38 / 44
おまけ
初恋は実らせる! 中
しおりを挟む
「ディアハラが? ふぅん……まぁ、いいんじゃない?」
だが、しかし。夕食後に恐る恐る、その話を持ち出したライムートに対して、絵里は実にあっさりとそう告げた。
「……は?」
考える様子を見せたのはほんのわずかの時間で、その後に続いた言葉もまるで何でもないことのよう――おかげでライムートは自分の耳を疑う羽目になった。
「ちょっと待ってくれ、リィ。今、いい、といったか?」
「言ったけど、どうしたの? そんな驚いた顔をして」
「いや、普通は驚くだろうっ? 本当にいいのか? ディアハラだぞ?」
慌てふためく夫の様子に、ああ、と小さく笑った後。
「いつの話をしてるのよ? ライが私の事を心配してくれるのはうれしいけど、もう、ずっと昔の話じゃない。それにディアハラには受け入れるって返事しちゃってるんでしょ? それを今更、私が騒いでもねぇ……?」
それとも、絶対に嫌だって反対してほしかったの? と。
苦笑しながら問われれば、ライムートもそれで納得するしかない。
「それじゃ、受け入れることに異論はないんだな?」
それでも念を押す辺りが、妻命の彼らしい。
「ないってば。それより、さすがに王子さまともなると、他の子達と一緒に寮に放り込むわけにもいかないわよね」
『学園』ではよほどの事情がない限り、生徒は全員、寮生活を送ることになっている。いらぬ摩擦を避けるため貴族と平民とで別れてはいるが、基本的に自分の事は自分でするというのが方針である。さすがに貴族の女生徒にはメイドが付くが――そうでなければ着替えすらできない者が出てくるためだ――その人数も二人までと定められている。
「俺はそのつもりでいたんだが……」
「ダメダメ。いくら継承順位が低くても、本人がそれでいいって言っても、まがりなりにも王族よ? 学園内では身分は問わないことになってるけど、その王子に何かあったら、国がしゃしゃり出てくるかもしれないじゃない。付け入る隙は見せないに限るわ」
かつては普通の女子大生だった絵里も、今では立派な王妃だ。正論や性善説だけでは国のトップには立てない事をよくわかっている。
「寮には入れられないわ。それに、最低限の護衛もこっちで用意して……」
「しかし、そうするとどこに住まわせる? 王都には一応、ディアハラの大使館はあったと思うが、どこぞの商家に間借りしていた気がするぞ?」
この大使館という制度も、絵里の助言を受けてライムートが作り上げたものだ。元々は留学生に関する問題が持ち上がった時、いちいち本国に問い合わせていたのでは時間がかかりすぎるという理由からだ。重要なものであればそれも仕方ないが、大使館ができて以来、留学生関連以外でも単純な確認や許可程度であればそこで済ませられるようになったので、他国もこの制度を取り入れるところが増えていた。
「さすがにそれはまずいでしょ。考えたんだけど、どうせうちの王城って部屋は余りまくってるじゃない。内宮と外宮の中間あたりの場所で引き受けたらいいんじゃないかしら?」
「そんなことをしたら、他の国も王族を送り込んでこないか?」
留学した者が王族ならばシルヴァージュの王城に住まわせてもらえる――というのは、一見、大変な厚遇に思える。一度前例を作ってしまえば、我も我もと他国も真似をしてくるかもしれない。
「来たっていいけど、うちの印象は悪いわよ。普通なら寮に放り込めばすむところを、わざわざそんな手間をかけて受け入れるんだもの」
「……なるほど」
ディアハラに関してはシルヴァージュの印象は最低なので、これ以上下がりようがないが、自分は友好的な関係を築けていると思ってる国であれば、それは避けたいはずだ。
「それにね。私としては、その王子にもちょっと同情してるのよ」
「リィ?」
絵里自身は気にしていないようだが、ライムートとしてはやはりディアハラに対して好印象を抱いていない。なので、そこからくる王子にも「面倒ごとを持ってきた」という程度の思いしかなかったのだが――。
「どう考えても、因果を含められて仕方なく来る、って感じじゃない? これが第一王子様のところの次男とかなら、うちとのつながりを武器に一発逆転の野望を持ってる、なんてことも考えられるけど、第二王子の子でしかも側室がお母様じゃ、どう足掻いても玉座には届かないでしょう。なのに……となれば、ねぇ?」
「それで、王城で受け入れる気になった、というわけか」
「ええ。それと、その王子様の案内というか、うち(シルヴァージュ)についてのいろいろ助言をする担当者が必要になると思うのだけど――サナはどうかって考えてるの」
「サナを?」
「あの子って、今のところ何も役目がない状態でしょ? まだまだお嫁に行く気配もないんだし、うるさい連中を黙らせるためにも、そういった『仕事』を一つくらい持たせておいた方がいいと思うの」
シルヴァージュに限らずどこの国も同じなのだが、基本的に女性は夫に尽くすのが何よりの役目とされ、表にはでない。例外は王太子妃や王妃くらいだ。先に嫁いだアイナやカンナ、サナも慈善行為などは行っていたが、これは王族としての基本的な義務であり、ことさら『仕事』というものではなかった。
それをあえて行わせるというのは、男尊女卑、男性至上主義の風潮に一石を投じる事にもなるはずだ――男女平等の世界から来た絵里にとって、女性の人権をもっと主張できる世にしたい、というのは念願だ。自分が生きているうちに完全に達成できなくても、その芽だけでも残せたら……と思ってのこともある。
「それに、最初の仕事がディアハラの王子のお世話なら、それほど騒がれないと思うのよね」
「まぁ、確かにな。うちの国でのディアハラの評判は高くない。そこに関するものなら、目くじらをたてられることも少ないかもしれん……」
高くないどころか、地に落ちる寸前なのだが、そこは言わぬが花というものだ。
「俺は面倒だとしか思わなかったが、リィはそこまで考えたんだな」
一石二鳥どころか三鳥、四鳥を狙うあたり、絵里も中々に強かになっていた。
「サナに聞いてみてからの話になるけどね。でも、あの子も断らないと思うわよ」
「その辺りの事はリィに任せる」
サナをかわいがっている分、こういった事には腰が引け気味になる夫に苦笑しつつ、娘にどう説明するかを考える絵里だった。
果たして――。
「わかりました。そのお役目、引き受けさせていただきます」
「ありがとう、サナ。そう言ってくれてうれしいわ」
絵里の願いにうなづいてくれたサナは、綺麗になっていた。
サナは兄弟姉妹の中では最も絵里に似ており、黒髪に茶色の瞳で、象牙のような色合いの肌の持ち主だ。無論、ライムートの子であるのだから、美貌は絵里の五割り増し――ライムートはもっと絵里よりの顔立ちを望んでいたらしいが、絵里としてはそこはライムートの遺伝子が頑張ってくれたことに感謝していた。
そんな風で、元々の顔立ちはいいのだが、すでに嫁いだ姉たちとやや年が離れていたために、ライムートに似て派手な色彩をもつ彼女らの陰に隠れてしまっていたのは否めない。当時は本人もまだ幼く、人前に出る機会が少なかったこともあるだろう。だが、そんなサナも年頃を迎えた今、蕾が開くようにその美しさを開花させていた。
――なのに、本人にはあんまりその自覚がないのが困るのよね。
本人は全く気が付いていない様子だが、実はサナに懸想している貴族の子弟は多い。
求婚者が引きも切らず、中には国王夫妻に直談判してくる家もある。ライムートも絵里もすべてを門前払いするわけにもいかず、問題がなさそうな場合に限りサナにも話を通すのだが――。
「嫌です、お断りしてください」
本人がきっぱりと拒むので、その先に進むことはなかった。
あまりにもかたくなな態度を不思議に思い、絵里が訪ねてみたこともあった。
「だって、そのお話って、昔から私の事を無視していた方ばかりですわ。なのに今更……どうせ私の身分目当てに決まってます」
サナにも異性の友人というか、幼い頃の遊び相手はいたが、それらは皆、彼女にその気がないと早々に悟って別の相手を見つけている。なので現在の求婚者たちはそれ以外ということになるのだが、そのほとんどが姉たちの放つ光の陰でひっそりとたたずんでいたサナには目もくれなかった者たちだった。
本人があまり気にしていない様子だったため、絵里もそれほど深刻には考えていなかったが、実はそうでもなかったらしい。
「そんなことはないわ。サナは本当にきれいになったもの。あの方たちも、昔は気が付けなかったあなたの魅力を、今になって見せつけられて目が覚めたのだとは考えられない?」
「だったらなおさら嫌です。私自身は昔も今も変わっていないのに、見た目がちょっと変わったくらいで手のひらを反すような態度をみせる殿方は信用できません」
絵里のフォローもサナには通じない。また、彼女の言っていることに納得できてしまうため、無理強いすることもできない。
もしかすると、サナは結婚という制度自体に興味がないのかもしれない。
彼女が男子であったのなら、独身でも爵位を与えて独立させることもできるが、女性ではそうもいかない。ならば猶更、この王城に彼女の居場所を作ってやる必要がある。
そのため、彼女が快くディアハラの王子の世話役を受け入れてくれたのは、絵里にとってもうれしいことだった。
「それでね、サナ。ディアハラの王子殿下はサリオン様とおっしゃるの。お年は、確か今年で十五になられたそうよ」
詳しいことは後ほどまとめた文書を渡す予定だが、絵里からも簡単に説明すると、サナの目が輝いた。
「私よりも年下でいらっしゃるのですね」
「ええ。そんな殿下が、はるばる遠いシルヴァージュにやってこられるのだから、貴女も親切にしてあげてね」
「はい、お母様。ふふ……お会いするのが楽しみですわ」
シルヴァージュとディアハラの過去の事件はサナも知ってはいるが、何しろ自分が生まれる前の出来事だ。ライムートや絵里ほどのこだわりはもっていない様子に、ほっと胸をなでおろす。
末っ子の彼女が、自分よりも年下の王子に興味を持ったようなのも喜ばしい。
サリオンという名の王子の人となりはまだわからないが、こちらもサナと仲良くなってくれれば、身内以外の男性を近寄らせたがらないサナにもいい影響を与えてくれるかもしれない。
そんな胸算用をしながら、娘の部屋を後にする絵里だった。
サリオン王子がシルヴァージュにやってきたのは、そんな出来事があってからひと月も経たない頃だった。
仮にも王子の留学にしては手際が良すぎるが、ディアハラ側ではシルヴァージュの返事を聞く前から準備をしていた様子だ。何より、彼が来たのは秋の始まり――シルヴァージュの学園の新学期が始まる時期で、何が何でもそれに間に合わせたいという事情もあったと思われる。
「シルヴァージュの国王陛下、王妃殿下には初めて御目文字致します。ディアハラ国第二王子が三男、サリオンと申します。此度は貴国への留学の願い、快くお聞き入れいただき、感謝の仕様もございません」
サリオンはまだ十五歳ということで、どこか線の細い印象の少年だが、さすがに王族。ライムート達への挨拶も立派なものだ。
「よくぞ来られた、サリオン殿。はるばる遠いディアハラを離れ、このシルヴァージュにて勉学を収めたいという貴殿の心意気を天晴に思う。何分異国の事にて、戸惑うことも多かろうが、それを乗り越え、励んでくれることを願うぞ」
「ありがたき仰せにございます」
共に来た側近たちは、これが国王への謁見である為に別室で待機しているので、ここには彼一人だ。
やや顔色が悪いのは、緊張しているせいもあるだろうが、居並ぶシルヴァージュの貴族たちのどこか冷たい目線――『ディアハラの王族が良くもぬけぬけと』とでも言いたげなソレは、十五といえども敏感に感じ取っているはずだ。
ライムートもそのことに気づいたのか、改めて口を開く。
「ディアハラとはかつては不幸な行き違いもあったが、今となっては全て過去の事。サリオン殿が勉学を収めるのと同時に、両国の新たな関係を作る礎となってくれることを期待する」
「もったいないお言葉、わが身に刻む所存にございます」
ライムートが改めて『両国の確執は過去の物』と宣言したことで、貴族たちは表立ってサリオンを非難することはできなくなった。が、その反動で影で嫌がらせなどが起きるかもしれない。
そして、そのことにも当然ながら、対策済みだ。
「――とはいえ、サリオン殿も不慣れな異国での生活に、どうしても不安が付きまとうであろう。友好国の王子にそのような心細い思いをさせるのは、シルヴァージュの国王として看過できん。故に、シルヴァージュの事情に明るい者をサリオン殿の世話役としてお付けしようと思う――サナ第三王女。こちらへ」
「はい、陛下」
ライムートに呼ばれて、王座のある階に待機していたサナが進み出る。公の場であるので、『お父様』ではなく『陛下』と呼ぶのは当然のことだ。
「サリオン殿。これはシルヴァージュ王国の第三王女サナだ――サナ、こちらがディアハラ王国のサリオン殿下でいらっしゃる」
「はじめてお目にかかります、殿下。サナ・エ・ル・シルヴァージュにございます」
見事なカーテシーと共に、澄んだ声でサナが自己紹介をする。
その途端、サリオンの頬に薄く血の色が昇ったのだが、その事に気が付いたものはほとんどいなかった。
「ディアハラの一行が留学中に滞在される場所は、内宮とも近い。サナはサリオン殿よりも三つほど年上だし、本当の姉と思えなどと図々しいことは言わんが、困ったこと、戸惑った事があれば何でも相談するといい」
王城内に招き入れ、第三王女を後見につける。つまり、サリオンに何かしらの嫌がらせをしたら、即座にそれが国王に届く、ということである。ここまでやっておけば、行動に出るほどの度胸(というか無謀)な貴族はいないはずだ。
「……重ね重ねの御厚情、何とお礼を申し上げればよいのか……」
サリオン本人も、ここまでの厚遇は想像していなかったようだ。感激に目を潤ませている辺り、まだまだ若い――幼いといっていいだろう。
そんなサリオンを心配してか、サナが彼の元へと近づく。
「父であられる陛下もあのように仰せですし、わたくしも末っ子で弟が欲しかったのです。ですから、殿下も何でも気軽にお話しいただければ嬉しいですわ」
「ありがとうございます、サナ王女殿下――弟と思っていただけるのでしたら、是非とも私の事はサリオンとお呼びください」
「まぁっ。では、わたくしの事もサナ、と」
「ありがたくお言葉に甘えます――サナ様」
「はい、サリオン様」
にっこりと笑いあう二人――これが初の顔合わせだが、その仲も良好のようだ。
まだ十五歳のサリオンはあまり背も高くなく、サナと同じくらい、或いはやや低いかもしれない。
ディアハラの王族は明るい色彩をまとうものが多いが、サリオンは側妃の血が濃く出ているのか、珍しく暗い色の髪と目をしている。黒髪に茶の目のサナと並べば、それこそ遠目には実の姉弟に見えるかもしれない。
ライムートも、その隣に座る絵里も、そんな二人の様子を微笑ましげに見ていた。
「サナはサリオン様の事をどう思った?」
謁見も終わり、王族が揃って退出した先で絵里が娘に問いかける。
「はい。礼儀正しく、かわいらしい方だと思いました」
「ディアハラの者にしては素直だし、かなり賢そうだな」
「ライったら。自分で『昔のことは水に流す』って言ったんでしょ」
「すまん。だが、確かにあの王子は掘り出し物だ。色々とうちで学んでくれることを期待したいところだな」
若干の偏見が入っている可能性もあるが、ディアハラという国は大陸の西の端に押し込められ、常に欲求不満をいだいているという印象が強い。豊富な水産資源により国はそこそこ潤っているのだが、やはり『土地』というものは魅力的らしく、領土を広げたいという念願を抱いている――とはいえ、そうするには東に進むしかないのだが、隣国が常に目を光らせているのは当たり前の話だ。そもそも、領土のための戦争など、平和を望むフォスの御心に逆らう行為だとして、すべての国から総スカンを食らうだろう。そのために余計に不満がたまり、その反動の様にプライドばかりを増大させている。そんなところに付け込まれて、先の騒動を引き起こした――というのが、他国からの評価だ。
そんなディアハラから来たサリオンだが、ライムート自身もどうやら気に入ったらしい。
「サリオン様はとても良い方だと思うのです」
「珍しいわね。初対面でサナがそんなに気にいるなんて」
「まぁ、お母様ったら。わたくしにだって、人を見る目は備わっていますわ。まだお会いしたばかりですけれど、本当の弟のように思えて……あちらもそう思ってくださっているようですし、これからが楽しみです」
ここでポイントになるのは『弟のような』という部分だ。
考えてみれば、サナに群がる男性はどれも年上ばかり――ギリギリ同い年といったところだ。
そんな彼らとは異なり、まだあまり『男』を感じさせないサリオンだからこそ、受け入れやすかったのだろうというのが、絵里の母親としての直感だった。
「サリオン殿の留学期間は三年となっている。その間、良く面倒を見て差し上げるんだぞ」
「はい、お父様」
ライムートとしても、サナがサリオンを受け入れてくれたのは、いろいろな意味で喜ばしい。
そして、できればこれをきっかけに他の男にも目を向けるようになってくれれば……と。
両親共に、娘に対してそんな期待を抱いたのも、無理からぬことだろう。
だが、しかし。夕食後に恐る恐る、その話を持ち出したライムートに対して、絵里は実にあっさりとそう告げた。
「……は?」
考える様子を見せたのはほんのわずかの時間で、その後に続いた言葉もまるで何でもないことのよう――おかげでライムートは自分の耳を疑う羽目になった。
「ちょっと待ってくれ、リィ。今、いい、といったか?」
「言ったけど、どうしたの? そんな驚いた顔をして」
「いや、普通は驚くだろうっ? 本当にいいのか? ディアハラだぞ?」
慌てふためく夫の様子に、ああ、と小さく笑った後。
「いつの話をしてるのよ? ライが私の事を心配してくれるのはうれしいけど、もう、ずっと昔の話じゃない。それにディアハラには受け入れるって返事しちゃってるんでしょ? それを今更、私が騒いでもねぇ……?」
それとも、絶対に嫌だって反対してほしかったの? と。
苦笑しながら問われれば、ライムートもそれで納得するしかない。
「それじゃ、受け入れることに異論はないんだな?」
それでも念を押す辺りが、妻命の彼らしい。
「ないってば。それより、さすがに王子さまともなると、他の子達と一緒に寮に放り込むわけにもいかないわよね」
『学園』ではよほどの事情がない限り、生徒は全員、寮生活を送ることになっている。いらぬ摩擦を避けるため貴族と平民とで別れてはいるが、基本的に自分の事は自分でするというのが方針である。さすがに貴族の女生徒にはメイドが付くが――そうでなければ着替えすらできない者が出てくるためだ――その人数も二人までと定められている。
「俺はそのつもりでいたんだが……」
「ダメダメ。いくら継承順位が低くても、本人がそれでいいって言っても、まがりなりにも王族よ? 学園内では身分は問わないことになってるけど、その王子に何かあったら、国がしゃしゃり出てくるかもしれないじゃない。付け入る隙は見せないに限るわ」
かつては普通の女子大生だった絵里も、今では立派な王妃だ。正論や性善説だけでは国のトップには立てない事をよくわかっている。
「寮には入れられないわ。それに、最低限の護衛もこっちで用意して……」
「しかし、そうするとどこに住まわせる? 王都には一応、ディアハラの大使館はあったと思うが、どこぞの商家に間借りしていた気がするぞ?」
この大使館という制度も、絵里の助言を受けてライムートが作り上げたものだ。元々は留学生に関する問題が持ち上がった時、いちいち本国に問い合わせていたのでは時間がかかりすぎるという理由からだ。重要なものであればそれも仕方ないが、大使館ができて以来、留学生関連以外でも単純な確認や許可程度であればそこで済ませられるようになったので、他国もこの制度を取り入れるところが増えていた。
「さすがにそれはまずいでしょ。考えたんだけど、どうせうちの王城って部屋は余りまくってるじゃない。内宮と外宮の中間あたりの場所で引き受けたらいいんじゃないかしら?」
「そんなことをしたら、他の国も王族を送り込んでこないか?」
留学した者が王族ならばシルヴァージュの王城に住まわせてもらえる――というのは、一見、大変な厚遇に思える。一度前例を作ってしまえば、我も我もと他国も真似をしてくるかもしれない。
「来たっていいけど、うちの印象は悪いわよ。普通なら寮に放り込めばすむところを、わざわざそんな手間をかけて受け入れるんだもの」
「……なるほど」
ディアハラに関してはシルヴァージュの印象は最低なので、これ以上下がりようがないが、自分は友好的な関係を築けていると思ってる国であれば、それは避けたいはずだ。
「それにね。私としては、その王子にもちょっと同情してるのよ」
「リィ?」
絵里自身は気にしていないようだが、ライムートとしてはやはりディアハラに対して好印象を抱いていない。なので、そこからくる王子にも「面倒ごとを持ってきた」という程度の思いしかなかったのだが――。
「どう考えても、因果を含められて仕方なく来る、って感じじゃない? これが第一王子様のところの次男とかなら、うちとのつながりを武器に一発逆転の野望を持ってる、なんてことも考えられるけど、第二王子の子でしかも側室がお母様じゃ、どう足掻いても玉座には届かないでしょう。なのに……となれば、ねぇ?」
「それで、王城で受け入れる気になった、というわけか」
「ええ。それと、その王子様の案内というか、うち(シルヴァージュ)についてのいろいろ助言をする担当者が必要になると思うのだけど――サナはどうかって考えてるの」
「サナを?」
「あの子って、今のところ何も役目がない状態でしょ? まだまだお嫁に行く気配もないんだし、うるさい連中を黙らせるためにも、そういった『仕事』を一つくらい持たせておいた方がいいと思うの」
シルヴァージュに限らずどこの国も同じなのだが、基本的に女性は夫に尽くすのが何よりの役目とされ、表にはでない。例外は王太子妃や王妃くらいだ。先に嫁いだアイナやカンナ、サナも慈善行為などは行っていたが、これは王族としての基本的な義務であり、ことさら『仕事』というものではなかった。
それをあえて行わせるというのは、男尊女卑、男性至上主義の風潮に一石を投じる事にもなるはずだ――男女平等の世界から来た絵里にとって、女性の人権をもっと主張できる世にしたい、というのは念願だ。自分が生きているうちに完全に達成できなくても、その芽だけでも残せたら……と思ってのこともある。
「それに、最初の仕事がディアハラの王子のお世話なら、それほど騒がれないと思うのよね」
「まぁ、確かにな。うちの国でのディアハラの評判は高くない。そこに関するものなら、目くじらをたてられることも少ないかもしれん……」
高くないどころか、地に落ちる寸前なのだが、そこは言わぬが花というものだ。
「俺は面倒だとしか思わなかったが、リィはそこまで考えたんだな」
一石二鳥どころか三鳥、四鳥を狙うあたり、絵里も中々に強かになっていた。
「サナに聞いてみてからの話になるけどね。でも、あの子も断らないと思うわよ」
「その辺りの事はリィに任せる」
サナをかわいがっている分、こういった事には腰が引け気味になる夫に苦笑しつつ、娘にどう説明するかを考える絵里だった。
果たして――。
「わかりました。そのお役目、引き受けさせていただきます」
「ありがとう、サナ。そう言ってくれてうれしいわ」
絵里の願いにうなづいてくれたサナは、綺麗になっていた。
サナは兄弟姉妹の中では最も絵里に似ており、黒髪に茶色の瞳で、象牙のような色合いの肌の持ち主だ。無論、ライムートの子であるのだから、美貌は絵里の五割り増し――ライムートはもっと絵里よりの顔立ちを望んでいたらしいが、絵里としてはそこはライムートの遺伝子が頑張ってくれたことに感謝していた。
そんな風で、元々の顔立ちはいいのだが、すでに嫁いだ姉たちとやや年が離れていたために、ライムートに似て派手な色彩をもつ彼女らの陰に隠れてしまっていたのは否めない。当時は本人もまだ幼く、人前に出る機会が少なかったこともあるだろう。だが、そんなサナも年頃を迎えた今、蕾が開くようにその美しさを開花させていた。
――なのに、本人にはあんまりその自覚がないのが困るのよね。
本人は全く気が付いていない様子だが、実はサナに懸想している貴族の子弟は多い。
求婚者が引きも切らず、中には国王夫妻に直談判してくる家もある。ライムートも絵里もすべてを門前払いするわけにもいかず、問題がなさそうな場合に限りサナにも話を通すのだが――。
「嫌です、お断りしてください」
本人がきっぱりと拒むので、その先に進むことはなかった。
あまりにもかたくなな態度を不思議に思い、絵里が訪ねてみたこともあった。
「だって、そのお話って、昔から私の事を無視していた方ばかりですわ。なのに今更……どうせ私の身分目当てに決まってます」
サナにも異性の友人というか、幼い頃の遊び相手はいたが、それらは皆、彼女にその気がないと早々に悟って別の相手を見つけている。なので現在の求婚者たちはそれ以外ということになるのだが、そのほとんどが姉たちの放つ光の陰でひっそりとたたずんでいたサナには目もくれなかった者たちだった。
本人があまり気にしていない様子だったため、絵里もそれほど深刻には考えていなかったが、実はそうでもなかったらしい。
「そんなことはないわ。サナは本当にきれいになったもの。あの方たちも、昔は気が付けなかったあなたの魅力を、今になって見せつけられて目が覚めたのだとは考えられない?」
「だったらなおさら嫌です。私自身は昔も今も変わっていないのに、見た目がちょっと変わったくらいで手のひらを反すような態度をみせる殿方は信用できません」
絵里のフォローもサナには通じない。また、彼女の言っていることに納得できてしまうため、無理強いすることもできない。
もしかすると、サナは結婚という制度自体に興味がないのかもしれない。
彼女が男子であったのなら、独身でも爵位を与えて独立させることもできるが、女性ではそうもいかない。ならば猶更、この王城に彼女の居場所を作ってやる必要がある。
そのため、彼女が快くディアハラの王子の世話役を受け入れてくれたのは、絵里にとってもうれしいことだった。
「それでね、サナ。ディアハラの王子殿下はサリオン様とおっしゃるの。お年は、確か今年で十五になられたそうよ」
詳しいことは後ほどまとめた文書を渡す予定だが、絵里からも簡単に説明すると、サナの目が輝いた。
「私よりも年下でいらっしゃるのですね」
「ええ。そんな殿下が、はるばる遠いシルヴァージュにやってこられるのだから、貴女も親切にしてあげてね」
「はい、お母様。ふふ……お会いするのが楽しみですわ」
シルヴァージュとディアハラの過去の事件はサナも知ってはいるが、何しろ自分が生まれる前の出来事だ。ライムートや絵里ほどのこだわりはもっていない様子に、ほっと胸をなでおろす。
末っ子の彼女が、自分よりも年下の王子に興味を持ったようなのも喜ばしい。
サリオンという名の王子の人となりはまだわからないが、こちらもサナと仲良くなってくれれば、身内以外の男性を近寄らせたがらないサナにもいい影響を与えてくれるかもしれない。
そんな胸算用をしながら、娘の部屋を後にする絵里だった。
サリオン王子がシルヴァージュにやってきたのは、そんな出来事があってからひと月も経たない頃だった。
仮にも王子の留学にしては手際が良すぎるが、ディアハラ側ではシルヴァージュの返事を聞く前から準備をしていた様子だ。何より、彼が来たのは秋の始まり――シルヴァージュの学園の新学期が始まる時期で、何が何でもそれに間に合わせたいという事情もあったと思われる。
「シルヴァージュの国王陛下、王妃殿下には初めて御目文字致します。ディアハラ国第二王子が三男、サリオンと申します。此度は貴国への留学の願い、快くお聞き入れいただき、感謝の仕様もございません」
サリオンはまだ十五歳ということで、どこか線の細い印象の少年だが、さすがに王族。ライムート達への挨拶も立派なものだ。
「よくぞ来られた、サリオン殿。はるばる遠いディアハラを離れ、このシルヴァージュにて勉学を収めたいという貴殿の心意気を天晴に思う。何分異国の事にて、戸惑うことも多かろうが、それを乗り越え、励んでくれることを願うぞ」
「ありがたき仰せにございます」
共に来た側近たちは、これが国王への謁見である為に別室で待機しているので、ここには彼一人だ。
やや顔色が悪いのは、緊張しているせいもあるだろうが、居並ぶシルヴァージュの貴族たちのどこか冷たい目線――『ディアハラの王族が良くもぬけぬけと』とでも言いたげなソレは、十五といえども敏感に感じ取っているはずだ。
ライムートもそのことに気づいたのか、改めて口を開く。
「ディアハラとはかつては不幸な行き違いもあったが、今となっては全て過去の事。サリオン殿が勉学を収めるのと同時に、両国の新たな関係を作る礎となってくれることを期待する」
「もったいないお言葉、わが身に刻む所存にございます」
ライムートが改めて『両国の確執は過去の物』と宣言したことで、貴族たちは表立ってサリオンを非難することはできなくなった。が、その反動で影で嫌がらせなどが起きるかもしれない。
そして、そのことにも当然ながら、対策済みだ。
「――とはいえ、サリオン殿も不慣れな異国での生活に、どうしても不安が付きまとうであろう。友好国の王子にそのような心細い思いをさせるのは、シルヴァージュの国王として看過できん。故に、シルヴァージュの事情に明るい者をサリオン殿の世話役としてお付けしようと思う――サナ第三王女。こちらへ」
「はい、陛下」
ライムートに呼ばれて、王座のある階に待機していたサナが進み出る。公の場であるので、『お父様』ではなく『陛下』と呼ぶのは当然のことだ。
「サリオン殿。これはシルヴァージュ王国の第三王女サナだ――サナ、こちらがディアハラ王国のサリオン殿下でいらっしゃる」
「はじめてお目にかかります、殿下。サナ・エ・ル・シルヴァージュにございます」
見事なカーテシーと共に、澄んだ声でサナが自己紹介をする。
その途端、サリオンの頬に薄く血の色が昇ったのだが、その事に気が付いたものはほとんどいなかった。
「ディアハラの一行が留学中に滞在される場所は、内宮とも近い。サナはサリオン殿よりも三つほど年上だし、本当の姉と思えなどと図々しいことは言わんが、困ったこと、戸惑った事があれば何でも相談するといい」
王城内に招き入れ、第三王女を後見につける。つまり、サリオンに何かしらの嫌がらせをしたら、即座にそれが国王に届く、ということである。ここまでやっておけば、行動に出るほどの度胸(というか無謀)な貴族はいないはずだ。
「……重ね重ねの御厚情、何とお礼を申し上げればよいのか……」
サリオン本人も、ここまでの厚遇は想像していなかったようだ。感激に目を潤ませている辺り、まだまだ若い――幼いといっていいだろう。
そんなサリオンを心配してか、サナが彼の元へと近づく。
「父であられる陛下もあのように仰せですし、わたくしも末っ子で弟が欲しかったのです。ですから、殿下も何でも気軽にお話しいただければ嬉しいですわ」
「ありがとうございます、サナ王女殿下――弟と思っていただけるのでしたら、是非とも私の事はサリオンとお呼びください」
「まぁっ。では、わたくしの事もサナ、と」
「ありがたくお言葉に甘えます――サナ様」
「はい、サリオン様」
にっこりと笑いあう二人――これが初の顔合わせだが、その仲も良好のようだ。
まだ十五歳のサリオンはあまり背も高くなく、サナと同じくらい、或いはやや低いかもしれない。
ディアハラの王族は明るい色彩をまとうものが多いが、サリオンは側妃の血が濃く出ているのか、珍しく暗い色の髪と目をしている。黒髪に茶の目のサナと並べば、それこそ遠目には実の姉弟に見えるかもしれない。
ライムートも、その隣に座る絵里も、そんな二人の様子を微笑ましげに見ていた。
「サナはサリオン様の事をどう思った?」
謁見も終わり、王族が揃って退出した先で絵里が娘に問いかける。
「はい。礼儀正しく、かわいらしい方だと思いました」
「ディアハラの者にしては素直だし、かなり賢そうだな」
「ライったら。自分で『昔のことは水に流す』って言ったんでしょ」
「すまん。だが、確かにあの王子は掘り出し物だ。色々とうちで学んでくれることを期待したいところだな」
若干の偏見が入っている可能性もあるが、ディアハラという国は大陸の西の端に押し込められ、常に欲求不満をいだいているという印象が強い。豊富な水産資源により国はそこそこ潤っているのだが、やはり『土地』というものは魅力的らしく、領土を広げたいという念願を抱いている――とはいえ、そうするには東に進むしかないのだが、隣国が常に目を光らせているのは当たり前の話だ。そもそも、領土のための戦争など、平和を望むフォスの御心に逆らう行為だとして、すべての国から総スカンを食らうだろう。そのために余計に不満がたまり、その反動の様にプライドばかりを増大させている。そんなところに付け込まれて、先の騒動を引き起こした――というのが、他国からの評価だ。
そんなディアハラから来たサリオンだが、ライムート自身もどうやら気に入ったらしい。
「サリオン様はとても良い方だと思うのです」
「珍しいわね。初対面でサナがそんなに気にいるなんて」
「まぁ、お母様ったら。わたくしにだって、人を見る目は備わっていますわ。まだお会いしたばかりですけれど、本当の弟のように思えて……あちらもそう思ってくださっているようですし、これからが楽しみです」
ここでポイントになるのは『弟のような』という部分だ。
考えてみれば、サナに群がる男性はどれも年上ばかり――ギリギリ同い年といったところだ。
そんな彼らとは異なり、まだあまり『男』を感じさせないサリオンだからこそ、受け入れやすかったのだろうというのが、絵里の母親としての直感だった。
「サリオン殿の留学期間は三年となっている。その間、良く面倒を見て差し上げるんだぞ」
「はい、お父様」
ライムートとしても、サナがサリオンを受け入れてくれたのは、いろいろな意味で喜ばしい。
そして、できればこれをきっかけに他の男にも目を向けるようになってくれれば……と。
両親共に、娘に対してそんな期待を抱いたのも、無理からぬことだろう。
31
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。