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「カイト坊っちゃま、先ほど厨房を借りますと御聞きしましたが
どなたかの御料理を御作りに成るので御座いますか?」
料理長がまた俺が何かを作ると聞き興味津々に俺の顔を見ていた
「カイト坊っちゃまも旦那様と同じ様に珍しい食べ物を御存知でいらっしゃいますので旦那様がもう一人いらっしゃいますように思えます」
「ハハハでも僕は作る方だから父様は食べる方だったでしょう?」
「確かにそうで御座いますね」
俺と料理長は笑い俺は食材を尋ねた。
「料理長さんお米は有りますか?後調味料と食材を見せて貰いたいのですが…」
「お米で御座いますか?御座いますが夕食にはお米は炊いては御座いませんが…」
「今から炊いても良いですか?夕食にはもう一人父様の分を僕が作ってあげたいと思ったのです。」
「カイト坊っちゃまが旦那様の御食事をですか?!」
「はい、父様が大好きだった食べ物を今から作りたいのです」
俺は隣に居るユリウスにニコッと笑った後食材と調味料を見せて貰った。
調味料はこの国の文字が書いてある為俺はまだ字が読めない為テーブルに並べられた瓶類に困っていた。
「…快斗文字が読めないのか?この国の言葉が話せるのに文字が読めないとは神様も気が利かないな……」
俺は小さな声で隣に居るユリウスに話しをした。
「死にかけた事と怒りが重なった事で話せたんだ、言葉が話せるだけでも感謝している」
ユリウスは俺が死にかけたと言った事で沈んだ表情を見せていた
「あの時は済まなかった快斗何度謝っても許される事では無い…大事な息子を死の淵に追いやってしまったのだから……」
「もう過ぎた事だ、大変な出来事だったが今は快斗の姿で居る事も出来る…それにユリウス……」
俺がユリウスに話し掛けている途中で料理長が俺が独り言を言っている事に気付き俺に話し掛けていた。
「カイト坊っちゃま?どうかなさいましたか?」
「えっ…ああっ…字が読めなくて…1人で声を出していたんですね」
俺は何もなかった様なふりをして誤魔化していた。
「あ…そうなのですね、カイト坊っちゃまは本来は3歳の御子様でした。黒髪の大人のカイト坊っちゃまに見馴れて居ました」
料理長は俺に話しをした後調味料の文字を教えてもらいどんな味がするのかも教えてもらった。俺は調味料でユリウスに出せる食事が決まり食材を見ることにした。
野菜を見ると生前と変わらない見覚えのある野菜が多く俺は驚きと嬉しさで野菜を手に取り喜んだ。
「そう言えばこの前じゃがいもでポテチを作ったな…」
「えっ、快斗ポテチを作ったのか?何故私に食べさせてくれなかったのだ」
「いや…お前が屋敷を出た後にショーン兄に作ったんだ甘い物が苦手だと言っていたからな…」
「……快斗は私が屋敷を出た後、子供達の父親代わりをしてくれて居たんだね」
「食べたいんなら作るけど、ここにじゃがいもがあるから」
「良いのかい!?作って貰っても…」
「ああっ、もし向こうで父さんと母さんに会って『兄ちゃんがポテチ作ってくんなかった!』と言われたら嫌だし、俺がそっちへ逝った時に愚痴言われそうで嫌だからな」
『俺、食べ物で愚痴何か言わないと思うけど?』
『いや、何回か俺が作った食べ物に愚痴言われた気がした。父さんの所にやったコロッケが自分より大きいと言われた気がした。』
『……気のせいだよ兄ちゃん』
『いや、気のせいでは無い、その後お前が煩かったから俺のを1つお前にやった記憶がある』
『ハハハ…そうだったかな~っ?!』
俺とユリウスはいつの間にか会話が日本語と替わり懐かしい日々を思い出していた。
離れで俺の様子を見ていた料理長と料理人達が俺の事を心配そうに眺めていた。
「料理長、料理長…カイト坊っちゃまは大丈夫でしょうか?先ほどから野菜に話し掛けています。
旦那様が御亡くなりに成りカイト坊っちゃまを旦那様は可愛がっていましたから…」
「今は話し掛け無い様にしょう……」
俺が野菜に向かって話しをしている様子を見ていた料理長達は何故か涙を浮かべ頷き見守る姿を目にした様な気がした。





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