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俺は今誰か側に居てくれる人が欲しかった。
勇樹でもなく、ユリウス父さんでもなく、ただ……この分からない胸の苦しみから解放してくれる人が欲しかった……。
赤ん坊の俺はルカリオ兄の腕の中で、胸に顔を埋めグリグリと頭を擦り付け喜びを表現して上げた。
「アハハハ、カイくすぐったいよ~っ」
ルカリオ兄は笑いながらダメだよ~っと言っているようで、俺の小さな頭に顔を寄せスリスリと動かしていた。
俺達兄弟の様子を見ていた年配のメイドが話し出していた。
「ご兄弟仲が良い事は喜ばしい事ですわね。旦那様に奥様。」
「ええ、私も驚いたわカイちゃんから抱っこをお願いするなんてねぇ、旦那様!」
「……」
「旦那様?どうしましたの?」
「え…ああ、何でもないよユリーナ。…そうだね…羨ましいくらいだよ……」
ユリウス父さんはルカリオ兄が俺を抱っこしている姿をジッ…と見ている視線を感じたが、今の俺は小さな兄の腕の中でいる事の幸せを感じていた。
コンコン、と、扉を叩く音が聞こえ扉が開いたと同時にヒョイっと小さな顔が覗き込んでいた。姉のリンが入って来た。
「母様お早う御座います…あ~っ!ルーお兄ちゃまズル~いカイちゃん抱っこしてる~っ、リンも抱っこする!」
「ハハハ、リンはまだ無理だよ」
ルカリオ兄は笑いながら少しキュッと俺を抱っこしている手に力が入っていたように思えた。
リン姉は私も~とルカリオ兄に両手を広げて困らせていた時俺はリン姉の手に俺の小さな手をやり「ねぇ…ねぇ…」と話し掛けてやると、リン姉の目が大きくビックリ目になり俺の赤ん坊の顔を見て満面の笑顔になった。
「カイちゃんがリンのお名前呼んだよ~~~っ!!」
リン姉は部屋の中をピョンピョンと跳ね凄く喜んでくれた。
「母様、父様、カイちゃんがリンのお名前呼んだよ~っ」
リン姉はユリウス父さんとユリーナ母さんの元へ走り喜んで話していた。
「良かったわね、リンちゃん母様はまだカイちゃんから呼んで貰った事無いのよ~っ、カイちゃん母様達に怒っているみたいで…」
「え?何でカイちゃんが怒っているの?」
「母様も分からないのよ…ねぇ、旦那様」
「……え、ああ、そうだね……」
ユリーナ母さんにあやふやな返事を返したユリウス父さんは、俺の方をジッと見ているようでユリーナ母さんがまた聞いてきた。
「旦那様、先ほどからおかしいですわよ?カイちゃんから無視された事が気に成りますの?」
ユリウス父さんはユリーナ母さんの声が聞こえ無いのか、俺とルカリオ兄の楽しそうな姿を見てただ、黙って立っているだけだっ
た。







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