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宮廷編2

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劉明様の本心を垣間見た日から、少しだけ彼に歩み寄って見ようと思えるようになって来ていた。否定ばかりしていても仕方ない。もしかしたら、話し合えばこのどうしようもできない三人の関係にも、解決策が見いだせるかもしれないと思い始めてきた。

「仔空様、お手紙をお持ちしました」
「……燃やしておいて」
「かしこまりました」

でも、相変わらず静龍様がくれる手紙には目を通していない。きっと読んでしまったら、決心もなにもかもが消えてしまう気がするから。
それなのに、手紙を送らないで欲しいと伝えることは出来ないでいる。これが妃としてあるまじき行為だとしても、少しでいいから静龍様と繋がっている証が欲しかった。

「お聞きかもしれませんが、静龍様の婚姻の準備が進んでおります。一言でも良いので、お返事を書いてあげてはくれませんか?」
「……それは無理なんだ」

僕たちの関係はなにも進まない。僕は静龍様を諦めきれないし、劉明様を好きになることもできない。現状に立ち往生したまま、僕はどこにも心を運べない。

「……困らせてしまいましたね」
「美雨、ありがとう……」

彼女が僕たちのことを思って発言してくれていることはわかっている。それに、静龍様は恩人だ。彼女が静龍様の肩を持つのも、手紙を断らずに持ってくることも責めたりしないし、そんな資格もない。
ただ、この宮廷内で唯一僕に苦言を呈しながらも寄り添ってくれる美雨に感謝している。

美雨が部屋を出ていくと、入れ替わるように劉明様が入ってきた。会話を聞かれたかもしれないと焦ったけれど、なにも聞かれることはなかった。

「本日はどうされたのですか?」
「最近ちまたで野盗が増えておる。その対策でしばらく会いに来れぬ。だからこれを持ってきた」

小箱を手渡される。蓋を開けると、中には空色の佩玉はいぎょく・腰飾りが入っていた。繊細に彫られた模様が美しい。

「着けてやろう」

箱から佩玉を取り出した劉明様が、僕の腰に自らの手で着けてくれる。至近距離に近づくと、彼から漂う甘い香りが鼻腔をくすぐり、心が揺すぶられてしまう。
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