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婚約者で良かった?

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「ハハハハ」
「ホホホホ」
両家の笑う声が部屋の周りを響き渡る話し声が聞こえていた。
「フランシスの婚約者になったんだよ」と言われたフォスティヌだが、まだ信じられないと素直に受け入れる事が出来ずにいた。
「…少し外へ行こうか?」
「えっ?…うん…あっ、は、はい…」
「クスッ、いつもどおりで良いよ」
いつもの笑みを見せるフランシスにフォスティヌは戸惑っていた。
「……」
(いつもどおりで良いよと言われても…)
「…父さん、僕達は外へ行ってもいいかな?」
「ああっ、行って来ると良い」
「フォスティヌ、庭園を案内してはどうだ?」
「えっ、あ…はい…」
「あらっ、良いわね庭園。私達も行っても良いかしら?」
「先に、婚約者になりました若い二人が先ですわよ」
「ホホホ、そうでしたわね。早く行ってらっしゃい二人とも」
「……」
「……」
いつもと様子が違う二家族の両親にフランシスはため息を吐き、フォスティヌはぎこちない歩き方で二人は部屋を出て行った。
屋敷の外へ出たフォスティヌとフランシスは、いつも見馴れた庭がまるで違うように見えるフォスティヌは、自分の前を歩くフランシスが大きく見えていた。
「……兄様、また身長が伸びたの?あっ、兄様って言って…」
口を手で押さえるフォスティヌにフランシスは後ろを振り向きフォスティヌの頭を触り、フォスティヌは頬を赤く染めフランシスを見上げていた。
「二人でいる時は兄様で良いよ…ところで、フォスティヌは縮んだのかな?」
「ええーっ?これから伸びるんですけど」
「はははは、そうだね」
「!」
笑い声を出すフランシスにフォスティヌはフランシスに聞きたい事があった。
「……兄様」
「ん?」
「兄様は…私が婚約者で良いの?…」
ピクッとフォスティヌの頭を触る手が止まった。
(えっ、私…よけいな事を聞いてしまったの…?)
「……座ろうか?」
「えっ、う、うん…」
サクサクと前を歩くフランシスは近くにある丸いテーブルの椅子を引くとフォスティヌに手を差し伸べていた。
「フォスティヌ、椅子に座って」
「あ、ありがとう…兄様…」
(え…まるで王子様みたい…こんな風に優しくされたら…)
カタンと反対側の椅子に座るフランシスは会話を始めた。
「…急な話で驚いただろう?」
「う、うん…兄様は…知っていたの?婚約の話…」
「…時々、両親がフォスティヌの事を聞いていたからね」
「!?わ、私の事?どうして…」
顔が熱く火照るのがわかりフォスティヌは何故か血の気か引く感じだった。
「学園生活の話だから気にする事はないよ。それに、両親同士が昔から決めていた話でもあったから…フォスティヌは僕と婚約して良かったと思ったかな…」
「え……」
じっと見る金色の目が何かをフォスティヌに求めているような気がしたが、婚約破棄の事などフォスティヌには考えてもいなかった。


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