前世粗チンの俺が勇者の引き立て役で殺される巨根オークに転生した話

揚惇命

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一章 町外れの教会編

共同墓地という概念

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 俺は生きてくれていた弟たちと妹たちに今やってることを話した。

「共同墓地?」

「へぇ。共同墓地ねぇ。臆病なグリムバッシュ兄にしては、良いこと言うじゃん。要は、勇敢に戦って亡くなった仲間たちを弔ってるってことっしょ?」

「あぁ。ナユルの言う通りだ」

 俺の次に当たるウラクルは、言葉の意味が飲み込めてないようで、1番下の妹のナユルは理解してる感じだった。

「そこに母さんも入れるつもりなの?」

 俺たち五人兄妹の中では、ナユルの上の兄に当たるカログが発言する。

「そのつもりだったがダメか?」

「流石にダメだろ。親父とお袋を同じ墓とやらに埋めるのは賛成だけどよ。仲間たちと同じってのはダメだろ。仮にも親父とお袋は、この集落の族長とその妻だぜ。特別な墓とやらにしてやりてぇってのが本音だ」

 俺の肯定に反対したのは、カログのすぐ上の兄に当たるズゴッグだ。

「成程。それもそうか」

 俺は親だからと特別視するのはどうかと思っていたが父と母は、この洞窟の族長と族長夫人だったな。
 そう考えれば、当然か。

「というかお前らの妻は、共同墓地で良いのか?」

「あぁ。僕はどうでも良いよ。あんな一夜限りの女なんて。寝台でもずっとグリム兄さんと縁を持たせてってうるさかったし。グリム兄さんがオークの女を毛嫌いしてるのは、何となく知ってたしね」

「俺もだな。寝台でも兄貴と誼を通じさせてって、大して上手くもねぇ寝技の女だったしな」

 2人とも俺のせいでだいぶ苦労してるのに、俺なんかのために命を張ったのかよ。
 それとは別に俺は、ペロッと舌を出すカログを見て、あの日のことを思い出した。

「お前、まさか俺が女たちを譲りやすいように?」

「大せいかーいだよグリム兄さん!出来が良すぎる弟を持てて、鼻が高いでしょ?」

「えっそうなのかカログ?」

 まぁ、ズゴッグはそうだよな。
 お前はカログみたいにつぶさに俺の表情を観察したりしないからな。
 というか、カログに俺がオークの女をあまり好いていないことを見抜かれていたなんてな。

「そうだな。これから復興を開始するオークの国の宰相はお前に任せるよ」

「流石、グリム兄さん!母さんを何度も刺し殺した奴らに目にもの見せてあげるよ」

「あっカログ兄ずるい!なら、臆病なグリムバッシュ兄、私は当然、元帥だよね。将軍のズゴッグ兄のことを顎で使ってあげるから!」

「何で、俺がナユルの下なんだよ!」

「あら、じゃあズゴッグ兄。なら、殴り合いで決着でも付ける?今の対戦成績、どうなってたっけ?」

「うぐぐっ。お前の百戦百勝だよ!」

「だよね~。なのに私の上になりたいとかおかしいんじゃない?」

 1番下は自由奔放なんてよく言ったもので、ナユルはこの通りお転婆オークなのである。

「わかったわかった。2人とも将軍で良いだろ?お前たちは競い合わせた方が力を発揮するからな」

「ぐぬぬ。まぁいっか。ズゴッグ兄に私との圧倒的力の差を見せつければ良いだけだし」

「言ったな?今は確かに負けっぱなしだけどよ。将軍になったら俺が一軍って言われるぐらいの働きしてやるからな!」

 ズゴッグもナユルも武闘派だからこうやって切磋琢磨してる姿が微笑ましい。
 少し前まで、2度とこんな光景を見られないと思っていたのが嘘みたいに兄妹皆無事なのが本当に嬉しい。
 この時までは。
 外に出た俺たちを待ち受けていたのは。

「オェェェェェェ」

 胃から迫り上がってきたものを盛大に吐き出したのは、ズゴッグだ。
 それぐらい洞窟の中よりも外の方が凄惨だった。
 まるで、何かのゲームでもしていたかのように幾つもの槍に貫かれているオークの戦士の遺体。
 身体中に焼き跡を付けられ、苦悶の表情を浮かべながら息絶えているオーク戦士の遺体。
 腑をぶちまけられて、ところどころを食い散らかされたオーク戦士の遺体。
 首を刎ねられて、晒し首のようにされている父さんやダルグ叔父さんの遺体が1番マシだったぐらいだ。
 それが1番丁重な扱いに見えるほどに。

「アイツら、マジヤバっしょ。グリムバッシュ兄、勿論今から復讐するよね?」

「いや。今は、力を付ける。アイツらの国は、強い。今の俺たちが挑んだところで、父さんたちの二の舞になるだけだ」

「やっぱり臆病者のま」

 ナユルの口を制したのはカログだ。

「ナユルの気持ちは痛いほどわかるけどこればかりはグリム兄さんが正しい。アイツらは大軍を準備できる。それに引き換え、僕たちはたったの五人、しかもウラクル姉は、武器音痴。4人で勝つことなんて不可能に近い。今は、力を付けることに僕は賛成だよ」

「カログ兄まで。でも確かにこのままの私らじゃ無理か。今は従うけどグリムバッシュ兄にその気が見られなかったら私1人でも仇を取るから!」

「その心配は必要ないよ。こんなことをした奴らに1番怒りを抱いてるのは、グリム兄さんなんだからさ」

 本当にカログは俺の一瞬の表情を良く見てる。
 思えば、粗末原猛だった時も顔に良く出ていた。

「あっ、心配しなくて大丈夫だよグリム兄さん。僕ぐらい観察眼に優れてないとわからないレベルだからさ」

 な、成程。
 むしろ、それぐらい微々たるものなのにわかるお前に脱帽なのだが。
 この後、俺たちは外のオーク戦士の遺体も中へと運び込み、共同墓地に埋葬。
 父さんは母さんと共に別の場所に。
 ダルグ叔父さんは、父さんを支えてくれた側近としてとしても家族としても共に。
 勇敢なるオークの統治者ドラグ、ここに眠る。
 勇敢なるオークの統治者の妻ミエル、ここに眠る。
 勇敢なるオークの統治者を支えし者ダルグ、ここに眠る。
 3つの名を刻んで、俺が手を合わせる隣でウラクルは涙を流し、ナユルは決意を固め、カログとズゴッグは、誓いを立てた。

「うぅ。お母さん。私たちを守ってくれてありがと。寂しいけど私もお母さんのように子供の命を守れる立派なお母さんになります。うぅ」

「見ていて父さん。臆病者のグリムバッシュ兄を一人前の王にして、ズゴッグ兄と支えるから」

「父さん、やっぱりグリム兄さんが正しかったことは、もうお分かりですよね?そこで見ていてください。グリム兄さんが偉大なるオークの王となられる姿を。いえ、僕がそうすることをここに約束します」

「親父!お袋!兄貴は本当に凄えよな。オークに墓っていう概念が芽生えたんだぜ。毎年、俺ら兄妹で墓参りってやつやるからよ。そこで、見守っててくれや。勿論、兄貴を王にもするしよ」

「父さん。母さん。俺はもう迷わない。タールマ帝国を必ず滅ぼすよ」

 まぁ、鮮血姫イレーナ・アイゼンベルクを俺の肉奴隷にするって言ったらナユルが真っ先に殺しそうだけど。
 でも、アイツには死なんて生温いと思うんだ。
 オークをたくさん殺したんだからその分、その腹で産んでもらわないとダメだろ?
 まぁ、その前にこの洞窟の復興が先だけど。
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