を虚しく眺めるが、もはや未那を感じることはない。
そこそこお腹も空いていたので、何か食べられる物を求めて居間に向かう。テレビやその辺の電化製品に動きもなく、家の生活感は消えかかっている。
「なんだ、母さんもいないのか」
仕方なく冷蔵庫の中から、あり合わせのものを温めて軽めの御飯にした。
それを食べ終えて、簡単に頭を洗ったり、身の回りを整えると制服に着替えて学校へと向かった。
こんな時間にひとりで登校するのは変な気分だったけど、たまにはそれも新鮮だと感じた。
学校に着いた時には、時刻は十二時半を迎えていて、まだ四限目の授業の最中だったが、当然いまから授業を受ける気になどならなかったので、部室で由那を待つことにした。
部室として使っている理科準備室は、普段から鍵はかかっていないので、いつでも出入り可能だ。それでも部員ぐらいしかこの部屋を利用する人間はいなかったから、物騒なことが起こったという話はこれまで聞いたことがない。
部室の扉を開けて中に入る。勿論、室内にはほかに誰の姿もない……。
授業が終わるまで待つしかないので、戸棚から自分のカップを取り出して、インスタントのコーヒーを入れてポットのお湯を注いだ。お湯はだいぶ温くなっていたけど別に拘りはなかった。
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