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一章 町外れの教会編
近場の洞窟で生き残りの捜索
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「では、言ってくる。俺が居ない間、外政のことはカログに内政のことはウラクルに意見を求めるように」
「合点承知よグリムバッシュお兄様!」
「おぅ、任せとけ!って、まだそんな遠くに行くわけじゃねぇだろ兄貴?」
「まぁな。暫くは近場の洞窟に生き残りが居ないか見回ってみるつもりだ」
「なら、そんなに心配することもねぇだろ。事実、カログも姉貴も見送りにきてねぇんだからよ」
「だな」
俺は、見送りに来てくれたナユルとズゴッグと言葉を交わして、外に出た。
俺の手には、オークの相棒である棍棒を握っている。
先ずは、俺たちの洞窟に知らせに来てくれてオーク戦士が居た隣洞窟村の方を訪ねてみることにしよう。
「うっ。やはりこの異臭には慣れんな」
タールマ帝国の襲撃を受けた隣洞窟村の惨状も俺たちのところと大して変わらない。
変わるとしたら長らく死体を外に放置されていたからか異臭が酷いことと女子供も容赦なく打ち捨てられていることだ。
どうやら隣洞窟村は、非戦闘員も戦に繰り出して、総力戦に及んだようだ。
こんな中、生き残りが居るとはとても思えない。
だが、こんな状況でも確認せねば。
隣洞窟村の規模は、俺たちのところよりもかなり小さい。
それもそうだ。
父はこの辺りの洞窟を束ねる領主のようなものであった。
だから、ここは隣洞窟村なのだ。
俺たちのところの動員兵力が千に対して、この村の動員兵力は百ぐらいなのだ。
この他にも動員兵力が10の小さい村もある。
それらを支援する形で自治を認めて、庇護していたのが父なのだ。
この様子だと逃げようとしたものですら容赦なく背を突かれている。
こんなことをしておいて、タールマ帝国は自らの国のことを武士道精神の溢れる国などとよく言えたものだと思う。
中も酷い有様だ。
オークの焦げ跡や壁に槍ごと貫かれたオークの遺体。
それらもこの数ヶ月で、強烈な腐敗臭を発していた。
これでは、生き残りなどいまい。
俺が帰ろうとしたその時。
カツンとまるで石か何かが壁に当たる音が聞こえた。
その後。
「お、おい。何やってんだよ気付かれちまうだろ」
「ご、ごめんなさい」
「そこに誰か居るのか?」
俺は安心させるようにオーク語で話しかけた。
「な、なんだよ同族かよ。ビビって損したぜ。にしてもこんなところによく来たな。ここが人口五百頭の村だったなんて信じられるか?」
「あぁ。人口五百頭、常備兵百頭の立派な村だった。ここの勇敢なオーク戦士が俺たちの村に命をかけて敵襲を知らせに来てくれたがその甲斐も無く、俺の村も滅んだ。人口五千頭、常備兵千頭の都市がたった一夜でな」
「まさか、アンタ領主様、なのか?」
「いや、父は勇敢に戦ってその命を散らした。生き残ったのは、俺を含めてたったの五頭だ」
「そ、そうか。親父は立派に務めを果たしたんだな。でも、それでも生き残ったのはたった五頭か。ハハッやっぱりあんな計画到底無理だった。都市が一夜で滅ぶ相手に、仲間たちが外に非戦闘員を逃すなんて。俺は怖くて怖くて妹と2人隠れてることしかできなかった。とても逃げ切れるなんて思えなかった。臆病者だと笑ってくれ。父は、傷を負っても領主様の村に敵襲を知らせたのに。俺はうぅ」
「お、お兄ちゃん」
成程、あの時知らせに来た勇敢なオーク戦士はこの兄妹の親父殿だったのか。
なら、同じ臆病者だった俺にしかかけられない言葉がある。
「臆病で何が悪いんだ?生きているからこそお前は奴らに復讐する機会を得られた。どうだ俺の都市、いや今は都市なんて言えないちっぽけな村に来ないか。一緒に、タールマ帝国の奴らに一矢報いてやろうじゃないか」
「お、俺みたいな臆病者を勧誘してるのか?む、無理だ。悪魔に俺たちが勝てるわけない」
そうだな。
タールマ帝国の奴らは悪魔だ。
俺たちが何をしたって言うんだ。
ひっそりと洞窟で暮らしていただけなのにある日日常をぶち壊された。
だが。
「臆病は、立派な個性だ。臆病でないものは、兵を無惨に殺す。臆病な奴ほど、慎重にどうやったら仲間も含めて、生き残れるかを考える。だからこそ俺は、お前たちを村に迎え入れたい。どうだ俺と共にオークが安心に暮らせる国を作らないか?」
「俺たちが安心に暮らせる国。そんなことが可能なのか?」
「あぁ。俺を信じろ。後悔はさせない。そして、いつの日か仲間たちを無惨に殺したタールマ帝国の奴らに目にもの見せてやろう」
「お兄ちゃん、私アイツらのこと許せない。母ちゃんも姉ちゃんも大事な弟たちも容赦なく殺した。復讐したい。領主様の息子について行きたい」
「ほ、本気なんだな。わかった。妹を1人にできないし、俺も腹を括るよ。領主様、俺たちを貴方様の村の一員に加えてくれ!」
「勿論だ。この洞窟村出身として、これからはネイバー家を名乗るが良い」
「ネイバー家?」
「あぁ、この洞窟に住んでいた皆の想いを継ぐ家名のようなものだ。で、名前はどうする?おい、お前と呼びたくはないのでな。どう呼ばれたい?」
「なら、俺は。カウワードが良い。臆病者の俺にピッタリな名前だろ?」
「私は、プリティが良い。か、可愛いから」
「良し。カウワードにプリティだな。これからよろしく頼む」
「「こ、こちらこそ」」
この後もネイバー家の2頭を連れて、ここに住んでいたオークたちの魂を少しでも安らかにするために共同墓地へと埋めると洞窟を回った。
その結果、合計でオーク男子9頭とオーク女子9頭の生き残りを見つけることに成功し、俺の村へと連れて帰るのだった。
「合点承知よグリムバッシュお兄様!」
「おぅ、任せとけ!って、まだそんな遠くに行くわけじゃねぇだろ兄貴?」
「まぁな。暫くは近場の洞窟に生き残りが居ないか見回ってみるつもりだ」
「なら、そんなに心配することもねぇだろ。事実、カログも姉貴も見送りにきてねぇんだからよ」
「だな」
俺は、見送りに来てくれたナユルとズゴッグと言葉を交わして、外に出た。
俺の手には、オークの相棒である棍棒を握っている。
先ずは、俺たちの洞窟に知らせに来てくれてオーク戦士が居た隣洞窟村の方を訪ねてみることにしよう。
「うっ。やはりこの異臭には慣れんな」
タールマ帝国の襲撃を受けた隣洞窟村の惨状も俺たちのところと大して変わらない。
変わるとしたら長らく死体を外に放置されていたからか異臭が酷いことと女子供も容赦なく打ち捨てられていることだ。
どうやら隣洞窟村は、非戦闘員も戦に繰り出して、総力戦に及んだようだ。
こんな中、生き残りが居るとはとても思えない。
だが、こんな状況でも確認せねば。
隣洞窟村の規模は、俺たちのところよりもかなり小さい。
それもそうだ。
父はこの辺りの洞窟を束ねる領主のようなものであった。
だから、ここは隣洞窟村なのだ。
俺たちのところの動員兵力が千に対して、この村の動員兵力は百ぐらいなのだ。
この他にも動員兵力が10の小さい村もある。
それらを支援する形で自治を認めて、庇護していたのが父なのだ。
この様子だと逃げようとしたものですら容赦なく背を突かれている。
こんなことをしておいて、タールマ帝国は自らの国のことを武士道精神の溢れる国などとよく言えたものだと思う。
中も酷い有様だ。
オークの焦げ跡や壁に槍ごと貫かれたオークの遺体。
それらもこの数ヶ月で、強烈な腐敗臭を発していた。
これでは、生き残りなどいまい。
俺が帰ろうとしたその時。
カツンとまるで石か何かが壁に当たる音が聞こえた。
その後。
「お、おい。何やってんだよ気付かれちまうだろ」
「ご、ごめんなさい」
「そこに誰か居るのか?」
俺は安心させるようにオーク語で話しかけた。
「な、なんだよ同族かよ。ビビって損したぜ。にしてもこんなところによく来たな。ここが人口五百頭の村だったなんて信じられるか?」
「あぁ。人口五百頭、常備兵百頭の立派な村だった。ここの勇敢なオーク戦士が俺たちの村に命をかけて敵襲を知らせに来てくれたがその甲斐も無く、俺の村も滅んだ。人口五千頭、常備兵千頭の都市がたった一夜でな」
「まさか、アンタ領主様、なのか?」
「いや、父は勇敢に戦ってその命を散らした。生き残ったのは、俺を含めてたったの五頭だ」
「そ、そうか。親父は立派に務めを果たしたんだな。でも、それでも生き残ったのはたった五頭か。ハハッやっぱりあんな計画到底無理だった。都市が一夜で滅ぶ相手に、仲間たちが外に非戦闘員を逃すなんて。俺は怖くて怖くて妹と2人隠れてることしかできなかった。とても逃げ切れるなんて思えなかった。臆病者だと笑ってくれ。父は、傷を負っても領主様の村に敵襲を知らせたのに。俺はうぅ」
「お、お兄ちゃん」
成程、あの時知らせに来た勇敢なオーク戦士はこの兄妹の親父殿だったのか。
なら、同じ臆病者だった俺にしかかけられない言葉がある。
「臆病で何が悪いんだ?生きているからこそお前は奴らに復讐する機会を得られた。どうだ俺の都市、いや今は都市なんて言えないちっぽけな村に来ないか。一緒に、タールマ帝国の奴らに一矢報いてやろうじゃないか」
「お、俺みたいな臆病者を勧誘してるのか?む、無理だ。悪魔に俺たちが勝てるわけない」
そうだな。
タールマ帝国の奴らは悪魔だ。
俺たちが何をしたって言うんだ。
ひっそりと洞窟で暮らしていただけなのにある日日常をぶち壊された。
だが。
「臆病は、立派な個性だ。臆病でないものは、兵を無惨に殺す。臆病な奴ほど、慎重にどうやったら仲間も含めて、生き残れるかを考える。だからこそ俺は、お前たちを村に迎え入れたい。どうだ俺と共にオークが安心に暮らせる国を作らないか?」
「俺たちが安心に暮らせる国。そんなことが可能なのか?」
「あぁ。俺を信じろ。後悔はさせない。そして、いつの日か仲間たちを無惨に殺したタールマ帝国の奴らに目にもの見せてやろう」
「お兄ちゃん、私アイツらのこと許せない。母ちゃんも姉ちゃんも大事な弟たちも容赦なく殺した。復讐したい。領主様の息子について行きたい」
「ほ、本気なんだな。わかった。妹を1人にできないし、俺も腹を括るよ。領主様、俺たちを貴方様の村の一員に加えてくれ!」
「勿論だ。この洞窟村出身として、これからはネイバー家を名乗るが良い」
「ネイバー家?」
「あぁ、この洞窟に住んでいた皆の想いを継ぐ家名のようなものだ。で、名前はどうする?おい、お前と呼びたくはないのでな。どう呼ばれたい?」
「なら、俺は。カウワードが良い。臆病者の俺にピッタリな名前だろ?」
「私は、プリティが良い。か、可愛いから」
「良し。カウワードにプリティだな。これからよろしく頼む」
「「こ、こちらこそ」」
この後もネイバー家の2頭を連れて、ここに住んでいたオークたちの魂を少しでも安らかにするために共同墓地へと埋めると洞窟を回った。
その結果、合計でオーク男子9頭とオーク女子9頭の生き残りを見つけることに成功し、俺の村へと連れて帰るのだった。
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