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父と姉弟
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珍しいこともあるものだな――。
ジークフリートは久しぶりに父であるヴィルヘルム国王に呼び出され、首を傾げていた。
呼び出された場所は父の居室なのだから話は個人的な事なのだろうが…心当たりはない。
「お呼びでしょうか、父上。」
国王の居室、近衛騎士により開かれた扉の向こうには、リーナ王女までが揃っていた。
「あぁ、待っていたよ。」
王家の紋章の刻まれた金の指輪を嵌めた手でソファーを示すと、国王はジークフリートを促した。
リーナも何事かと少し緊張した面持ちで座っている。
「さて、2人が揃った所で話を始めるとしようか…。」
国王は侍女に持たせた封書をまずはリーナに読むよう差し出した。
「それは、ステーリアの王太子殿下からの文だ。」
リーナはしばらく文に目を走らせると、黙ったままそれをジークフリートに手渡した。
ステーリア王太子といえばリーナの婚約者候補だ。ジークフリートも面識はあるが、このように姉と共に呼び出されてまで父に何を話されるのかは正直分からなかった。
手紙は王太子から国王に宛て書かれたものだった。その流麗な筆跡がまず目に飛び込んでくる。ここ最近リーナがステーリア王太子に向けて手紙を書いていることなど挨拶や社交辞令から始まる手紙。読み進めて行くうちにある一文で目が留まった。
『リーナ王女との婚約を進めるに先立ち、ステーリア語の教師を王女殿下の輿入れまでの間こちらに留学させてみてはどうか…?』
ここに来てようやく自分が呼ばれた意味を悟り、ジークフリートは手紙から目をあげた。
「ステーリア語の教師というのは、もしかしてビューロー侯爵令嬢のことでしょうか?」
父と姉、両方を見ながら尋ねるとリーナはそうだ言うように頷いた。
「ジークフリート、ビューロー侯爵令嬢を王宮に引き留めているのがお前であることは儂も知っている。ステーリアの王太子殿下はどうやらリーナにステーリア語を教えているのが婚約者のいない若いご令嬢である事まで掴んでいるようだ…。その上で、才能を見込んでこの様に言ってきておる。」
ジークフリートは頭を抱えた。一体何処からあの王太子はセシリアの情報を掴んだというのか?セシリアをステーリアに招くのは王太子自らが望んでの事だというのか?何のために――などと言うのは愚問だろう。リーナはまだ婚約者候補であり、2人の婚姻は決定した訳では無い。セシリアは王家に劣るとはいえ、ヴィルヘルム王国の侯爵家の長女だ…。
「ジーク、まさかあなた…リアにはまだ何も伝えていないの?」
リーナと国王が固唾を飲んでジークフリートの答えを待っている。
「…何も伝えていない訳では、ないです。ただ…」
「決定的な一言は伝えていない――と?」
国王が眉を顰めて言葉を継いだ。
ジークフリートは今までセシリアと交わした会話を思い返してみる。『愛している』『好きだ』とその耳に囁いた記憶は――ない。もちろん、セシリアの気持ちなど確かめてもいない…あれだけ時間があったと言うのに――。
「非常に不味いな…。ステーリアの王太子は、近いうちにこちらに来ると言っている。」
国王は遠い目をした。それはきっと、王太子が直々にセシリアを見定めに来るということなのだろう。
ジークフリートは久しぶりに父であるヴィルヘルム国王に呼び出され、首を傾げていた。
呼び出された場所は父の居室なのだから話は個人的な事なのだろうが…心当たりはない。
「お呼びでしょうか、父上。」
国王の居室、近衛騎士により開かれた扉の向こうには、リーナ王女までが揃っていた。
「あぁ、待っていたよ。」
王家の紋章の刻まれた金の指輪を嵌めた手でソファーを示すと、国王はジークフリートを促した。
リーナも何事かと少し緊張した面持ちで座っている。
「さて、2人が揃った所で話を始めるとしようか…。」
国王は侍女に持たせた封書をまずはリーナに読むよう差し出した。
「それは、ステーリアの王太子殿下からの文だ。」
リーナはしばらく文に目を走らせると、黙ったままそれをジークフリートに手渡した。
ステーリア王太子といえばリーナの婚約者候補だ。ジークフリートも面識はあるが、このように姉と共に呼び出されてまで父に何を話されるのかは正直分からなかった。
手紙は王太子から国王に宛て書かれたものだった。その流麗な筆跡がまず目に飛び込んでくる。ここ最近リーナがステーリア王太子に向けて手紙を書いていることなど挨拶や社交辞令から始まる手紙。読み進めて行くうちにある一文で目が留まった。
『リーナ王女との婚約を進めるに先立ち、ステーリア語の教師を王女殿下の輿入れまでの間こちらに留学させてみてはどうか…?』
ここに来てようやく自分が呼ばれた意味を悟り、ジークフリートは手紙から目をあげた。
「ステーリア語の教師というのは、もしかしてビューロー侯爵令嬢のことでしょうか?」
父と姉、両方を見ながら尋ねるとリーナはそうだ言うように頷いた。
「ジークフリート、ビューロー侯爵令嬢を王宮に引き留めているのがお前であることは儂も知っている。ステーリアの王太子殿下はどうやらリーナにステーリア語を教えているのが婚約者のいない若いご令嬢である事まで掴んでいるようだ…。その上で、才能を見込んでこの様に言ってきておる。」
ジークフリートは頭を抱えた。一体何処からあの王太子はセシリアの情報を掴んだというのか?セシリアをステーリアに招くのは王太子自らが望んでの事だというのか?何のために――などと言うのは愚問だろう。リーナはまだ婚約者候補であり、2人の婚姻は決定した訳では無い。セシリアは王家に劣るとはいえ、ヴィルヘルム王国の侯爵家の長女だ…。
「ジーク、まさかあなた…リアにはまだ何も伝えていないの?」
リーナと国王が固唾を飲んでジークフリートの答えを待っている。
「…何も伝えていない訳では、ないです。ただ…」
「決定的な一言は伝えていない――と?」
国王が眉を顰めて言葉を継いだ。
ジークフリートは今までセシリアと交わした会話を思い返してみる。『愛している』『好きだ』とその耳に囁いた記憶は――ない。もちろん、セシリアの気持ちなど確かめてもいない…あれだけ時間があったと言うのに――。
「非常に不味いな…。ステーリアの王太子は、近いうちにこちらに来ると言っている。」
国王は遠い目をした。それはきっと、王太子が直々にセシリアを見定めに来るということなのだろう。
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