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母に感じるモヤモヤ
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公爵家で数日を過ごすつもりだったジュリエッタは、翌日には侯爵邸に戻ることにした。ホームシックが癒えれば、今度は、侯爵とダニーに会いたくてたまらない。そして、半年も留守にしてきた侯爵邸のことが女主として気になってしようがなくなった。
公爵夫人は不服そうな顔を向けてきたものの、ジュリエッタを引き留めることはなかった。どのみち、王都ではスープの冷めない距離にいる。
「お母さま、そう言えば、ヌワカロール伯爵さまの補佐官にはお会いになられましたか?」
「ええ、いらしたわよ」
「今はどこに?」
「領地にやったわ」
母親のあまり関心がなさげな顔つきにジュリエッタは少々肩透かしを食らう。
昨日は何度も『ヌワカロール農法』のすばらしさを伝えては、夫人もいちいち「すごいわね!」と相槌を打っていたにもかかわらず、その反応は薄い。
マリーが飛びついたこととは対照的だった。
「『ヌワカロール農法』で、農家の暮らしはきっとよくなります」
「ええ、そうね」
暖簾に腕押しな感触だ。
(実際、見てみないとわかりにくいわよね。そのうち、私も公爵領に出向いてみようかしら)
レオナルダ領は王都から半日もあれば行ける。
去り際、夫人が言ってきた。
「侯爵さまがバルベリ土産を荷馬車に三台も送ってくれたの。でも、もう気を遣わないでと言っておいてね」
ジュリエッタの知らないところで、侯爵は気配りをしてくれていたらしい。
エントランスホールを出たところで鞍のついた馬を馬丁が連れてきたのを見て、夫人は目を丸くした。
「まあ! 馬なの? 馬車で帰りなさい! 馬車で! 一人で馬を乗り回すなんてはしたない!」
「一人ではないわ。ハンナも騎士たちもいるわ」
「レディが侍女や騎士を連れ歩くのは当然のこと。彼らを人数に入れるわけないでしょう。乗馬を楽しむのなら、紳士と一緒にいるときだけにしなさい」
「紳士って、侯爵さまのこと?」
「それに、父親や兄です。あなたはレディとして、特別な存在です。決して気安い存在になってはなりません。そうやすやすと一人で出歩く姿を見せてもいいわけではありませんよ」
ジュリエッタはどこか納得のいかないものを感じたが、母親に従い、手綱を馬丁に渡した。
「はい、そうします」
幼い頃から、ジュリエッタにとって、自分が特別な存在であるのは当然のことだった。周囲にかしずかれ、また、かしずきたくなる存在となるように育てられた。
(お母さまは当たり前のことを言っているだけ。なのになんでモヤモヤするのかしら)
「では、馬は届けてくださいな。侯爵さまに頂いた大切な馬なの」
夫人は溜息をついた。
「まあ、侯爵が。ああもう、これだから元平民は……」
ジュリエッタは母親の物言いに唖然となるも、言い返す言葉も浮かばず、そのままレオナルダ邸を馬車で出た。
***
馬車の中でジュリエッタは眉根を寄せていた。
(大好きなお母さまなのにイライラしちゃうわ。どうして、お母さまはあんな物言いをするのかしら。元平民だなんて)
それは半年前までのジュリエッタの物言いとそっくり同じだったし、それを自覚もしていたが、そのときのジュリエッタは自分のことを棚上げして苛立ちを感じていた。
(あんなにお母さまとは気が合っていたのに、今回は、何かとイラッとするわ。口うるさく感じることも多かったし。もしかして、遅れてやってきたやってきた反抗期かしら)
「ねえ、リタもハンナにはあんなに小うるさいの?」
リタはハンナの母親で、ジュリエッタの乳母だ。
「母親というものは要らぬ心配ばかりするものですわ」
「じゃあ、やっぱり、私は反抗期なのね。何だか、お母さまにイライラしちゃうの。そうね、ハンナも帰省してきなさい。ハンナもイライラするといいわ」
翌日、ハンナを土産の詰まった荷物とともに帰らせた。まさか本当にイライラさせようとしたのではなく、骨休みをしてくるといい、そう思ってのことだ。しかし、ハンナも翌々日には帰ってきた。
「せっかく帰省させてくださったのに、私にとって居心地が良いのは姫さまのおそばだということがよくわかりましたわ」
(母親って会えないうちは会いたいけど、会ったら一日で懲りてしまうものなのかもね)
そう納得したジュリエッタだった。
***
その日、侯爵邸のサロンでは色とりどりの生地が広げられていた。姿見の前に立つ侯爵に、ああでもない、こうでもない、と色とりどりの生地を合わせているのはジュリエッタ。
戦勝記念式典の衣装合わせだ。ここは出番とばかりにジュリエッタは張り切っている。
「金色の金糸《ラメ》入りヒョウ柄と、白地に真っ赤なバラ柄、どちらがいいかしら。どちらも侯爵さまの黒目黒髪を引き立てるから迷っちゃうわ」
「姫さま、半身をヒョウ柄、半身をバラ柄にするのはいかがでしょう」
「さすがハンナね、それがいいわ! 背中にピーコックの羽を背負わせたら、主役間違いなしだわ!」
ジュリエッタとハンナが盛り上がる前で、侯爵は目をしばつかせている。
(確かに俺は主役だが、主役だけれども……。え、主役ってピエロって意味だっけ?)
ヤンスは笑いをこらえており、ジミーは目をらんらんと輝かせている。
「ジュリエッタさま! ハンナさま! 見世物小屋で見た魔王みたいで格好いいです!」
「ぶほっ、見世物小屋……っ」
ヤンスがついに吹き出した。侯爵が遠慮がちに言う。
「ジュリエッタ、気持ちは嬉しいが、俺の正装は軍服だから遠慮するよ」
「あら、遠慮は無用よ。では、この生地を軍服に仕立ててもらいましょう。侯爵さまの分だけではなく、騎士さま、全員お揃いの軍服にしましょう」
ヤンスからは「んぐ?!」と喉の詰まったような声が聞こえ、ジミーからは「わあ、うらやましいなあ」との声が聞こえる。
「もちろん、騎士見習の分も用意するわ」
「うわあ、ありがとうございます!」
ジミーが喜ぶ一方で、侯爵とヤンスからは、滝のような汗が噴きこぼれていた。
ハンナがジュリエッタに耳打ちする。
「姫さまってば、ド派手衣装で、侯爵さまの美男子ぶりを削ぐ計画ですわね? 令嬢を避けるために」
ジュリエッタはぎくりとする。
「何のことかしら、私は誠心誠意、侯爵さまを思って選んでいるのよ」
「侯爵さまは姫さま一筋、私は何の心配もしておりませんが、侯爵さまが姫さまの可愛らしい嫉妬を知ったら、さぞかし喜びましょう」
ジュリエッタも派手な衣装が良いとは思っていない。ジュリエッタは悪あがきをしていた。
(令嬢避けというより、シャルロット避けよ)
侯爵がシャルロットを好きになってしまえば身を引く覚悟のジュリエッタだが、少しでもあがいておきたかった。
(それにこれは嫉妬ではないわ。情が湧いているだけ)
***
数日後、仕立て屋のお針子総動員で軍服が仕上がった。
着替え終わったバルベリ騎士らに、ジュリエッタもハンナも息を飲む。
(何てゴージャス……!)
そこには絢爛豪華に仕上がった騎士たちがいた。
仕立て屋は、ヒョウ柄をロングコートに、バラ柄をトラウザーズに仕立てていた。薔薇柄はコートと軍靴に隠れて見えない。
(半身違いでってお願いしたのに、聞き間違えたのかしら)
難しい顔をするジュリエッタの横でハンナが感嘆の声を上げる。
「まあ! 派手やかなのに凛々しい騎士たちですわ!」
侯爵からはドン引きどころか、ヒョウ柄の野性味も相まって、匂い立つような色香が立ち上がっている。
(これではシャルロットだけじゃなく、全令嬢を引き寄せてしまうじゃないの……!)
動けばチラ見えするバラ柄のトラウザーズも何故かおしゃれに見える。
(とんだところに天才デザイナーが潜伏していたのね……!)
天を仰ぐジュリエッタ。
(そうだわ、まだピーコックがあるわ!)
極彩色の羽が、すべてをぶち壊すことに賭けて、ジュリエッタは羽を手に取った。
「ふっふっふっふ……」
ジュリエッタの良からぬ笑みに、侯爵にヤンスらは寒気を感じて、ぶるっと震える。
そのとき、ジュリエッタの手から羽をするッと引き抜いた者がいた。
「さすがジュリエッタさま、こんなものまで用意なさって。ジュリエッタさまの感性は、本当に素晴らしいですわ」
ジュリエッタの手から抜き取られた羽は、天才デザイナーの手で、軍帽の正面に留められた。
一段と凛々しく煌びやかに彩られるバルベリ騎士たちだった。ハンナはうっとりとため息をつき、ジュリエッタはぎりぎりと奥歯を噛んだ。
公爵夫人は不服そうな顔を向けてきたものの、ジュリエッタを引き留めることはなかった。どのみち、王都ではスープの冷めない距離にいる。
「お母さま、そう言えば、ヌワカロール伯爵さまの補佐官にはお会いになられましたか?」
「ええ、いらしたわよ」
「今はどこに?」
「領地にやったわ」
母親のあまり関心がなさげな顔つきにジュリエッタは少々肩透かしを食らう。
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マリーが飛びついたこととは対照的だった。
「『ヌワカロール農法』で、農家の暮らしはきっとよくなります」
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暖簾に腕押しな感触だ。
(実際、見てみないとわかりにくいわよね。そのうち、私も公爵領に出向いてみようかしら)
レオナルダ領は王都から半日もあれば行ける。
去り際、夫人が言ってきた。
「侯爵さまがバルベリ土産を荷馬車に三台も送ってくれたの。でも、もう気を遣わないでと言っておいてね」
ジュリエッタの知らないところで、侯爵は気配りをしてくれていたらしい。
エントランスホールを出たところで鞍のついた馬を馬丁が連れてきたのを見て、夫人は目を丸くした。
「まあ! 馬なの? 馬車で帰りなさい! 馬車で! 一人で馬を乗り回すなんてはしたない!」
「一人ではないわ。ハンナも騎士たちもいるわ」
「レディが侍女や騎士を連れ歩くのは当然のこと。彼らを人数に入れるわけないでしょう。乗馬を楽しむのなら、紳士と一緒にいるときだけにしなさい」
「紳士って、侯爵さまのこと?」
「それに、父親や兄です。あなたはレディとして、特別な存在です。決して気安い存在になってはなりません。そうやすやすと一人で出歩く姿を見せてもいいわけではありませんよ」
ジュリエッタはどこか納得のいかないものを感じたが、母親に従い、手綱を馬丁に渡した。
「はい、そうします」
幼い頃から、ジュリエッタにとって、自分が特別な存在であるのは当然のことだった。周囲にかしずかれ、また、かしずきたくなる存在となるように育てられた。
(お母さまは当たり前のことを言っているだけ。なのになんでモヤモヤするのかしら)
「では、馬は届けてくださいな。侯爵さまに頂いた大切な馬なの」
夫人は溜息をついた。
「まあ、侯爵が。ああもう、これだから元平民は……」
ジュリエッタは母親の物言いに唖然となるも、言い返す言葉も浮かばず、そのままレオナルダ邸を馬車で出た。
***
馬車の中でジュリエッタは眉根を寄せていた。
(大好きなお母さまなのにイライラしちゃうわ。どうして、お母さまはあんな物言いをするのかしら。元平民だなんて)
それは半年前までのジュリエッタの物言いとそっくり同じだったし、それを自覚もしていたが、そのときのジュリエッタは自分のことを棚上げして苛立ちを感じていた。
(あんなにお母さまとは気が合っていたのに、今回は、何かとイラッとするわ。口うるさく感じることも多かったし。もしかして、遅れてやってきたやってきた反抗期かしら)
「ねえ、リタもハンナにはあんなに小うるさいの?」
リタはハンナの母親で、ジュリエッタの乳母だ。
「母親というものは要らぬ心配ばかりするものですわ」
「じゃあ、やっぱり、私は反抗期なのね。何だか、お母さまにイライラしちゃうの。そうね、ハンナも帰省してきなさい。ハンナもイライラするといいわ」
翌日、ハンナを土産の詰まった荷物とともに帰らせた。まさか本当にイライラさせようとしたのではなく、骨休みをしてくるといい、そう思ってのことだ。しかし、ハンナも翌々日には帰ってきた。
「せっかく帰省させてくださったのに、私にとって居心地が良いのは姫さまのおそばだということがよくわかりましたわ」
(母親って会えないうちは会いたいけど、会ったら一日で懲りてしまうものなのかもね)
そう納得したジュリエッタだった。
***
その日、侯爵邸のサロンでは色とりどりの生地が広げられていた。姿見の前に立つ侯爵に、ああでもない、こうでもない、と色とりどりの生地を合わせているのはジュリエッタ。
戦勝記念式典の衣装合わせだ。ここは出番とばかりにジュリエッタは張り切っている。
「金色の金糸《ラメ》入りヒョウ柄と、白地に真っ赤なバラ柄、どちらがいいかしら。どちらも侯爵さまの黒目黒髪を引き立てるから迷っちゃうわ」
「姫さま、半身をヒョウ柄、半身をバラ柄にするのはいかがでしょう」
「さすがハンナね、それがいいわ! 背中にピーコックの羽を背負わせたら、主役間違いなしだわ!」
ジュリエッタとハンナが盛り上がる前で、侯爵は目をしばつかせている。
(確かに俺は主役だが、主役だけれども……。え、主役ってピエロって意味だっけ?)
ヤンスは笑いをこらえており、ジミーは目をらんらんと輝かせている。
「ジュリエッタさま! ハンナさま! 見世物小屋で見た魔王みたいで格好いいです!」
「ぶほっ、見世物小屋……っ」
ヤンスがついに吹き出した。侯爵が遠慮がちに言う。
「ジュリエッタ、気持ちは嬉しいが、俺の正装は軍服だから遠慮するよ」
「あら、遠慮は無用よ。では、この生地を軍服に仕立ててもらいましょう。侯爵さまの分だけではなく、騎士さま、全員お揃いの軍服にしましょう」
ヤンスからは「んぐ?!」と喉の詰まったような声が聞こえ、ジミーからは「わあ、うらやましいなあ」との声が聞こえる。
「もちろん、騎士見習の分も用意するわ」
「うわあ、ありがとうございます!」
ジミーが喜ぶ一方で、侯爵とヤンスからは、滝のような汗が噴きこぼれていた。
ハンナがジュリエッタに耳打ちする。
「姫さまってば、ド派手衣装で、侯爵さまの美男子ぶりを削ぐ計画ですわね? 令嬢を避けるために」
ジュリエッタはぎくりとする。
「何のことかしら、私は誠心誠意、侯爵さまを思って選んでいるのよ」
「侯爵さまは姫さま一筋、私は何の心配もしておりませんが、侯爵さまが姫さまの可愛らしい嫉妬を知ったら、さぞかし喜びましょう」
ジュリエッタも派手な衣装が良いとは思っていない。ジュリエッタは悪あがきをしていた。
(令嬢避けというより、シャルロット避けよ)
侯爵がシャルロットを好きになってしまえば身を引く覚悟のジュリエッタだが、少しでもあがいておきたかった。
(それにこれは嫉妬ではないわ。情が湧いているだけ)
***
数日後、仕立て屋のお針子総動員で軍服が仕上がった。
着替え終わったバルベリ騎士らに、ジュリエッタもハンナも息を飲む。
(何てゴージャス……!)
そこには絢爛豪華に仕上がった騎士たちがいた。
仕立て屋は、ヒョウ柄をロングコートに、バラ柄をトラウザーズに仕立てていた。薔薇柄はコートと軍靴に隠れて見えない。
(半身違いでってお願いしたのに、聞き間違えたのかしら)
難しい顔をするジュリエッタの横でハンナが感嘆の声を上げる。
「まあ! 派手やかなのに凛々しい騎士たちですわ!」
侯爵からはドン引きどころか、ヒョウ柄の野性味も相まって、匂い立つような色香が立ち上がっている。
(これではシャルロットだけじゃなく、全令嬢を引き寄せてしまうじゃないの……!)
動けばチラ見えするバラ柄のトラウザーズも何故かおしゃれに見える。
(とんだところに天才デザイナーが潜伏していたのね……!)
天を仰ぐジュリエッタ。
(そうだわ、まだピーコックがあるわ!)
極彩色の羽が、すべてをぶち壊すことに賭けて、ジュリエッタは羽を手に取った。
「ふっふっふっふ……」
ジュリエッタの良からぬ笑みに、侯爵にヤンスらは寒気を感じて、ぶるっと震える。
そのとき、ジュリエッタの手から羽をするッと引き抜いた者がいた。
「さすがジュリエッタさま、こんなものまで用意なさって。ジュリエッタさまの感性は、本当に素晴らしいですわ」
ジュリエッタの手から抜き取られた羽は、天才デザイナーの手で、軍帽の正面に留められた。
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