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古い傷痕

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「……」
カイル王子はホッとした顔を見せた後、僕の手を見て眉間にシワを寄せた顔で僕の手を触っていた。
「……何度も聞いて悪いけど、本当に怪我はしていないのか?」
「……はい…」
「……でも、この両腕と手の傷はあの時俺を受け止めて出来た傷じゃないのか?」
「え…」
長袖の隙間から見える腕の傷と手の傷にカイル王子が気付いたようで、手には複数の傷痕にまだ薄く残っている青い痣は隠せない…
「…あ…これは、幼い頃に出来た古傷ですから大丈夫です」
「……古傷にしては新しいような気がするけど…それに、小さな複数の傷はまるで刃物で斬った傷みたいな……」
「え……あっ、ぼ、僕も覚えていないので……あのカイル王子、手を……」
「あっ、ごめん…」
カイル王子は僕の手を放し、僕はチラッと自分の手を見た。
(……何度も木刀で叩かれ、木刀でついた傷が刃物のような傷痕になっていたんだ……)
「ロイ君、テーブルの椅子に座って暮れないか?」
「椅子にですか?」
僕は、側にある椅子に座りカイル王子が「持って来て」といつの間にか後ろにいたメイドに声を掛けて、メイドは箱をテーブルの上に置き、カチャッと箱を開けると髪の毛を整えるクシを取り出していた。
「君はしなくて良いよ、俺がするから貸して」
「あ、はい、カイル様」
「……あの…何を……」
僕が座っている椅子の後ろに回ったカイル王子は、僕の後ろ髪を整え始めたから僕は驚いて後ろを振り向こうとしたら「動くな!」と言われ、僕はまさかカイル王子が髪の毛を整えてくれるとは思わなかった。






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