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21.怖くて強くて、たまにかっこいいお兄様
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結論から言って、私は神官から、正式に聖女と認定されてしまった。
私にまとわりつく黄金の光に、強力な神力が認められたのだ。
しかもこの光、なかなか消えない。家に戻った今現在も、ほのかに全身が発光している。
破滅の偽聖女設定、強い。
しかし、私は何度も何度も、それはもうしつこく何度もくり返し、「聖女なんて間違いです」「絶対に違います」と言い張った。
聖女顕現の一報は王都にも届けられる(しかもお兄様の手によって)ことになったが、その文書にも、必ず「聖女本人は否定している」の一文を入れるよう、私はお兄様に迫った。
「いいですか、必ず! 私が聖女だとか気の狂ったこと言ってるのは、神官とお兄様だけであって、私は否定していて無関係だ、とそう書いといてくださいね!」
「ああ、ああ、わかったわかった」
ラス兄様がうるさげに手を振る。
なんか、ハエでも追い払うような扱いなんですけど。
お兄様、ほんとに私のこと聖女だって思ってます? いや、聖女ではないんだけども。
台所のストーブ前に設置された転移陣に入り、お兄様が言った。
「では、わたしは一度、王都に戻るが。……直に、おまえには王都の中央神殿から招請状が届くだろう」
「えっ」
な、なんで中央神殿から!?
「聖女として正式に認められるためには、王都の中央神殿によるお墨付きが必須だからな。神官長がもう一度、おまえを鑑定することになる」
「お墨付きとか、いらないんですけど」
「そういう訳にはいかぬ」
ラス兄様は渋い顔で私を見て、ため息をついた。
「……おまえが、聖女としての名誉など望んでいないことはわかっている」
えっ!? ほんと!?
私は驚いてラス兄様を見た。
ラス兄様は、苦笑して言った。
「聖女として振る舞うなど、おまえには荷が重いだろうこともな。……おまえは、フォール地方での生活を心から楽しんでいる。今さら王都になど、戻りたくはないだろう」
その通りです!
えっ、なになにどうしちゃったんですか、お兄様! なんか私のこと、ちゃんとわかってくれてるじゃないですか!
喜ぶ私に、ラス兄様は冷たく言った。
「だが、こうなってしまっては、もはやフォールに置いてはおけぬ。……何より、わたし自身が神の祝福を目の当たりにしたのだ。このまま看過できる事態ではない」
「そんなぁ……」
やっぱりラス兄様はラス兄様だった。
鬼。悪魔。死神。ラスカル。
口に出してはもちろん言えない文句の数々を、心の中で延々つぶやいていると、
「―――マリア」
お兄様が手を伸ばし、私の髪をすっと撫でた。
そのまま、私の髪をひと房、指にからめると、お兄様はそっと私の髪に口づけた。
「……えっ」
「おまえが何を恐れているのかは知らぬが。……約束しよう、必ずわたしがおまえを守ると。おまえの髪ひと筋とて、損なうような目には決して遭わせぬ」
え、え……。
なになに突然どーしちゃったんですかお兄様。
そんな、そんな言葉。
まるで騎士の誓言みたいじゃないですか。
戸惑う私をよそに、お兄様は言うだけ言うと、さっさと転移陣を起動させて王都に戻ってしまった。
置いていかれた私は、しばらくぼんやりと台所に立ち尽くしていた。
なんかなんか、お兄様がかっこ良かった。
いや、見た目はいつもかっこいいんだけど。
それにお兄様、まるで騎士みたいだった。いや騎士なんだけど!
私はなぜか赤くなった顔をおさえて、その場でじたばたした。
もー、顔のいい人がかっこいいこと言ったりすると、必要以上にかっこよく見えて困る。
うっかりお兄様にときめいちゃったじゃないか。
私にまとわりつく黄金の光に、強力な神力が認められたのだ。
しかもこの光、なかなか消えない。家に戻った今現在も、ほのかに全身が発光している。
破滅の偽聖女設定、強い。
しかし、私は何度も何度も、それはもうしつこく何度もくり返し、「聖女なんて間違いです」「絶対に違います」と言い張った。
聖女顕現の一報は王都にも届けられる(しかもお兄様の手によって)ことになったが、その文書にも、必ず「聖女本人は否定している」の一文を入れるよう、私はお兄様に迫った。
「いいですか、必ず! 私が聖女だとか気の狂ったこと言ってるのは、神官とお兄様だけであって、私は否定していて無関係だ、とそう書いといてくださいね!」
「ああ、ああ、わかったわかった」
ラス兄様がうるさげに手を振る。
なんか、ハエでも追い払うような扱いなんですけど。
お兄様、ほんとに私のこと聖女だって思ってます? いや、聖女ではないんだけども。
台所のストーブ前に設置された転移陣に入り、お兄様が言った。
「では、わたしは一度、王都に戻るが。……直に、おまえには王都の中央神殿から招請状が届くだろう」
「えっ」
な、なんで中央神殿から!?
「聖女として正式に認められるためには、王都の中央神殿によるお墨付きが必須だからな。神官長がもう一度、おまえを鑑定することになる」
「お墨付きとか、いらないんですけど」
「そういう訳にはいかぬ」
ラス兄様は渋い顔で私を見て、ため息をついた。
「……おまえが、聖女としての名誉など望んでいないことはわかっている」
えっ!? ほんと!?
私は驚いてラス兄様を見た。
ラス兄様は、苦笑して言った。
「聖女として振る舞うなど、おまえには荷が重いだろうこともな。……おまえは、フォール地方での生活を心から楽しんでいる。今さら王都になど、戻りたくはないだろう」
その通りです!
えっ、なになにどうしちゃったんですか、お兄様! なんか私のこと、ちゃんとわかってくれてるじゃないですか!
喜ぶ私に、ラス兄様は冷たく言った。
「だが、こうなってしまっては、もはやフォールに置いてはおけぬ。……何より、わたし自身が神の祝福を目の当たりにしたのだ。このまま看過できる事態ではない」
「そんなぁ……」
やっぱりラス兄様はラス兄様だった。
鬼。悪魔。死神。ラスカル。
口に出してはもちろん言えない文句の数々を、心の中で延々つぶやいていると、
「―――マリア」
お兄様が手を伸ばし、私の髪をすっと撫でた。
そのまま、私の髪をひと房、指にからめると、お兄様はそっと私の髪に口づけた。
「……えっ」
「おまえが何を恐れているのかは知らぬが。……約束しよう、必ずわたしがおまえを守ると。おまえの髪ひと筋とて、損なうような目には決して遭わせぬ」
え、え……。
なになに突然どーしちゃったんですかお兄様。
そんな、そんな言葉。
まるで騎士の誓言みたいじゃないですか。
戸惑う私をよそに、お兄様は言うだけ言うと、さっさと転移陣を起動させて王都に戻ってしまった。
置いていかれた私は、しばらくぼんやりと台所に立ち尽くしていた。
なんかなんか、お兄様がかっこ良かった。
いや、見た目はいつもかっこいいんだけど。
それにお兄様、まるで騎士みたいだった。いや騎士なんだけど!
私はなぜか赤くなった顔をおさえて、その場でじたばたした。
もー、顔のいい人がかっこいいこと言ったりすると、必要以上にかっこよく見えて困る。
うっかりお兄様にときめいちゃったじゃないか。
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