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ビンドの収穫祭編
2,収穫祭-3
しおりを挟む食事を終えて食器を返却すると、ルウ達きょうだいはダーツで貰った景品で遊んでいた。
柔らかい羽根が四枚ついた小さい球を、掌から起こした風で吹き上げて、地面に落とさないように順番に宙に上げていく。羽根つきの球は、花びらを回転させるようにゆっくりと落ちてくる。
その様子を、ガルバナムとディアは離れたところで眺めていた。
ガルバナムは、ディアに話しかけた。
「子ども達の面倒は、お一人で?」
「そうですね。大体は。子ども達の両親がなかなか帰ってこられませんので」
ディアは、苦笑を滲ませて答える。
「ルウは、そちらではどんな様子ですか。手紙には、当たり障りのないことしか書いていないんです」
ディアは、遠慮がちに訊ねた。
ガルバナムは言った。
「いつも自分自身と向き合っているように見えます。魔法によって得意不得意の差はあるようですが、今は魔法薬作りに夢中なようなので、したいようにしてもらっています」
ディアは言った。
「私は魔法薬を作りながらでしか小さいルウを構ってあげられませんでしたので、どうしても魔法薬作りの手伝いばかりさせてしまったんです。時々、もっとほかのことも教えてあげたかったと思います」
「ルウなら、興味があることを見つければ進んで学びますよ。私の仕事に喜んで付いてくることもあります。彼は、自分の心が向かうものには正直に従うのです。……羨ましいくらいに」
明朗なガルバナムの返答に安堵しながらも、ディアは困ったように呟く。
「ひとつのものしか見えなくなるようなところもありますけれどね」
ディアの言うことが実体験を通してリアルに思い出され、ガルバナムは思わず笑みが漏れた。
「ええ。悩むときも楽しむときも、どんなときも真剣なのだと思います」
ガルバナムの眼差しの先には、弟と妹にゲームで劣勢になりながら、困ったり笑ったりと表情を忙しく変えるルウの姿があった。
「ルウが弟子入りに来たとき、魔法学校の教えどおり、家の雑用をすると申し出ました。私はそれを見ていました。彼は不器用なところはありますが、物の扱い方や所作で、真面目な子であることはわかりました。ずるさや卑しさを感じることもありませんでしたし、その印象は今も変わりません」
ディアは、なにを思ったのだろうか。やさしい目に、子ども達を映す。そして、満たされたように笑みを湛えると、ガルバナムに体の正面を向けた。
「今日は、生き生きとしているルウの顔を見られて安心しました。ルウのことを、これからもどうぞよろしくお願いいたします」
深々と頭を下げるディアに、
「はい」
と、ガルバナムもディアに体を向け、頭を下げた。
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