上 下
16 / 71

懐かしい散歩道

しおりを挟む
「ありがとうございます…今日は屋敷へ帰ります」
「え……」
「遠慮はいらないぞ」
「あ、いえ、稽古が続いていたので自分の屋敷で休みたいと思って…お誘いくださいましてありがとうございます」
フランシスはフォスティヌの両親に頭を下げ謝っていた。
「フォスティヌ…ごめん、今夜君とゆっくり過ごしたいと思っていたけど……」
「……お泊まりはダメでも…今日はずっといてくれるの?」
「えっ」
じっとフランシスを見るフォスティヌに少し戸惑うフランシスだったが昼間は一緒に過ごす約束をした。
「ああっ、一緒にいるよ」
「本当に、本当!?」
「…あ、ああっ、本当に本当…だよ」
グイッとフランシスの腕を掴み見上げるフォスティヌにフランシスは戸惑っていた。
「ゴホン!フォスティヌ、フランシスが困っている」
「えっ!?あ~っ!!ご、ごめんなさい兄様」
パッと慌てたようにフランシスの腕を掴んでいたフォスティヌは顔が真っ赤になっていた。
「婚約はしているが、行きすぎた真似はしないように」
「え?兄様の腕を触っただけなのに?」
「それでもダメだ!結婚をすれば幾らでも触ったら良い」
「え……」
(じゃあ…キスはもっと駄目だって事でお父様に知られたら…)
フォスティヌはチラッと横目でフランシスを見て、視線に気付いたフランシスは笑みを見せフォスティヌの父親に声をかけた。
「僕達は散歩に行っても良いですか?」
「ああ、そうだな行ってくると良い」
「昼食には戻りなさい」
「はい、フォスティヌ行こう」
「えっ、はい…」
フランシスはフォスティヌを連れ部屋を出ると外へと向かった。
「ふぅ、危なかった」
「え?何が?」
「フォスティヌがキスの事をおじさん達に話さないかドキドキしていたよ」
「!は…話せるわけないでしょう…」
慌てた声を出したフォスティヌにフランシスはクスッと笑みをみせ二人は散歩道を歩いていた。
「懐かしいな…小さい頃この道を君と一緒に歩いていたね」
「うん」
「フォスティヌ、髪の毛を伸ばしたんだね」
「えっ、うん…兄様が長い髪が好きだと言っていたから…まだ、首が隠れるくらいだから…」
「似合うよ」
「あっ、ありがとう兄様」
頬を染めるフォスティヌにフランシスは歩きながらじっと見ていた。
(今日、ここへ来る予定ではなかったけど…来て良かった。
シャロンの屋敷は今両親がいるから会いに行けなかったのもあるけど…まさか、おじさんから『泊まらないか?』と言われた時は驚いた…断ってしまったけど…もったいない事をしたかな)
「フォスティヌ、ごめん、泊まる事が出来なくて…」
「突然どうしたの?兄様」
歩く足を止めて謝るフランシスにフォスティヌも足を止めてフランシスを見上げていた。
「フォスティヌと一緒に過ごす事ができたんだけど…明日も早いから泊まるのを断ったんだ」
「ふふっ、謝る事なんてないのに兄様がお泊まりしてもお父様が『何時までに部屋に戻るように』ときっと言うと思うから、お話の途中で終わるのはイヤだもの、だから今のこの時間が兄様とお話ができてとても嬉しいの」
「フォスティヌ」
「兄様、甘いお菓子は好き?」
「ああっ、好きだよ」
「午後から私がお菓子を作ってあげる」
「お菓子が作れるのか?大丈夫かい?」
「もう、兄様そこは褒めるところでしょう」
「ハハハハ、ごめん、ごめん、フォスティヌのお菓子楽しみにしているよ」
「ふふふふ」
懐かしい散歩道はフォスティヌとフランシスの最後の散歩道になった。




しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

妹に婚約者を奪われた私ですが、王子の婚約者になりました

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:750

眼鏡の奥を覗かせて

BL / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:1

妄想日記7<<DAYDREAM>>

BL / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:38

ずっと君の傍にいたい 〜幼馴染み俳優の甘い檻〜

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:24

あなたならどう生きますか?両想いを確認した直後の「余命半年」宣告

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:49pt お気に入り:37

ノンケなのにAV男優に一目惚れしてしまった

BL / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:19

異世界で合法ロリ娼婦始めました。聖女スカウトはお断りします。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:220pt お気に入り:126

処理中です...