王太子殿下は甘い物を召し上がりません!

ゆみ

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相談

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 国王からの呼び出しがあった翌日。ジークフリートはレジナルドが来ると同時に話があると切り出した。
「あぁ、座ってくれ。」
 レジナルドが向かいのソファーに座ると直ぐに飲み物が準備され、侍女が下がっていく。これは長くなりそうだ、とレジナルドは腹を括った。
 ジークフリートは昨日の話をかいつまんでレジナルドに聞かせた。
「…ということで、ステーリアの王太子が近いうちにヴィルヘルムまで来るそうだ。」
「王太子が自ら?」
 苦々しく頷いたジークフリートを見て、レジナルドは暫し固まった。
「リアは…何故こうも王太子の心を掴むのがうまいのだろうか?」
「――いやいやいや…。ジークも大概だと俺は思ったけど、ステーリアの王子はたかだか手紙から一体何を考えてそんな風になったんだ?」
「分からん――。ただ、リアの語学に関する才能は確かに目を見張るものがあるからな。お前も知っているだろう?今学園でステーリア語を教えている教師はついこの間まで王宮で姉上に教えていた者だ。あの姉上が父上に泣きついて『頼むからもう少しついて行けるような教師に変えて欲しい』と言ったほどの者だ。――ほら、テストでは片手で数える程しか合格者が出なかったと問題になった…。」
「あぁ、あれは確かに凄かったな…。」
 レジナルドは何かを思い出したかのように小さく身震いした。
「リアは、ステーリア語はほぼ独学で、本から学んだだけだと言っていたがあれに合格していた――。」
「独学で?教師も付けずに?」
「あぁ。リアが侯爵家でどんな扱いを受けていたのかお前も知っているだろう?あの邸でリアが出来た唯一の事は本から知識を得ることだったのだろう…。」
 初めての茶会の時、セシリアは読書が趣味だと言っていた。しかし王宮に来てからというもの本を自ら手に取るということをしていない。本当に読書が好きならば、図書室を見たいと願い出ていてもおかしくは無いだろう。

「――で、ジークはこれからどう動くつもりなんだ?」
 ジークフリートはレジナルドに問われると暫く沈黙した。
「分からないんだ。――どうしたらいい?」
 珍しく自信なさげにそう呟くジークフリートに、レジナルドは驚いていた。
「もしかして、それで俺の事呼び出したの?まさかだよな?」
 淡い金髪にクシャリと手を入れると、ジークフリートはそのまま下を向いてしまった。
「――まさか、だよ。この私が…迷ってるんだ。」
「何を迷ってんだよ、見目麗しく頭脳明晰、文武両道な天下のジークフリート王太子殿下が!」
 レジナルドの心底呆れたような言葉を受けてもジークフリートは何も言い返せない。
「ヴィルヘルムの高位爵家令嬢が隣国に留学する機会など、そうそうあることでは無い。何故なら学園に入る頃には皆婚約者が居るからだ…。だが、リアにはまだ婚約者がいない。」
「それは、まぁ確かにそうだけどな。オマケにその令嬢は傍目に見て分かるほどの才能の持ち主ときた――。」
「あぁ――。だからもし本人が望むのならば、その機会は与えられて然るべきなのだ…。」
「本人が望んで、本当に勉学に打ち込めるのならば、だろう?きっとステーリア側は今回の件をそんな風に考えてはいない――。」
 ジークフリートも頷いた。王女の輿入れと同時に留学と言うのであれば問題にならない。しかしその前に寄越せと言うのは明らかにおかしい。恐らくは婚姻が結ばれる前にあわよくば…と言う所だろう。
「ジーク、セシリア嬢を生贄に差し出すつもりはないんだろう?じゃあ迷うことなんか何も…」
「リアは、最近になってやっと侯爵家から解放されて外の世界に目を向け始めたんだ。――それなのに、次は私がここから逃がさないとばかりに閉じ込めようとしている…。そんなこと、許されるのか?」
 セシリアにはもっと羽ばたくべき未来があるのではないか――。それを逃がすまいと縛ろうとする自分は、侯爵夫人やレイラと一体何が違うというのか?
 レジナルドは一瞬言葉に詰まった。ジークフリートがそう感じてしまうのも無理はない、確かにセシリアは王宮に来て明らかに様子が変わった。レジナルドでさえそう感じるのだから、ジークフリートは尚更だ。
「――ジーク、セシリア嬢にとって知り合いのいない隣国に留学してまで学びたいことって、一体何があると思う?」
 ジークフリートはハッとして顔をあげた。
「それは…」
「セシリア嬢だってただの女の子なんだからさ。」
 レジナルドはジークフリートにウィンクをしてみせた。
「ステーリアの王子じゃなくてお前が外の世界を見せてあげればいいんじゃない?」
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