スーパーおてんばプロレスの女神たち ~やさぐれ女社長☆プロフェッショナルへの未知(みち)に挑むの巻~

ちひろ

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ジャパンなでしこプロレスへの挑戦状

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 プロの団体なんて作れるはずがないという社員全員の期待を裏切るかのように、おてんば企画のプロレス団体旗揚げ計画は、暴走列車のごとく突き進んでいった。明日からゴールデンウィークという四月下旬のことである。
 「安子ちゃ~ん、お願い。この郵便物、あとでポストに投函しといて」といい、日奈子が一通の封筒を安子に手渡した。
 封筒のあて先は、なんと「ジャパンなでしこプロレス 代表様」と書いてあるではないか。だ、代表様だなんて、代表の名前も知らないの?と思ってしまうが、日奈子に尋ねたところ「果たし状を送るのよ」だなんて、一体何を考えているのやら。
 「この封筒を送っても反応がないときは、直接、会場に殴り込みをかけるしかないわ」とかなんとか、はちゃめちゃなことをいいながら、「あ、それよりも今日のお昼ね、みんなにピザをごちそうしようかと思っているの。割引券をもらっちゃって、その有効期限が今日までなのよ」だなんて、いい加減モード全開の日奈子。果たし状とピザ。今の日奈子にとっては、どうやらピザの方が重要らしい。
 ところが、どっこい。世の中というのは本当にわからないものである。こともあろう、日奈子が果たし状を送りつけた老舗プロレス団体の若き女社長―その名を花形結衣という-から、封書で丁寧な返事が届いたのだ。
 その内容というのが――。

拝啓 日奈子殿。
 おてんば市と聞いて、これは挑戦をお受けする方向で考えようと思い、ペンをとりました。おてんば市というと、いわずと知れたRKクイーンやスーパーアサコのふるさとですね。彼女らがまだ大学生の頃、ニューおてんば温泉の露天風呂でお互いの背中を流し合ったのを思い出します。
 おてんばプロレスのことは今も気になっていて、よくSNSで検索しています。たしか今は稲辺容子さんや、ジャッキー美央さんだったかしら。将来性のある女子選手が多く、とても羨ましく思います。
 あ、もちろんそう。プレジデント日奈子さんという社長兼選手の女性にも注目しています。とりわけ日奈子さんの社長としての敏腕ぶりは、ぜひ参考にさせていただきたいです。
 とはいえ、私たちは世界最強を自負するプロ集団。いきなり頂上対決というわけにいかないことだけは、どうかご了承ください。交流戦のファーストステージとして、弊社の練習生を派遣させていただきたいのですが、いかがでしょう。選手名はミスXとでもしておきましょうか。できればエースの容子さんか、美央さんとの対戦を希望します。
 いいご返事をお待ちしていますので、ご検討のほどよろしくお願いいたします。

 「よ~し、ジャパンなでしこプロレスへのアプローチは大成功ね。ついに日本一の団体へ殴り込みよ」。そう口にすると、日奈子はさっそく美央と安子を社長室に呼んで、作戦会議を開くのであった。
 「えっ、作戦会議ですかぁ。私、夕べも半徹で、あんまり寝ていないんですよ」なんて、デザイナーとして多忙をきわめている美央にしてみれば、会議も何もあったもんじゃない。超豪華版の特別手当でももらわなきゃ、やっていられないわ。クリエイティブの仕事につきたくて就職したはずなのに、まさか女子プロレスラーとして飼いならされるとは――。これはもう単なる社長のわがまま会議でしょと思いながら、美央は後輩の安子にも声をかけ、鉛のように重たい腰をあげるのであった。
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