【完結】転生した令嬢は今度こそ幸せを掴みます！

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　邸に送り届けてもらった後はいつものように母に抱きしめられ、メイジーに心配され、父は早く帰宅して一緒に夕食を摂る事に。

「お父様、ファルセットお兄様はまだ帰って来られないのかしら？」

お父様はニコニコしながら

「今頃ファルセットはカルサルに書類を終わらせるように迫っていると思うよ。あいつは優秀だからね。明日のリアの事を思って頑張ってるんじゃないかな」

「お兄様、早く帰って来れると良いですね」

そんな会話をしていたが、夜遅くになっても兄は帰って来れなかったようだった。ベッドでゴロゴロと頑張って兄が帰ってきたという知らせを待っていたけれど、気づいたら朝になっていたようだ。

メイジーがカーテンと窓を開けてくれる。

「お嬢様、本日から王宮に出勤ですよ」

寝ぼけ眼で寝巻きから着替えをしながら外を見ると、初夏を思わせる香りと鳥の囀る声が聞こえてきた。

今日も良い日になりそう。

　朝食は父と母との3人で手早く済ませて父と一緒に馬車に乗り込み王宮へと向かう。お父様は宰相補佐なのでもちろん文官、兄も殿下の側近だが文官なので2人とも深緑の制服とマント。私が今日袖を通した服は魔導師なので濃いワインレッドの制服にローブ、白のバッジ。憧れの制服にドキドキしてしまう。

因みに騎士団は青系統。色が薄いほどエリートなんだとか。勿論白は王族の色。

私のバッジが白い羽根なのは光魔法だと証明しているとか何とかで特注品らしい。目立たないバッジで良かったのにと思ってしまう。

　私は父と王宮入り口で別れ、魔導師棟へ入る。

「今日から勤務させて頂きます。リア・ノーツです。宜しくお願いします」

受付があるその部屋には朝だからなのか魔導師達が沢山いたので私は大きな声で挨拶をする。本来魔導師は魔法研究や魔物討伐で出かける事も多いため沢山の人に挨拶出来て良かった。

私はカルサル師団長の部屋をノックする。

「おはよう御座います。リア・ノーツ只今出勤致しました」

部屋を見渡すと昨日は足の踏み場も無かった書類だらけの部屋が綺麗に片付けられていた。そして机に突っ伏してボロボロになったカルサル師団長とその横で澄ました顔をして書類整理している兄の姿。

「お兄様！徹夜したのですか？邸に帰って来なかったので心配していたのです」

ファルセットお兄様に駆け寄り、ヒールとリフレッシュをすぐに唱える。

「リアありがとう。リアを見たら疲れも吹っ飛んだよ。ヒールまで。カルサル様、私の役目は終わりましたのでこれから殿下の元に帰ります。リアの為にも書類は溜めないようにお願いしますね。では、失礼します」

お兄様は私に軽くハグをした後、ライアン殿下の元に戻って行った。残されたカルサル師団長は瀕死の状態。一晩で山のような書類を片付けていたと思うと納得する。

普段から書類整理すれば良いのに。私はそう思いながらカルサル師団長にヒールとリフレッシュを唱える。

「カルサル師団長、大丈夫ですか？匂うと若き王宮魔導師様が台無しですよ」

「リア君有難う。助かった。君の兄は鬼だな」

「私には激甘ですけどね」

　雑談をしつつ本日の書類を片付ける。お兄様が書類の山をやっつけてくれたおかげでお昼前にはカルサル師団長の有り難いお言葉と共に厳しい魔法特訓をする事になった。水魔法の特訓が主になるみたい。光魔法は午後から否応無く治療と称した実地訓練が行われるからだ。

カルサル師団長はスパルタだわ。14歳の私にいきなり上級魔法をマスターしろって無茶過ぎる。一応各属性魔法の知識はあるのよ？前世で学院を卒業はしているし。

ちなみに兄や父は風と水魔法。母は水魔法のみ使えるわ。ぐったりしながら私は午前中の魔法特訓を終える。カルサル師団長はすぐにでも一人前にするつもりだわ。いや、もしかしたら昨日の書類の山の恨みかも！？無駄な事を考えつつ私は王宮で働く人達のための食堂でご飯を食べてから第一騎士団の治療室へ向かった。


　医務室ではモーラ医務官、アラン殿下と一人の騎士服を着た男の人が座っており、私が来るのを待っていたようだった。

「リア君、待っていたよ。昨日話をしたと思うが、彼が元騎士団団長サイモンだ。是非、彼を治して欲しい」

私は頷くとサイモン様をベッドへ寝かせて魔力を通して怪我の具合を調べる。

　サイモン様は身体中古傷だらけと言っても過言では無いほどの怪我をしていた。これだけの傷を負うと治っているとはいえ、疼痛は全身に及ぶのではないかと思う。そして彼の右大腿部からの欠損。かなりの魔力が必要になりそう。

「サイモン様、治療を始めます。痛みが有ればいつでも言って下さい」

サイモンはベッドに仰向けになり、覚悟するように頷き目を瞑る。私はヒールを唱えサイモン様の身体に魔力を送り込む。送り込まれた魔力はサイモンの体を淡く光らせていたが、ゆっくりと光が欠損した箇所へ移動し、強い光となった。

じわじわと膨らみ始める衣服にモーラ医務官もアラン殿下も目を皿にして見ている。時間としては30分程だろうか流石に大きな欠損を治すのは時間も魔力もかかったが、なんとか治癒出来たみたい。

「サイモン様、目を開けて下さい。治療は終わりました。気分はどうですか？」

目を開けたサイモンは自分の足を見て驚愕し、大声を上げた。

「俺の足が、足がある！モーラ！嘘じゃないよな！？」

「サイモン、立ってみれば良かろう？」

モーラ医務官に言われてサイモン様はベッドから恐る恐る足を出して立ち上がる。ペタペタ、トントン、ドンドンと歩いたり、飛んだりしながら感触を確かめている。

「リア様、有難う御座います。身体の古傷も治してくれたのですね。身体に羽根が生えたように軽くて今から怠け者の騎士達を鍛え直してやりたくなりました！！」

「羽根は生えていませんが、足は生えました。2、3日は様子を見るために安静にして下さい。それに私は新人魔導師ですから様付けはおかしいです。仕事を全うしただけですから」

はははっと涙を流しながらサイモン様は笑った。アラン殿下もモーラ医務官も目を細めていた。

「あぁ！俺とした事が！大変だ、靴が無いぞ！」

アラン殿下も靴の事まで気を配っていなかったようで3人で笑い合う。この瞬間、光魔法の使い手で良かったといつも思う。アラン殿下とサイモン様が医務室を出る時、数日の安静と仕事復帰前に体調を確認するために医務室へ来るように伝えていた。

　2人が退室した後にモーラ医務官は私に話し掛ける。

「リア君、サイモンの治療にかなりの魔力を使ったね？彼の治療が一度で終わったから驚いた。今日はもう魔力も半分切っただろうからワシの薬作成を手伝っておくれ」

やはりモーラ医務官にはバレていたみたい。サイモン様の古傷は相当の物だった。新しい傷の治療より古傷の治療は魔力も倍ほどかかるためあまり治療はしないのが普通。古傷も治せてしまえる程の魔力量の多い貴族に生まれ変わった事は感謝しかない。

　私はモーラ医務官の傷薬や服薬の調合を手伝い、微量の光魔法を混ぜてモーラ薬の底上げ品を作る。

「お疲れ様。今日はもう帰って良いぞ」

モーラ医務官は時間より少し早めに帰って良いと言ってくれた。私の魔力をきっちり把握してくれているようで光魔法の使い手はもっと優遇されても良い位だと言ってくれる。優しい人でよかった。

　そうして私は勤務初日から頑張ったと思う。邸に帰ってからちょっと休憩ーとバタリとベッドにダイブしたまま朝を迎えてメイジーに怒られてしまった。