前世粗チンの俺が勇者の引き立て役で殺される巨根オークに転生した話

揚惇命

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一章 町外れの教会編

故人を想う心

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 騎士たちの足音も無くなり、火も消え、安全を確認しながらグリムバッシュは、洞窟の掘りかけのように見せたところからこっそりと表に出る。
 目の前には、まるで俺が居たこの先を守るかのように弟2人の遺体が転がっていた。

「あぁ、カログ。ズゴッグ。うぅ。すまない。情け無い兄で本当にすまない。うぅ」

 物言わぬ骸と成り果てた弟2人の遺体を抱え、洞窟の奥へと向かう。
 そこは、洞窟の上から光が差し込む綺麗なところで、勇敢に戦って亡くなったオークたちを埋めるのに最適な場所だと考えたのだ。
 穴を掘り、弟2人の遺体を埋葬し墓を建て名を刻む。
 勇敢なるオークの戦士カログ、ここに眠る。
 勇敢なるオークの戦士ズゴッグ、ここに眠る。

「俺が転生した世界ではな。墓に花を添えるのが基本なんだが。すまない、今は無い。いつか、俺がまたこの洞窟を繁栄させたら、その時はお前たちに似合う花を墓前に捧げよう」

 そう、俺は名も無いオークとしての人生を終えた後1度目の転生で、イケメン粗チンホストの粗末原猛としての生涯を過ごした。
 勿論、1度目の名も無いオークとしての時はオークの王でも何でもなかった。
 その時の俺はオークの中でもナニが小さい方で、恋愛経験もないまま、鮮血姫イレーナ・アイゼンベルクによって、親兄弟たちを惨殺された。
 怒り狂った俺は女への復讐のためシスタークレアを狙った。
 まぁ、勇者に邪魔されて失敗したがな。
 そして、死んだ俺が転生した先が粗末原猛だった。
 そこでも俺のナニは小さかった。
 あの日、コンビニに突っ込んできた乗用車に轢かれ、再びこの世界に帰ってくるとはな。
 もっと早く、分かっていれば今世での弟たちの死は無かったかもしれん。
 いや、オークというのは変わらん。
 戦士として殉ずることを良しとする。
 1度目の時も今回も臆病者で慎重な俺が異質な存在なだけだ。
 だが、今回は失敗しない。
 何年......何十年......何百年とかかろうと必ずや鮮血姫イレーナ・アイゼンベルクに復讐する。
 俺は1人、仲間たちの墓を掘り、その遺体を丁寧に埋葬する。
 同じように仲間たちの名も刻む。
 勇敢なるオークの戦士ゴラム、ここに眠る。
 勇敢なるオークの戦士ローラ、ここに眠る。

「ゴラムにローラ、お前たち2人は一緒の墓で良いだろう?俺のことを信じてくれていたら......いやオークの戦士としてお前は殉ずることを選んだ。そのことを否定するのは、ダメだな。だが、俺はもっとお前たちと話がしたかった。うぅ」

 故人を想い、墓に手を合わせて故人の生前に想いを馳せる。
 俺が粗末原猛として、学んだ知識の一つだ。
 俺は粗末原猛として学んだことも全て総動員して、オークを2度とこんな目に遭わせられない最強の国を作る。
 だから、お前たちもそこからこの先の俺のことを見ていてくれ。
 もう、臆病者だと決して言わせないから。
 洞窟の1番奥、母が司令部として使っていた部屋では、多くの女や子供の遺体と共に、2人の子を守るように折り重なるように母の遺体があった。
 母の遺体の下からは、妹2人の遺体が。

「うぅ。母さん。ウラクル。ナユル。こんなことなら俺が強引に2人を。すまない。情けない兄貴で本当にすまない。うぅ」

「その声は、グリムバッシュ兄ちゃん?」

「ウラクル!?無事なのか?」

「うん。ママが私とナユルの口を塞いで、絶対に声を出すなって。カログとズゴッグとナユルも無事だよね?」

 俺はウラクルの言葉に返事ができなかった。

「グリムバッシュ兄ちゃん、何で何も言ってくれないの?」

 俺の沈黙を掻き消したのは、もう1人の妹の声だった。

「ウラクル姉、そんなに慌てて、どしたの?」

「ナユル!良かった」

「ウラクル姉、そんなに抱きついたら苦しいってば」

「ナユル!?」

「あれ、臆病者のグリムバッシュ兄じゃん。ってウソウソ。だって、正しかったのは、グリムバッシュ兄だしね。アイツら、マジで鬼畜だよ。私たちを必死に隠す母さんに何度も何度も剣を突き立ててさ。これから復讐するんだよね?何でも協力するから言ってよグリムバッシュ兄」

「ハハッ。俺は1人じゃないんだな」

「そっか。じゃあ、カログ兄とズゴッグ兄は、立派に務めを果たしたんだ。マジ、カッコいいじゃん。グリムバッシュ兄が寂しがるからって、私たちが止めるのも聞かずにグリムバッシュ兄の隠れてる所の目の前で仁王立ちしてたのよね」

 それで2人は俺が居る先を守るように倒れていたのか。

「カログにズゴッグ、お前ら俺なんかのために馬鹿だな」

「馬鹿なのは、グリム兄さんの方だよ。ちゃんと生存確認もせずに埋めるとか勘弁してよ。全く」

「うっ。まだ、あの煙を吸い込んだ気持ち悪さが残るけどよ。兄貴が無事で何よりだぜ。へへっ」

「カログ!ズゴッグ!俺は夢でも見てるのか?」

「いや、僕は生きてるから安心して。あの煙を少し吸い込んで、これは危ないやつだって理解したからさ。咄嗟に地面に鼻を埋めて、そのまま動かなかったら。グリム兄さん?」

「アイツらろくに確認もせずにどっか行きやがるからよ。これは好都合だと思ってよ。俺らはそもそも兄貴を守るために。って兄貴も兄貴だぜ。ろくに確認もせずに埋めやがって!目を覚ましたら土の中とか何かの冗談かと思ったぜ。ウゲッ兄貴。いきなり何だよ」

「良かった。2人が無事で本当に良かった。臆病者の俺なんかのために2度と死のうと思うな馬鹿者!」

「ごめんよグリム兄さん」

「悪かったよ兄貴」

 この後、俺は生きてくれていた弟たちと妹たちに俺が今やってることを話すのだった。
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