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貴族に飼われて1年が経ちました
【38話】4人でおでかけ
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ピーターがカーテンと窓を開けた。眩しい日の光と小鳥のさえずりが心地いい。
「んん…おはようピーター…」
「ごめん。起こしちゃった?」
「うん、でもいい目覚めだよ。気分が良い」
体のだるさもないし、縛られた痕もない。今日は珍しく一晩中一人で眠れたみたいだ。僕は寝転んだまま大きく伸びをした。
「はあ…。爽やかな朝だなあ」
「うん。今日は晴れているしおでかけ日和だな」
「はは。まあ僕は城の外には出られないんだけどね…」
そんな話をしていると、朝から目が潰れるくらいキラキラした笑顔のスルトがノックもせずに入ってきた。後ろからひょこっとエドガーものぞいている。
「ケーゴ!今日は暇か?!」
「ええ。僕は毎日ひたすら暇ですけど」
「はは。そうだね。じゃあ、今日は僕たちと町に出ないか?スルトと僕で町の見回りをしなくてはいけなくてね。見回りと言っても、住民に挨拶するだけなんだけど。ケーゴも一緒にどうかな?」
「え?僕なんかが一緒に行って大丈夫なんですか?」
「大丈夫だ!俺たちが町をぶらぶらして楽しんでいるところを住民に見せるだけでいいんだ。それで民は喜んでくれるからな」
「いえ、そういう問題ではなく…僕は貴族でもなんでもないですし、Ωですよ…?」
不安そうに尋ねると、スルトがいたずらっぽく笑った。
「ああ。だからお前にはきっちりした服装をしてもらう。甘い香りに関しては、俺とエドガー、それにピーターも付いてこさせるから問題ない。いけるな?ピーター」
「はい!わが身に代えてもケイゴを守ります」
「よく言った」
「信頼してるよ、ピーター」
いまや全幅の信頼を寄せているスルトとエドガーは、ピーターの肩に手を置いてニカっと笑った。ピーターは期待されていることに喜びを感じ笑い返す。良い関係性だなあ、と僕は眺めていた。
こっちの世界に来て1年が経った今、僕は時々どうしようもない不安に駆られることがある。それはもちろんこの兄弟と、僕の将来についてだ。
19歳になった僕は、たぶん今が一番魅力的だと思う。30歳くらいまでは可愛がられるかもしれない。でも、おっさんになって、体型もぶよぶよになって、加齢臭漂うようになってきたらさ…普通に考えて捨てられるよね?だってこの二人は貴族だよ。いつでも年頃の娼婦や男娼を寝室に招くことができる。そんなことができるのに、誰がおっさんと寝たがるんだって話で。
それに、この二人はいつか必ず貴族の女性と結婚するだろう。もちろん僕は反対なんてするつもりはない。だってそれがスルトとエドガーの最も大切な"仕事"なんだもん。それを、貴族でもなければ女でもない僕が横やり入れるなんて、できるわけないし、するべきじゃない。
そうなったら僕ってどうなるの?たぶん男娼として、二人が気が向いたときだけ僕の部屋にやってくるようになるんだ。でも、二人が全く僕の部屋に来なくなることも充分ありえる。仕方ない。それは分かってる。でも、その日のことを考えると、寂しさと、まだいない二人の奥さんへの嫉妬に胸が苦しくなる。
「おーい、ケーゴ?どういたんだい?」
エドガーが僕の目の前で手を振っている。我に返った僕は適当な返事をしてベッドから出た。
「よし、ではまずケーゴの服装を整えよう。今日は俺たちと並んで遜色ない恰好をしてもらうぞ。おい、いるか?」
スルトの声掛けと共に、5人のメイドがそれはもう立派な服を持って部屋に入ってきた。深い緑色の服。よく歴史映画の貴族が着てるやつだ…!メイドは僕の着ているバスローブをはぎとり、手際よく服を着せた。シンプルなつくりだけど品が良い。でも襟元にもしゃもしゃしているリボンを付けられてこっぱずかしい。
続いて鏡台に座らされ、だいぶ伸びていた髪を切られた。ガッチガチに髪をまとめられ、オールバックにちょろっと前髪が垂れた髪型にされる。
「おお…!」
「美しいね」
鏡に映る僕は、たしかに美しかった。えー、僕ってこんなに顔が良かったの?やばくない?まじで貴族みたい。
「この顔じゃ、そりゃ僕のこと好きになるよね」
ハッ、と笑いながらスルトとエドガーを見ると、スルトは「こんの、生意気なっ!」と言いながらなぜか顔を赤らめ、エドガーは「やっと分かった?」と言いながら僕に抱きついた。ピーターは「あ~あ、また始まったよ…」という顔でこっちを見ている。
「ちょっと!なんで二人とも勃ってんの?!今から町へ行くんでしょ?!」
「ああ、行くとも」
「もちろんだ」
「じゃあ早く行きましょう!ねえ!離れて?!これ以上触ったらセックスの流…むぐっ…」
僕が言葉を言い終えるまでにエドガーの唇が僕のを塞ぐ。スルトは荒い息遣いで耳をぺろりと舐めた。
「んっ…!ちょ!ピーター!助けてーーー!!この人たち盛り始めたよ!!ピーター!ちょっと!こっち見ろ!目を背けるな現実を見ろ!!」
「……」
「この裏切り者ォォォ!!」
「スルト様、エドガー様」
「む?」
「なんだい?」
僕に服を着せてくれた一人のメイド(たしか射精管理の時に僕を見張っていた人だ)が跪いてクソエロ猿兄弟に声をかける。
「今日はせっかくの外出です。町の一番いい宿を一室借りております。そちらに楽しみを取っておいてはいかがですか?」
「ナイスメイドさん!!最高!!あんた天才!!ピーターは彼女を見習え!!」
僕がギャンギャン吠えているとスルトに口を塞がれた。スルトは兄に「どうする?」と聞くと、エドガーが「そうしよっか」と答えた。そして僕に満面の笑顔を向ける。
「ただし今晩は寝かせないよケーゴ」
「ヒェッ」
「んん…おはようピーター…」
「ごめん。起こしちゃった?」
「うん、でもいい目覚めだよ。気分が良い」
体のだるさもないし、縛られた痕もない。今日は珍しく一晩中一人で眠れたみたいだ。僕は寝転んだまま大きく伸びをした。
「はあ…。爽やかな朝だなあ」
「うん。今日は晴れているしおでかけ日和だな」
「はは。まあ僕は城の外には出られないんだけどね…」
そんな話をしていると、朝から目が潰れるくらいキラキラした笑顔のスルトがノックもせずに入ってきた。後ろからひょこっとエドガーものぞいている。
「ケーゴ!今日は暇か?!」
「ええ。僕は毎日ひたすら暇ですけど」
「はは。そうだね。じゃあ、今日は僕たちと町に出ないか?スルトと僕で町の見回りをしなくてはいけなくてね。見回りと言っても、住民に挨拶するだけなんだけど。ケーゴも一緒にどうかな?」
「え?僕なんかが一緒に行って大丈夫なんですか?」
「大丈夫だ!俺たちが町をぶらぶらして楽しんでいるところを住民に見せるだけでいいんだ。それで民は喜んでくれるからな」
「いえ、そういう問題ではなく…僕は貴族でもなんでもないですし、Ωですよ…?」
不安そうに尋ねると、スルトがいたずらっぽく笑った。
「ああ。だからお前にはきっちりした服装をしてもらう。甘い香りに関しては、俺とエドガー、それにピーターも付いてこさせるから問題ない。いけるな?ピーター」
「はい!わが身に代えてもケイゴを守ります」
「よく言った」
「信頼してるよ、ピーター」
いまや全幅の信頼を寄せているスルトとエドガーは、ピーターの肩に手を置いてニカっと笑った。ピーターは期待されていることに喜びを感じ笑い返す。良い関係性だなあ、と僕は眺めていた。
こっちの世界に来て1年が経った今、僕は時々どうしようもない不安に駆られることがある。それはもちろんこの兄弟と、僕の将来についてだ。
19歳になった僕は、たぶん今が一番魅力的だと思う。30歳くらいまでは可愛がられるかもしれない。でも、おっさんになって、体型もぶよぶよになって、加齢臭漂うようになってきたらさ…普通に考えて捨てられるよね?だってこの二人は貴族だよ。いつでも年頃の娼婦や男娼を寝室に招くことができる。そんなことができるのに、誰がおっさんと寝たがるんだって話で。
それに、この二人はいつか必ず貴族の女性と結婚するだろう。もちろん僕は反対なんてするつもりはない。だってそれがスルトとエドガーの最も大切な"仕事"なんだもん。それを、貴族でもなければ女でもない僕が横やり入れるなんて、できるわけないし、するべきじゃない。
そうなったら僕ってどうなるの?たぶん男娼として、二人が気が向いたときだけ僕の部屋にやってくるようになるんだ。でも、二人が全く僕の部屋に来なくなることも充分ありえる。仕方ない。それは分かってる。でも、その日のことを考えると、寂しさと、まだいない二人の奥さんへの嫉妬に胸が苦しくなる。
「おーい、ケーゴ?どういたんだい?」
エドガーが僕の目の前で手を振っている。我に返った僕は適当な返事をしてベッドから出た。
「よし、ではまずケーゴの服装を整えよう。今日は俺たちと並んで遜色ない恰好をしてもらうぞ。おい、いるか?」
スルトの声掛けと共に、5人のメイドがそれはもう立派な服を持って部屋に入ってきた。深い緑色の服。よく歴史映画の貴族が着てるやつだ…!メイドは僕の着ているバスローブをはぎとり、手際よく服を着せた。シンプルなつくりだけど品が良い。でも襟元にもしゃもしゃしているリボンを付けられてこっぱずかしい。
続いて鏡台に座らされ、だいぶ伸びていた髪を切られた。ガッチガチに髪をまとめられ、オールバックにちょろっと前髪が垂れた髪型にされる。
「おお…!」
「美しいね」
鏡に映る僕は、たしかに美しかった。えー、僕ってこんなに顔が良かったの?やばくない?まじで貴族みたい。
「この顔じゃ、そりゃ僕のこと好きになるよね」
ハッ、と笑いながらスルトとエドガーを見ると、スルトは「こんの、生意気なっ!」と言いながらなぜか顔を赤らめ、エドガーは「やっと分かった?」と言いながら僕に抱きついた。ピーターは「あ~あ、また始まったよ…」という顔でこっちを見ている。
「ちょっと!なんで二人とも勃ってんの?!今から町へ行くんでしょ?!」
「ああ、行くとも」
「もちろんだ」
「じゃあ早く行きましょう!ねえ!離れて?!これ以上触ったらセックスの流…むぐっ…」
僕が言葉を言い終えるまでにエドガーの唇が僕のを塞ぐ。スルトは荒い息遣いで耳をぺろりと舐めた。
「んっ…!ちょ!ピーター!助けてーーー!!この人たち盛り始めたよ!!ピーター!ちょっと!こっち見ろ!目を背けるな現実を見ろ!!」
「……」
「この裏切り者ォォォ!!」
「スルト様、エドガー様」
「む?」
「なんだい?」
僕に服を着せてくれた一人のメイド(たしか射精管理の時に僕を見張っていた人だ)が跪いてクソエロ猿兄弟に声をかける。
「今日はせっかくの外出です。町の一番いい宿を一室借りております。そちらに楽しみを取っておいてはいかがですか?」
「ナイスメイドさん!!最高!!あんた天才!!ピーターは彼女を見習え!!」
僕がギャンギャン吠えているとスルトに口を塞がれた。スルトは兄に「どうする?」と聞くと、エドガーが「そうしよっか」と答えた。そして僕に満面の笑顔を向ける。
「ただし今晩は寝かせないよケーゴ」
「ヒェッ」
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