オオカミさんといっしょ!

豆狸

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第一話 オオカミさんに助けられ

※15・いきなり求婚するのはやめとけよ。(狐のルナール視点②)

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 レオンが故郷に帰っちゃったら寂しくなるよなあ。
 ちょっと真面目に考えてみる。
 なんたってコイツは、黄金の鷹亭に初めて来たとき声かけたからって、底辺冒険者の俺の誘いをいつでも受けてくれる大切な仲間だもん。
 獣化族だから腕力も魔力も強いけど、俺、命がけで戦うのとか向いてないんだよね。
 危なくなったら逃げる主義のせいで、ほかの冒険者仲間には良く思われてない。
 ……んー、でも引き止めるのも面倒だから、ま、いいか。
 本人の意思を尊重、尊重!

「故郷に帰ってどうすんの?」
「親父が村長なんで……」

 家を継ぐのかね、なんて思ってたら、レオンはとんでもない言葉を口にする。

「罪を暴いて罰を受けさせる」
「……仲悪いの?」
「良くはないが……そもそも村の若者に自警団と称してモンスターを密猟させ、貴族と組んで密売した挙句、利益を少しも村に落とさない村長など百害あって一利なしだろう」
「証拠はあんの?」
「親父の密売仲間の娘に契約書を取ってこさせた」
「ああ、黄金の鷹亭によく来てたあの銀髪のご令嬢ね。なるほど、ふたりとも親の悪事を許せなかったわけか」
「……彼女は親がなにをしていようとも自分が贅沢できたら気にしない人種だな。親父と似てる。俺の結婚相手より親父の再婚相手のほうがいいと思うぜ」
「ん? てことはレオン、あんた彼女を騙して契約書を持ってこさせたってこと?」
「騙してなんかいない。真実を話さないでお願いしただけだ」
「レオン、あんた……」

 基本天然でちょっと悪いって、滅茶苦茶女の子受けしそうじゃないか!
 俺は義憤(という名の嫉妬)に駆られてレオンを責めた。
 酒場に集う虜女子たちは目の保養になるけど、俺がどんなに声をかけても挨拶ひとつ返してもらったことは一度もないんだぞ!

「女の子を利用するのって良くないと思うぜ?」
「黄金の鷹亭でお前をバカにするようなこと言わなければ巻き込まなかったんだけどな」
「まあ……なかなか香ばしいご令嬢ではありましたがね」

 ご令嬢はあまり獣化族を見たことがなかったようで、俺を見るなり気持ち悪いとか化け物とか、獣臭くて鼻が曲がるとか言ってくださったんでございますよ。
 帰れ、とひと言で追い返したレオンは男の俺から見てもカッコ良かったねえ。
 でも俺、もう気にしてないよ。
 次来たとき謝ってくれたし、あの子顔いいし。

「……それよりルナール」

 レオンは頬を赤く染めて、俺から顔を逸らす。
 えっ? なにコレ、なんか怖い。

「お前、女の子の好みに詳しかったよな。求婚のときの贈り物選んでくれないか?」

 俺は胸を撫で下ろした。
 この発言も意外っちゃ意外だけど、まだ想定内。

「おう。そうか、あんた結婚を考えてる相手がいるのか。もしかして親父さんに反対されてんの? ははあ、彼女と引き離すために一年間冒険者していいって許可出して、こっちでご令嬢を差し向けて来たってわけか」
「ルナールの推理力はすごいな、その通りだ」

 こうして素直に称賛してくるのも、レオンのいいところだ。
 なにかってぇと相手の足を引っ張ろうとしてくるアホも多いからね。
 青空市の装飾品地帯へ向かいながら、俺は尋ねた。

「ところでレオン、その婚約者ちゃんってどんな好みだ」
「さあ?」
「さあってあんた……照れてんの?」

 レオンは、燃え上がりそうな髪よりも顔を赤くして答えた。

「思春期のころに好きだと気づいて、それからは顔を見るだけで恥ずかしくなるので満足に話したことがないんだ。きちんと話せたら切ろうと思ってた髪も、いつの間にかこんなに伸びた。とりあえずノワの髪と瞳は飴色で、すごく可愛い」
「……そうか……」

 俺は心の中で、コイツが振られるほうに金貨百枚賭けた。
 ちなみに金貨百枚ってのは、フォーレ王国の都で毎年八月に開催される武闘大会の優勝賞金。親衛隊長が準決勝に仮面出場するのは、強さの高みを目指しているからか会場を盛り上げるためか……たった金貨百枚を王家が惜しんでるってことはないよね?
 ま、俺みたいな底辺冒険者には手も足も出ない金額だけど。
 しかしレオン、思春期から満足に話してないってなに。まだ二十歳にはなってないとはいえ、思春期って十二歳くらいからだろ? 何年没交渉なのよ!
 いつも女の子のほうから寄ってくるモテ男だから自分から迫るのは苦手なのかね。
 うん俺、レオンのこと好きだなあ。
 本命には振られちゃうモテ男とか最高じゃん。
 とはいえ、やっぱり可愛い女の子には声かけとくべきだよ。俺はそうする。
 コイツに利用されたご令嬢とどっかで会ったら尻尾モフモフさせて慰めてあげようっと。
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