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なにこれ
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『よお、元気してたか?』
「…突然なに?」
『なんか悟冷たくね?』
貫くんに名前を呼ばれてぎゅっと心臓が痛くなった気がした。彼は俺と二人きりで話す時だけこうやって俺のことを下の名前で呼んでいた。
高校のグループ内で俺だけは貫くんがメンバーに誘ってくれて加わった感じだったから少し浮いていて、だからなのかみんな俺の事だけは苗字で呼んでいたんだ。
「…要件は?」
早く終わらせたくて急かすように言えば貫くんは、あー…って少し迷うような言いずらそうな意味の無い単語を言ってから話を切り出してきた。
『…金借してくれない?』
「……なんで?」
貫くんの言葉になんとも言えない感情が身体中を駆け巡って全身がぶるぶると震えた。
結局そうなんだ…確認するまでもなかった。
彼のことを唯一無二の親友だと思っていたのは俺だけでやっぱり彼にとって俺はただの金ヅルだったんだ。
俺の大好きだった貫くんは幻に過ぎなかったんだ。
『実は…母さんが手術することになって入院してて金がいるんだ…』
「それで金ヅルの俺に連絡してきたわけ」
『…え…何言って…そんなことおもってねえよ』
貫くんはシングルマザーの家庭でお母さんと二人暮しなのは知っていたし、彼のお母さんにも何度も会ったことがあった。
だから胸が痛まないかと言えば嘘になるけれど、それでも同情する気にはなれなかったし仮に彼の話が本当でも嘘でもどうでもいいとすら思えた。
「俺聞いてたんだ。皆で俺の事金ヅルって言って笑ってたの」
『…っ!聞いてたのか?…あれはっ、ちがうっんだって!!』
「…別に今更どーでもいいよ。…いくら必要なんだよ。金やるからそれ受け取ったらもう俺に関わらないでくれるか」
ずっと心の奥底で燻っていた熱が一気に引いていくような感覚に寒気すら覚える。
もう心の中は無茶苦茶で、訳が分からない。
『悟、話聞けって!』
「いいから早く金額言えよ。俺もう寝るからさ」
『…っ……30万…』
「分かった。入れとくから口座番号メッセージで送っといて。じゃあな」
『ちょっ!まっ…』
貫くんの言葉も聞かずに通話を切ると俺はスマホの電源を切ってテーブルに置いた。
もう何も見たくもないし聞きたくもなくて、なにもかも信用出来ないって思う。
結局、金なんだ…。
俺を人と繋ぐものはお金しかなくて、そんなもので作った嘘の人間関係なんてすぐに破綻してしまうからその度に俺はこうやって傷ついてまた1つ人を信じれなくなる。
きっと明日の朝LINEを見たら当たり前の様に貫くんから口座番号が送られていて、俺は律儀にもそこに大金を振り込んでやるんだ。
高校の時は親から金を貰っていたけれど今は働いているから自分でこつこつ貯めた金からわざわざ……そんなことのために貯めたんじゃないのに…。
「…なにこれ…」
ほんとに虚しい…。
月見さんともいつかこんな風に終わる日が来るんだろうか…。
泣きたい気持ちなのに涙なんて出なくて、俺はこの苛立ちや喪失感を無くしたくてシャワーへと向かった。
「…突然なに?」
『なんか悟冷たくね?』
貫くんに名前を呼ばれてぎゅっと心臓が痛くなった気がした。彼は俺と二人きりで話す時だけこうやって俺のことを下の名前で呼んでいた。
高校のグループ内で俺だけは貫くんがメンバーに誘ってくれて加わった感じだったから少し浮いていて、だからなのかみんな俺の事だけは苗字で呼んでいたんだ。
「…要件は?」
早く終わらせたくて急かすように言えば貫くんは、あー…って少し迷うような言いずらそうな意味の無い単語を言ってから話を切り出してきた。
『…金借してくれない?』
「……なんで?」
貫くんの言葉になんとも言えない感情が身体中を駆け巡って全身がぶるぶると震えた。
結局そうなんだ…確認するまでもなかった。
彼のことを唯一無二の親友だと思っていたのは俺だけでやっぱり彼にとって俺はただの金ヅルだったんだ。
俺の大好きだった貫くんは幻に過ぎなかったんだ。
『実は…母さんが手術することになって入院してて金がいるんだ…』
「それで金ヅルの俺に連絡してきたわけ」
『…え…何言って…そんなことおもってねえよ』
貫くんはシングルマザーの家庭でお母さんと二人暮しなのは知っていたし、彼のお母さんにも何度も会ったことがあった。
だから胸が痛まないかと言えば嘘になるけれど、それでも同情する気にはなれなかったし仮に彼の話が本当でも嘘でもどうでもいいとすら思えた。
「俺聞いてたんだ。皆で俺の事金ヅルって言って笑ってたの」
『…っ!聞いてたのか?…あれはっ、ちがうっんだって!!』
「…別に今更どーでもいいよ。…いくら必要なんだよ。金やるからそれ受け取ったらもう俺に関わらないでくれるか」
ずっと心の奥底で燻っていた熱が一気に引いていくような感覚に寒気すら覚える。
もう心の中は無茶苦茶で、訳が分からない。
『悟、話聞けって!』
「いいから早く金額言えよ。俺もう寝るからさ」
『…っ……30万…』
「分かった。入れとくから口座番号メッセージで送っといて。じゃあな」
『ちょっ!まっ…』
貫くんの言葉も聞かずに通話を切ると俺はスマホの電源を切ってテーブルに置いた。
もう何も見たくもないし聞きたくもなくて、なにもかも信用出来ないって思う。
結局、金なんだ…。
俺を人と繋ぐものはお金しかなくて、そんなもので作った嘘の人間関係なんてすぐに破綻してしまうからその度に俺はこうやって傷ついてまた1つ人を信じれなくなる。
きっと明日の朝LINEを見たら当たり前の様に貫くんから口座番号が送られていて、俺は律儀にもそこに大金を振り込んでやるんだ。
高校の時は親から金を貰っていたけれど今は働いているから自分でこつこつ貯めた金からわざわざ……そんなことのために貯めたんじゃないのに…。
「…なにこれ…」
ほんとに虚しい…。
月見さんともいつかこんな風に終わる日が来るんだろうか…。
泣きたい気持ちなのに涙なんて出なくて、俺はこの苛立ちや喪失感を無くしたくてシャワーへと向かった。
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