上 下
332 / 347

ユリウスとメイドのカレン

しおりを挟む
「御早う御座います旦那様」
「ああっ、御早ういつも綺麗に掃除してくれて有り難う」
「あ…いえ、わたくし達の仕事ですから……」
ブランシェ家のメイドとして働いているカレンは今日は庭の掃除をしていた朝からユリウスが外にいた為カレンは声を掛ける事が出来た。
(いつ見てもユリウス様は素敵よね…ユリーナ様が羨ましいわ……ユリウス様が学生の頃からユリーナ様と結婚して御子様までいた事にショックで一週間学校を休んだ事を覚えているわ、ルィーズも心配してくれていたわね)
カレンは学生時代の頃を思い出し、ロバート伯爵もユリウスと同級生だった事をロバート伯爵の母親から聞いていた事を思い出した。
カレンは庭の周りをはわき辺りを見回していた、離れにメイドが数名外の掃除をしているが、自分の周りにはユリウスと今は二人でいる事に気付き喜び声を掛けたいがユリウスの周りをぐるぐると掃除をするだけで中々声を掛ける事が出来ないでいた。
ユリウスは庭の花壇の側に置いている長椅子に座りノートに書き物をしていた。
カレンはユリウスの後ろから何かを書いているのだろうとノートを見ていたが、この国では使わない文字が沢山書かれていた為カレンはユリウスが他の国にも行った事が在るのだろうと思い、学生の頃から勉学も優れていたユリウスを思い出し自分が知らない文字を書いているユリウスにますます夢中に成っていた。
後ろに人の気配を感じ取っていたユリウスが後ろを振り向き突然後ろを振り向いたユリウスに驚き顔が真っ赤に成っていた。
「何か用かな?」
「えっ、あっ、申し訳御座いません旦那様……熱心に何かを書かれておりましたのでつい覗くような事をしてしまいました」
カレンはユリウスに頭を下げ謝りユリウスは「別に謝らなくても言い」と笑顔をカレンに見せ間近で笑顔を自分に向けているユリウスにドキドキと心臓の高鳴りが止まらなかった。
「あ…あの…旦那様珍しい文字を書かれていますがどこの国の文字で御座いますか?」
「ああっ……私が幼い頃に習った文字だよ…この国では使われない文字で私が好きな文字でもあるんだ……」
ユリウスが書いていた文字は日本の漢字にひらがな、カタカナをノートに書いていたのだ、前世の記憶を忘れないように今は一人でいる寂しさでノートに日本語の文字を書いていた。
この国で生まれ運命であるユリーナと出会い子供が生まれたがまだ自分の元へ現れてはくれない事に本当に自分の元へ来てくれるのだろうかと不安と心配と心細さで気をまぎらわせる為にノートに書き続けていた。
ユリウスは後ろで立って話しをしているカレンに「隣に座らないか?」と言った後カレンは驚き顔を真っ赤にして「本当に座っても良いのですか?」と言った後ユリウスが座っている長椅子に隣で座る喜びでユリウスの横顔をうっとりとした目で見つめていた。
「あの、伺っても宜しいですか?旦那様…ノートには書かれています文字はどんな事を書かれているのですか?」
「恋文だよ」
「えっ!?……奥様にですか?」
「ハハハ、ユリーナでは無いよ昔一緒に遊んでくれた「兄」のような方が居てね今は会える事が出来なくてこうやってノートに感謝の文字を書いて居るんだこの文字も彼から習った事でもあるんだ」
ユリウスはノートに書いている前世の兄快斗に早く会いたいと何度も同じ事を書き写していた。
いとおしそうな顔でノートに手を当てて見ているユリウスを見たカレンは余程その「兄」と呼ばれていた人が好きだったのだとカレンはユリウスの横顔を見続けていた。
「あの……旦那様…わたくし旦那様の事が……」
カレンは顔を下に向き頬を赤く染めユリウスに気持ちを打ち明けていた。
ユリウスはカレンが何が言いたいのか分かり申し訳ないと言った顔でカレンに声を掛けた。
「……済まない君達メイドを独りの女性と見てあげる事が出来ない…私は結婚もして子供達もいる身だ……後妻も考えては居ないんだ」
真面目とこの時は言われていたユリウスの事はカレンも知ってはいたが断られる事を知りながら今の自分の気持ちをユリウスに打ち明けたかった。
「……分かっております旦那様…奥様を大切にしております事を…」
「旦那様!何をしているのですか?」
後ろから声を高々と出しているユリーナ母さんが少し離れた場所に立ちユリウスとカレンが一緒に長椅子に座る姿を見て嫌な顔を見せて歩いて来た。
「お、奥様!」
カレンは慌てて立ち上がり頭を下げユリウスから離れた。
「やぁ、ユリーナ子供達は起きたのかい?」
「朝食の御時間だと言うのにメイドと一緒に何をされていたのですか?」
ユリーナ母さんは長椅子の側で頭を下げているカレンを見てユリウスに訪ねていた。
「何もしていないよユリーナ、私のノートを彼女に見せていただけだよ…それに私が隣に座るように言っただけで彼女に嫌な顔を見せないでくれユリーナ」
ユリーナ母さんも時々ノートを書いているユリウスを知っていた
ユリーナ母さんはユリウスが隣に座るように空いている隣を手で叩き誘っていた。
「……私は嫌な顔等しておりませんわ」
ユリーナ母さんは長椅子に座るユリウスに口付けを交わし自分も隣に座り出し、カレンはさっきまで自分がユリウスの隣に座っていたのに…と、メイドである自分はユリウスの側にも居ることが出来ない悔しさを感じていた。








しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

アルンの日々の占いや駄文【5】

エッセイ・ノンフィクション / 連載中 24h.ポイント:271pt お気に入り:5

もどかし遊戯

BL / 連載中 24h.ポイント:142pt お気に入り:2

パスコリの庭

BL / 完結 24h.ポイント:127pt お気に入り:27

妖精のいたずら

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,577pt お気に入り:393

憂鬱喫茶

ホラー / 完結 24h.ポイント:468pt お気に入り:0

恋愛の醍醐味

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:2

 異世界転生した飼育員はワニチートでスローライフを送りたい

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:56pt お気に入り:200

処理中です...