王太子殿下は甘い物を召し上がりません!

ゆみ

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決意

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 その頃セシリアは、リーナ王女といつもの庭園でお茶をしていた。
 リーナはセシリアにステーリア王太子からの手紙の内容を何処まで伝えるべきか、迷っていた。昨日の今日でジークフリートはまだ何も行動を起こしていないだろう。
「リア、ジークとは最近話をしている?」
 まずは当たり障りのないところから探りを入れてみる。セシリアは少し困ったように笑った。
「ジークフリート殿下とは学園でお昼に少しだけお話するくらいです。――殿下が何か?」
 『ジークフリート殿下』――王宮に来てから随分経つというのに、その呼び方さえ変わっていないではないか…。まったくあの弟ときたら今まで何をしていたのだろう。陽射しも随分きつくなってきた。気がつけば季節は進んでもう初夏だ。
「リアがここに滞在するようになって2ヶ月程になるかしら?」
「――はい。」
 
 リーナはステーリア王太子妃の座には正直こだわりなどなかった。自分の婚約者候補にもさほど興味を持てないでいる。そういうは、正式に婚姻を結んだ後で育んでいけばいいという考えであった。だから、自分と同じ考えだろうと思っていた弟が、あっけなくセシリアに溺れていく様を間近で見ていて、羨ましくもありどこかもどかしくもあった。
「リーナ様」
 暫く考え込んでいたリーナに、セシリアが意を決したように呼びかけた。
「?」
「――私、リーナ様の婚約が整い次第、学園を辞めて領地に戻ろうと思っております。」
「領地に?――それはっ 駄目よ!!」
 いきなりのことに驚き思わずリーナは声を荒らげてしまった。セシリアもその剣幕に少し驚いているようだ。
「ゴメンなさい、大きな声を出してしまって。でも驚いてしまって。どうして?学園を辞めるだなんてそんな事…」
 セシリアはやはり困ったように微笑むと、その思いを口にした。
 本来は王都にある侯爵家から学園に通う所が色々な事があり、もう2ヶ月も王宮で世話になっている。リーナ王女と共に語学を学ぶという大義名分があるにせよ、さすがにこれ以上お世話になる訳にはいかない。だがしかし王宮を出て今更王都の邸に戻る訳にもいかないだろう。ならばセシリアには領地より他に行く宛などないのだ。
 至極真っ当な考えであった。リーナがセシリアの立場だったとしてもそう考えただろう――。しかし…。リーナはここに来てある事を思い出した。
「リア――学園を辞める必要はないのでは?」
 セシリアはその存在を知らないのだろうか?
「ですが…」
「学園には確か寮があったのでは?王家の者は入る事は叶わないけれど侯爵家ならば大丈夫なのでしょう?」
 セシリアは恥じ入るように俯いた。
「そのことでしたら一度調べはしたのですが…寮に途中から入るにはそれなりの根回しが必要なのです――それに、身の回りの世話をする者もこちらで用意しなければなりません。」
 もちろんセシリアには根回しをしてくれる母親も、寮に連れて行く侍女もいない。父親に頼めばなんとかなるのかも知れないが、侯爵に頭を下げる気にはなれなかった。
「あら、そんなこと?」
 リーナは扇子を広げニヤける口許を隠しながらセシリアを見つめた。
「リア、貴方には私が――それにジークもついているのよ?困った事があるならば真っ先に相談して頂戴?私もジークも、貴方の為に何かしたくてしょうがないのよ?」
 リーナが綺麗な蒼い瞳でこちらを見つめ甘く囁くと、それはいつかのジークフリートを見ているようで、セシリアは顔が熱くなるのを感じた。
「リ、リーナ様!」
「あらリア、顔が真っ赤よ?」
 セシリアはこうして優しくして貰える事への対価を何も差し出すことが出来ない。ただ一方的に施されることにいつまでも慣れることが出来ないでいた。
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