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ゾンビは既に死んでいる。大量のゾンビが呼び水となって悪魔が来る

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 見た事もない大都市アテミスの水道橋を倒壊させて干殺しした効果か、ボーナスタイムは続いていた。

 大都市アテミスから放出された難民が何故か麦畑の用水路の傍で難民キャンプを形成しており、オレは既にもう4つの難民キャンプを落としていたのだから。

 全員を美味しくいただくような食い意地の張った事はもうしない。

 安全第一だ。

 夜の内に落として、朝になったらエレガントに立ち去る。

 オレは気品あるエリートなのだから。





 当然、今のは冗談で。

 真面目な話をすれば、





 4つ目の1000人規模の難民キャンプの地中に潜伏中、妙な話を聞いた。

「襲われた難民キャンプで住民がゾンビになってたんだってよ」

「マジでか?」

「ゾンビになってたのは年寄り連中だけだったらしいが」

 なんて会話を聞いてオレは、

 もしかして。

 と心当たりがあった。

 難民キャンプを落として回ってるが、全員を美味しくいただいていたら数日は掛かる。

 数日も滞在するのは拙いのだ。

 人の流入があるかもしれないのだから。

 当然、全員は美味しくいただけない。

 喰いでのない老人はパスしていた。

 このオレの判断は正しく、最初の難民キャンプでは、

 翌日も雨だったのにも関わらず昼間に、食料を運んだ荷車2台と伝令の騎兵が来てたからな。

 当然、逃げられる前に始末したが。

 ゾンビ化したのはオレがパスした老人達だったのか?

 つまり、オレが噛んだらゾンビ化する?

 アメリカのゾンビ映画のように?

 又聞きの情報だけで断定するのは拙いか。

 実験だな、これは。

 こうして4つ目の難民キャンプで1000人中900人を使って実験したら、3日後に850人のゾンビ軍団が出来上がった。

 それを難民キャンプの土塁の外へとリリースしたので大騒ぎだ。

 50人がゾンビにならなかったのは噛みが甘かったからかな。





 それはそうと、

 ゾンビウィルスってSFだと思ったがファンタジーでもあるのか。





 ◇





 そのお陰で今や辺りはもうゾンビだらけでオレの移動も楽だった。

 オレは実った麦畑を南に移動する。

 用水路の端に難民キャンプが多数出来てるのでそこを目指した。





 だが、そのゾンビ騒ぎが拙かったらしい。





 ゾンビ騒ぎが近隣に伝わったのか妙なのがオレの前にやってきた。

 夜、麦畑をノロノロとオレは歩いていた訳だが、

 夜空から何かが接近してきた。

 最初は鴉系の魔物だと思ったが、見れば男悪魔だった。

 銀髪ロングのイケメンで20代。

 肌の色は灰青色。

 上半身は裸で右肩から右胸に模様のようなタトゥーがあり、プロレスラーのような黒のロングタイツを履いている。

 それが上空から黒い翼で飛びながら、

「おまえだろ、最近アテミスを騒がせてるゾンビって?」

「アアアァァァ(そうですけど?)」

 オレが答えると、

「所詮、知能のない虫けらか。何を言ってるのかまるで分からん」

 悪魔が呆れ気味に苦笑した。

「まあ、いい。おまえを王都に連れて行く。そこで暴れて貰うぞ」

 そう言うと同時に、オレの背後に着地してオレを抱きかかえて上空に飛びやがった。

 じょ、冗談じゃないぞ。

 オレを捨て駒に使う気だろ、それ?

 瞬時に言ってる事を理解したオレは前に出してたゾンビポーズの腕を自分に向けて闇の手を使った。

 当然、狙いは背後に居る男悪魔の顔だがオレにも掛かった。

「グアアアアアア」

 背後の男悪魔にもちゃんと命中したらしい。

 苦しんだ男悪魔が抱きかかえたオレを離しやがった。

 既に5階の高さまで抱えられてたオレは落下して地面でグシャリだ。

 例え、柔らかな麦畑であろうとも。

 もう許さんぞ。

 オレが立ちあがって上空の男悪魔を睨もうとすると、男悪魔も地上に着地していた。

 片膝を地面に付いて蹲り、両手で顔を覆いながら、

「グアアアア、 ゾンビが聖なる力だとぉ? 何だ、コイツ? 高貴なるオレの顔になんて事をしてくれやがるんだぁ」

 苦しんでる。

 聖なる力?

 何の事だ?

 それよりもこのチャンスを逃がす程、オレはマヌケじゃない。

 左足が痛んでるか、ガクッ、ガクッしながらオレはノロノロと、麦畑に着地して両手で顔を抑えて苦しんでる男悪魔に近付いて、首筋に噛み付いた。

「グアアアア、貴様、オレの首を・・・無駄な事は止めろ、ゾンビ風情が。悪魔は核が砕かれなければ死なないんだからな」

 首筋を噛んでも死なない?

 と不思議がってたら、弱点を何故か教えてくれた。

 核ねえ。

 やはり心臓にあるのか?

 オレは爪攻撃で胸板を貫いた。

 さすがはパワフルなゾンビだ。

 一撃で男悪魔の胸板を貫いた。

 心臓を握って取り出す。

 心臓を取り出したと思ったら宝玉だった。

 魔石の上位版?

「ゲフッ、貴様、本当にゾンビなのか?」

 青色の血を胸から流す男悪魔が口から青い血を吐いて驚く中、オレは男が悪魔が見てる前でその核を美味しくいただいた。

 パリンッと口の中で砕けた次の瞬間には、

「クソォォオ、オレがゾンビ風情に・・・ ギャアアアアアアアアアア」

 これでようやく男悪魔は断末魔を上げて消滅したのだった。

 悪魔の核だけでも両足が復活した。

 うん。

 問題ない。

 だが、男悪魔の身体は核を砕くと同時に黒い塵となって消滅しており、美味しくいただけなかった。





 ったく、身体が残らないなんてどうしようもないな、悪魔は。

 男悪魔の核を美味しくいただいても闇に包まれる事もなかったし。

 ゾンビポーズも直らない。

「アアアァァァ(オレの名前は久佐レオン)」

 言葉も喋れないままだ。

 結構、格がありそうな男悪魔だったんだがな。

 その程度だったか。

 オレは残念がりながら夜の麦畑を歩き出したのだった。

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