魔法使いの薬瓶

貴船きよの

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水中花壇編

おまけの小瓶-2

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 しかし、ルウにはとうとう逃げられない瞬間が訪れた。
 次の夜。ルウが湯船に浸かり、水玉を作って遊んでいたときだった。
 突然、脱衣所と浴室を仕切る引き戸が開いた。
「へ……?」
 ルウの心境など露ほども知らず、ガルバナムは浴室に入ってきた。
「ひゃ……っ、ど、どうして!」
 ルウの手のなかに出来上がっていた水玉は、驚いた拍子にただの湯に戻ってこぼれた。
「一緒に入ったらまずいのか?」
「いえ……、でも、僕に、先に入っていいと言ったじゃないですか。それなのに……」
 ルウは、平静を装って答える。
「そう言わないと、なかなか一緒に入れないだろう。おまえが来るのを待っていても、いつまでも来ない」
 ガルバナムの正論を導いた自分の過去の行動を、ルウはこのときばかりは呪った。
 ガルバナムはシャワーで体を洗うと、広い湯船に、静かに体を沈めた。
 ルウは、入れ違いに立ち上がる。
「じゃあ、僕は先に上がって……」
「どうかしたのか?」
 ガルバナムは、ルウの腕を掴んで引き留めた。
「なんだか、俺のことを避けているように見えるんだが」
 ガルバナムの手が、ルウを離す気配はなかった。
 ガルバナムの真っ直ぐな視線に、ルウはようやく降参する。
 再び湯船に浸かり、ルウは言った。
「師匠を避けたかったわけじゃ、ないんです……。そんなふうに思わせてしまっていたのなら、ごめんなさい」
「なにか、あったのか?」
 ガルバナムのやさしい声音に、ルウは、抑えていた思いを吐き出した。
「僕……、このままだと、……ふ、ふしだらな人に、なってしまいそうで……」
 俯いて、ルウはガルバナムを見られなかった。
「ルウが? どういう意味だ?」
 ルウは、消え入りそうな声で答える。
「師匠と、もっと、……したいんです」
「……なにを?」
「えっちな、こと……。ああっ、やっぱり無しです! 聞かなかったことにしてください!」
 ルウは顔を手で覆って身を縮こまらせたが、ガルバナムは、ルウの様子がおかしかった理由を知ると、安堵した。
「……なんだ。なにか、もっと大変なことを隠しているのかと思ったよ」
「な、なんだとはなんですか? すごく悩んでいたのに!」
 ルウが声を荒げるも、ガルバナムは意に介さず言った。
「でも、もう悩まなくていいだろう」
「えっ?」
 ガルバナムは、隙を見てルウの体を抱えると、自分の前に移動させた。
 ルウを背後から抱き締める格好になり、ガルバナムは、ルウの耳元に語りかける。
「教えてくれ。ルウにとってのえっちなことって、なんなんだ? 漠然としていてわからないよ」
 ルウは、ガルバナムの口調が意地悪くなっていることに気づいた。
「そ、それは……」
「耳にキスをするとか?」
 ルウの答えなど始めから期待していなかったかのように、ガルバナムはルウの耳に口づける。
「んっ」
 耳の裏からなかまで、ガルバナムはねっとりと愛撫する。
「あっ、あ……んっ」
 ルウの体は、ぴくりと震えた。
「……どうなんだ?」
「もう、絶対、わかっているじゃないですかぁ……っ」
 ガルバナムはにやりと笑うと、耳からは口を離さずに、
「じゃあ、ここを指で擦られるのは?」
 と、指先で胸の突起を弄ぶ。
「あぁっ、そこ、も……」
 ガルバナムの両手がルウの胸に回り、湯で温まった淡い桃色の突起を、二つとも指先で転がす。
 ルウの体が逃げようとしても、ガルバナムの足の間に収まっていては逃げ場もない。
「あっ、あんっ、やだ……、そんなに、くりくりしたら……っ、師匠……っ」
「こんなときまで、師匠と呼ぶのか?」
 耳元に切実に響いた問いかけに、ルウは、おずおずと口を開く。
「あ……。ガルバナム、さん……」
「ルウが呼ぶ名前、久しぶりに聞いた」
 それだけのことでも、ルウには、ガルバナムが心なしか喜んでいるように思えた。
 ガルバナムは、執拗に胸を弄りながら、片手では湯のなかでそそり立つルウの熱を握った。
「あ、ぅ……っ、ガルバナム、さん……、それは、だめです……っ」
 ガルバナムが握ったものを手で擦り上げる度に、ルウは唇を噛み締めて迫り来る勢いを堪えていた。
「あぁっ、う、ん……、んんっ」
「いくのを我慢しているのか?」
「う……、ここ、お風呂なのに……っ」
「欲望に忠実になるんじゃなかったのか?」
 ガルバナムが持ち出した話に、ルウは慌てる。
「あ、あれは……、キスの話で……」
「その先は?」
「先……?」
 不安そうなルウを見て、ガルバナムは手を休め、ルウをしっかりと抱き締めた。
「素直になっていいんだぞ、ルウ。ルウが俺に触れたくなっても変だとは思わないし、俺が触れて感じてくれているのに、嫌いになったりもしないよ」
「……本当、に?」
 ルウは、自分を包み込む腕に手を重ねる。
「言っておくが、俺は、おまえのいやらしい姿を見たいんだ。……俺にしか見せない姿をな」
 ガルバナムの下半身でも、ルウの腰に当たる熱は頭をもたげていた。
 ガルバナムが緩めた腕のなかでルウが振り返ると、ガルバナムは噛みつくようなキスをした。
 すでに熱くなっていたルウの体は、ガルバナムのキスに頭まで溶けてしまいそうになる。
「ふぁ……、がう、ばなむ、ふぁん……っ」
 舌に吸いつかれ、ルウの息も荒くなる。
「ルウ、浴槽の縁に手をついて立つんだ。……お尻を上げて、こちらに向けて」
「そんな格好……」
「潤滑剤がないから、入念にほぐしたいんだ」
 ルウは、渋々と言われた通りに立ち上がり、ガルバナムに白い臀部を向けた。
「これで、いいんですか? 恥ずかしいです……」
「いいよ。舐めやすい」
 ガルバナムは、やわらかな双丘を指で掴むと、秘部が潜む谷に顔を埋めた。
 ガルバナムの舌で敏感な入口を突かれると、ルウの体は跳ねる。
「ああっ、あ……っ、ガルバナム、さん……っ」
 ルウの入口は、入浴したおかげでほぐれやすく、ガルバナムがねじ込んだ舌も受け入れた。
「やぁっ、あっ、……あっ、舌が、動いて……っ」
「準備をしているだけなのに、そんなにいいのか?」
「やだ、や、あぁ……っ」
「お尻を揺らしながら否定しても、説得力がないぞ」
 ルウの体は小刻みに跳ね、性器ははち切れそうなほど膨張していた。
 ガルバナムは顔を離すと、指先で谷をそっとなぞった。
「はぁっ、ああん……っ」
 ルウの膝は震え、秘部は物欲しそうにガルバナムに訴える。
「ルウのここが、ぱくぱく動いてなにかを食べたそうだ。……俺の指、かな?」
 ガルバナムが指を二本挿入すると、ルウのなかは指を強く締めつけた。
「ち、が……っ」
「なにが違うんだ? こんなに締めつけてくるぞ」
 ガルバナムが指を出し入れしていると、ルウは涙目で振り返った。
「なんで、指、なんですか……? あ、……あんっ」
 ルウは、とうとうへたり込んで浴槽の底に膝をついた。
「ほかに欲しいものがあるのか?」
 指を抜いて、ガルバナムは訊ねる。
「んん……っ」
 ルウは、やっとのことで頷いた。
「ガルバナムさんの……、入れて、ください。欲しいんです、ガルバナムさんが……っ」
 顔を赤らめ、涙を浮かべながら懇願するルウに、ガルバナムも理性を吹き飛ばされた。
「ルウ、浴槽の縁にしがみついていろ」
 ガルバナムは、ルウの入口に勃ちきった性器をあてがうと、一気に潜り込ませた。
「ああっ!」
 ルウは、きれいな背中を反らせて、びくびくと動くガルバナムの興奮を飲み込んだ。
「痛くないか? 動くぞ」
「はい……、ああっ、すごい……、です……っ、あっ、あっ」
「……気持ち、いいのか?」
「……いい、ですっ、あっ、気持ち、いい……っ!」
「俺もだよ。ルウのなか、いつもより熱く、絡みついてきて……っ」
 窮屈な場所へと押し入ったガルバナムの熱は、動くほどにルウの全身へと快感を走らせる。
「ルウ、激しくしてもいいか?」
「はい……っ、あっ、お湯まで、入ってきちゃ……っ、あんっ! あんっ!」
 ガルバナムが腰を打ちつける度に、湯船は波を立てた。
 湯船のなかで繰り返されるピストンは、我慢の限界が近づくルウの性器まで容赦なく揺らす。
「ルウ……っ、気づいてやれなくて、わるかったな……」
「え……っ」
「だが、俺にねだるルウが見られたのは、よかった……っ」
「それ……、忘れて、くださいっ、う、んあっ、あ……っ」
 ガルバナムは、ルウの背中に抱きついて言った。
「……ルウ、好きだ。俺を求めてくれて、嬉しかったよ」
「そんな、こと、今……っ、ああっ!」
「すごく、締まった……っ」
「や、やだ……っ! いっちゃう……っ!」
 ガルバナムがルウのなかを強く擦り上げると、ルウは背中を反らした。
「やぁっ、い、く……っ! ああ……っ!」
「俺も……っ!」
「ガルバナムさん、んん……っ!」
 湯船の水面が落ち着くと、浴室には二人の呼吸だけが響いた。
 果てた二人は、火照った体で浴槽にもたれかかる。
 呼吸を整えていると、湯のなかには、放たれた白い快楽の余韻が漂っていた。
 ガルバナムは、ルウの肩に頬を載せて言った。
「……俺といるときなら、ふしだらなルウも歓迎するよ」
「いつもじゃないですからね……?」
 口を尖らせるルウに、ガルバナムは笑った。
 つられてルウも笑い、二人はもう一度キスをした。
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