身代わりの花は包愛に満たされる

天宮叶

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僕の可愛い弟

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窓から差す朝日に包まれながら、弟であるオリビアの銀糸のような髪を櫛で梳かしてあげる。手からゆっくりと流れ落ちていく毛束は、光を受けて羨ましいほどに輝いていた。

「ねえ、今日はジルバート様が来る日でしょう?」
「うん。どうして?」

 ジルバート様は僕が十二歳のときに婚約した子爵家の子息だ。実家であるラミレス男爵家は、元々商人からの成り上がりの家計だ。純粋な貴族の血を引いていないためバカにされることも多い。そのため、父親同士が故意にしていることをきっかけに、歳が近く花人かじんである僕と、天人あまびとであるジルバート様の婚姻が成立した。

この世には男女の性別の他に、花人と天人、そして常人という第二性別が存在する。天人と花人は人口の一割ほどしか居らず、天人はカリスマ性を、そして花人は男女関係なく子供を産むことのできる先天的な能力を持っている。

花人と天人の間に出来た子供は、生まれつき優れた能力と容姿を待つ天人になることが多い。そのため国では花人はとても大切で特別な存在として扱われている。

また定期的に起こる花人の発情期に、天人が花人の項を噛むことで番契約というものが成立する。

番契約はいわば永遠の誓いだ。発情期に入ると香る花のような匂いフェロモンは、番契約を結ぶことでその相手にしか香らなくなる。

僕とジルバート様の婚姻が決まったのも、貴族の血を受け継いだ天人をラミレス男爵家に欲したためだった。

「ジルバート様に会うなら身なりを整えないといけないでしょう。アルビーもそんな格好をしていないで、着飾ったらどう?僕の服を貸してあげる」

純粋無垢な笑顔を向けられて、思わず苦笑いをこぼしてしまう。

オリビアは生まれつき身体が弱い。一時期は二十歳まで生きられるかわからないと医者に言われていたほどだ。その病弱さと、社交界で深窓の女神とまで言われるほどの美しい容姿のせいか、両親はオリビアをとことん溺愛している。

新しい衣装、風通しのいい広い部屋。欲しいものを一つ答えれば、両親はオリビアのために戦地にだって赴くだろう。

対象的に、僕は地味で目立たない容姿をしている。オリビアの髪とは並べるのもおこがましいほどにくすんだ灰銀の髪。ソバカスの散りばめられた白い肌に、食べても太らないせいか、身体も細く不健康さを際立たせている。

唯一オリビアと兄弟だとわかるのは、彼と同色の空色の瞳のおかげだ。

両親が弟にお金を使うぶん、僕はオリビアの着なくなったお古をもらって生活している。僕よりも身体の小さなオリビアの服は、丈が合わないけれど我慢するしかない。兄である僕がわがままを言うわけにもいかないから。

今着ているのも、オリビアのお下がりだった。傍から見ればみっともなく見えても、僕にとっては一張羅。

「どの服を着るの?」

クローゼットを開けると、オリビアが嬉しそうにベッドから降りてきた。長い髪が動くたびに揺れていて、可憐だ。



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