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第6話 推しの笑顔によだれが出ました。
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「私はフィアス・チャンドラー。コルーゲン王家に使えし者です。私共の申し出を、お受けいただけますか【聖剣の聖女】アルフィエット様」
フィアスはそう言って胸に手を当て、うやうやしく頭を下げた。
「はい。お受け致します。ふつつか者ですが、これからどうぞよろしくお願いします」
王族の前に出ても恥ずかしく無い程度の礼儀作法は習っていた。私も形式にならって礼を返す。
「ありがとうございます、アルフィエット様。私を信頼して下さった事へのお礼は、最大級のもてなしでお応え致します。では参りましょう。あちらに【竜車】を用意しております。地を駆ける竜をご存知ですか?」
優しく微笑みながら差し伸べられた、フィアスの手を取る私。
「いえ、知りません。そんな竜がいるのですね」
「ええ。ボードギアスは魔術国家。アルフィエット様にとって、未知のものが多くございます。それはきっと、あなた様の好奇心や知的欲求を存分に満たすでしょう」
フィアスに連れられ、私達を囲む群衆の中を抜けて行く。ここで起こった出来事は、すぐにバイルセン国王の知る所となるだろう。だけど構わない。私は、私を必要とする人達の元へ行く。
振り返ると、エクスカリバーが無言でついてきていた。私の背後を守るようにしながら、そっと微笑んでいる。
くっ......! その微笑みの威力メガトン級......! 好きだぁー!
「アルフィエット様、よだれが垂れていますよ。拭いて差し上げますね」
「あひゃっ! しゅみましぇん!」
エクスカリバーが私のよだれをハンカチで拭いてくれた......! もう死んでもいい......!
いや、死にたくない! こんな幸せ、もしまた生まれ変わったって手に入るかどうか分からないもん! だったら私は今を生きる! 絶対に死んだりしない! 生きて生きて生き抜いて! もっと聖剣騎士達を召喚していっぱい溺愛されるんだー!
「っっしゃー!」
私はガッツポーズを取った。フィアスもエクスカリバーも不思議そうに私を見たが、愛しいものを愛でるように、優しく微笑んでくれたのだった。
フィアスはそう言って胸に手を当て、うやうやしく頭を下げた。
「はい。お受け致します。ふつつか者ですが、これからどうぞよろしくお願いします」
王族の前に出ても恥ずかしく無い程度の礼儀作法は習っていた。私も形式にならって礼を返す。
「ありがとうございます、アルフィエット様。私を信頼して下さった事へのお礼は、最大級のもてなしでお応え致します。では参りましょう。あちらに【竜車】を用意しております。地を駆ける竜をご存知ですか?」
優しく微笑みながら差し伸べられた、フィアスの手を取る私。
「いえ、知りません。そんな竜がいるのですね」
「ええ。ボードギアスは魔術国家。アルフィエット様にとって、未知のものが多くございます。それはきっと、あなた様の好奇心や知的欲求を存分に満たすでしょう」
フィアスに連れられ、私達を囲む群衆の中を抜けて行く。ここで起こった出来事は、すぐにバイルセン国王の知る所となるだろう。だけど構わない。私は、私を必要とする人達の元へ行く。
振り返ると、エクスカリバーが無言でついてきていた。私の背後を守るようにしながら、そっと微笑んでいる。
くっ......! その微笑みの威力メガトン級......! 好きだぁー!
「アルフィエット様、よだれが垂れていますよ。拭いて差し上げますね」
「あひゃっ! しゅみましぇん!」
エクスカリバーが私のよだれをハンカチで拭いてくれた......! もう死んでもいい......!
いや、死にたくない! こんな幸せ、もしまた生まれ変わったって手に入るかどうか分からないもん! だったら私は今を生きる! 絶対に死んだりしない! 生きて生きて生き抜いて! もっと聖剣騎士達を召喚していっぱい溺愛されるんだー!
「っっしゃー!」
私はガッツポーズを取った。フィアスもエクスカリバーも不思議そうに私を見たが、愛しいものを愛でるように、優しく微笑んでくれたのだった。
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