運命の出会いは突然に

おみや

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「昨日はよく眠れましたか?」

「芝さん。おはようございます。はい、すごいぐっすり寝てしまって。自分でもちょっと驚いています」

「昨日は釣りをしたり、初めてのキャンプだったりで、きっと自分でも無意識に緊張していたんじゃないですか」

「そうかもしれないです」

「美里さんは、今日は何をする予定ですか?」

「あー、特に考えてなくて。テントのあたりで、ぼーっと景色でも眺めようかと」

「そうなんですね」

「芝さんは、何かご予定あるんですか?」

「私はこれです」



 そう言うと、カメラを構えるジェスチャーをする。



「素人趣味でお恥ずかしいんですがね。この時期しか見れない野草や、花が咲いていたりするんですよ」

「そうだなんですね!カメラなんて素敵ですね」

「別に撮るのはスマホでもいいんですよ。意識して見ないと見落としてしまうものってたくさんありますからね」



 芝さんのその言葉は、昨日の星空を思い出させた。



「分かります。私、昨日星を見上げて、そう思いました。普段そこにあるはずなのに、見えてないんだなって」

「そうですね」

「こうやって自然の中に居ると、同じ時間の流れなのに、なぜかゆっくり感じます」

「我々はどうしても時間に追われるように生活していますからね」


 今日の奈々子さんは、大自然の中でヨガをする予定らしく、しっかり、ヨガマットとトレーニングウェアでヨガのポーズをする奈々子さんは、村瀬君に細かい指示を出しながら、SNSにアップする写真を撮っている。


 サーヤさんは、日光浴というなの昼寝を満喫するらしい。


 一眼レフカメラを抱えた芝さんを見つけた私は、そこに小走りに駆け寄った。



「あの。よかったらご一緒してもいいですか?」

「ええ、ぜひ」

「ご一緒と言っても、私はこれなんですけど」



 そういってスマホを出すと、芝さんは目を細めて笑った。

「いいと思いますよ」

「お邪魔になりませんか?」

「邪魔なんて、とんでもない。いや、嬉しいな。いつも一人で撮って、一人で感動しているだけだったので」


 意識して見ると、こんなに花が咲いて居る事や、小さな虫が居る事に驚きをもつ。


 それからは芝さんと撮った写真を見せ合ったり、一眼レフカメラを触らせてもらい写真を撮ったりした。


「美里さんはセンスがいいですね」


 お世辞とは分かっているが、撮った写真をそう評価してくれると思わず頬が緩んでしまった。



「じゃあ、おやすみなさい~」



 集合場所から分かれて、また一人テントに戻ってくる。



 スマホの写真を見返すと、今日撮った小さな花々がきらきらと輝いて見えてくる。



「きっと、山だけじゃなくて、いろんな所に咲いてるんだよね」
 

 写真の一枚に写りこんでしまった芝の写真を見る。


 ちょっとずんぐりとした体形に、小さな目に銀縁のメガネ。穏やかな笑みと言えばいいのだろうか、低く落ち着いた声はそれだけで安心感を与えてくれる。


 好きとかはないし、ドキドキもしない。


 今まで付き合ってきた人とも全然違うし、恋愛対象ではないけどなぜか安心感のある人。


『よかったら、今度一眼レフの事教えますよ』


 昼間、芝さんからされた提案が頭に浮かぶ。


「それって、また会いましょうって事かな?」


 いや、あくまで親切で言ってくれてるんだし。
 あまりにも自意識過剰過ぎる。


 フルフルと頭を振ると、今日は早めにテントに入る事にした。


「そうだ。確か、チャックに防犯ブザーをつけるといいんだっけ」


 昨日はそのまま寝てしまったが、ソロキャンプで女性が一番狙われるのがやはり就寝時らしい。

 その対策として、入口のチャックに防犯ブザーをつけ、その先を寝袋に括り付ける。
 外部からチャックを開けようとすれば、防犯ブザーがなって周囲に知らせるという仕組みだ。


 明日帰るのか…。


 いつもは苦痛な旅行のはずなのに、なんだか名残惜しさが胸をしめる。



 ウトウトと瞼が重くなってくると、ガサっと何か聞こえた気がした。





 いま、何か聞こえたような…。




 寝ぼけた思考を一気に覚醒させたのは、けたたましく鳴り響く防犯ブザーの音だった。


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