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通りすがりの騎士

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「シャロン、次に付ける時は首ではない所にしてくれ」
「あらっ、身体中に良いの?」
「か……はぁ…今夜は疲れたよ」
「沢山動いたんですもの、疲れるのは仕方ないわ」
「……シャロン…その話し方はちょっと…」
「わたくしは、本当の事を話しているのよ。とても良かったわ」
「!!」
笑顔を見せるシャロンにフランシスは照れくさそうに頬を指先でポリポリと触っていた。
「ねぇ、フラン。また傷が増えたのかしら?」
「傷?」
シャロンはフランシスの手を取り無数のかすり傷を触っていた。
「ああ、たいした傷ではないよ。皆が傷だらけだし、こんなのたいした事ないよ」
「……」
「シャロン?」
「わたくしが、騎士になってと言わなければ…あなたは教師を目指していたのに…いぇ、わたくしと出会う事がなければあなたは婚約者と……」
「シャロン!」
ハッとフランシスの声で顔を上げたシャロンはフランシスの手を擦っていた。
「……ごめんなさい、わたくし…」
「シャロン…騎士への道を選んだのは僕が決めた事なんだ。気にする事はないよ」
「フラン…」
「君のご両親に認めて貰う為ならなんでもするよ」
「…フラン……」
フランシスはシャロンの手を握り手の甲にキスをした。
「ありがとうフラン、あなたが騎士になるのを待っているわ」
「ああ、待っていて欲しい」
「話はかわるけれど、婚約破棄はいつかしら?」
「え……」
「ふふふ」
笑顔で婚約破棄の話をするシャロンにフランシスは息を吐いていた。
「もう少し待って欲しいんだ。フォスティヌが学園を卒業する前には話そうと思っている…それに、僕もまだ騎士学校を卒業していない事もあって、騎士となった僕が君のご両親に挨拶をしたいと思っている」
フランシスはシャロンの手を握りしめ婚約破棄は待って貰うように話をした。
「何年も婚約破棄を待ってくれる女性はわたくしだけかしら?」
「シャロン…」
「何年でもあなたを待ちたいわ…でも、お父様が……」
「何かあったのか?」
フランシスは心配そうな顔でシャロンをじっと見ていた。
「……何かあったと言うわけではないのだけれど…最近食卓で騎士の話をするの」
「騎士の話?」
「ええっ…わたくしの両親が旅行好きなのは知っているでしょう?」
「ああ、だから君の屋敷にも行けるし感謝している」
「以前、旅行先でカバンを取られた事があったみたいなの」
「カバン!?それで…」
「犯人が逃げている所を通りすがりの騎士が助けてくれたとお父様は言っていたわ」
「その騎士が取り押さえカバンを取り返してくれたんだ。凄いな…僕もその騎士の様になりたいな」
フランシスは騎士に興味を持っシャロンの両親が分かる気がして自分も早く騎士になって、シャロンを迎えたいとシャロンを見つめていた。
「その事があって、両親は食卓でその騎士の話をするようになったの」
「犯人を取り押さえた騎士なんだ。会話をするのは分かるような気がするよ」
笑顔を見せるフランシスにシャロンは少し俯き声に出した。
「……その騎士にわたくしと婚約を望んでいるの…」
「えっ!?」
フランシスは驚き笑顔が驚きの顔に変わった。








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