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第三章
遠慮(2)
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アケルは一切振り返ることなく巨大迷路の中を進んでいた。
「どうしようケルビム⁉ 早くアケルのところまで行かなきゃ!」
私が急かすと、ケルビムは肯き階段を降りようとした。
「ちょっと待って! 私にいい考えがある!」
「おぉ! その考えとは?」
私は自分が閃いた作戦をケルビムに話した。それは誰かひとりがここからアケルまでの道のりを目で追い、それを迷路に入っているもうひとりに上から口頭で伝える作戦だ。
この作戦なら迷うことなく一直線にアケルのところまで辿り着けるはず。
作戦を聞き終わったケルビムが言った。
「さすが千里様! 御名案でございます! さっそくわたくしが下に降りて迷路に入りますので、上からアケル様までの道のりを御指示くださいませ」
そう言うとケルビムは階段を降りて、鉄製の扉を抜けて巨大な迷路の中へと入っていった。
私はさっそくスタート地点からアケルの歩いている場所までの道のりを目で辿った。最初の突き当たりは左だ!
ケルビムがスタート地点から進み最初の突き当たりで私の指示を待つため上を見上げたのが見えた。
「左よ! ひだりー!」
私はジェスチャーを交えてケルビムに叫んだ。しかしケルビムは突っ立ったままだ。「左よ!」と私は繰り返したが、ケルビムは左に進もうとはせず、再び入口の鉄製の扉へと向かい走り出すとそれを抜けて、階段を駆け戻って私のところまでやってきた。
「どうしたの? ケルビム?」
私がケルビムに訊ねるとケルビムは大きく肩で息をしている。呼吸が整ってくるとケルビムが言った。
「千里様! どうやらこの作戦は失敗に終わった模様でございます」
「どういうこと? なぜ失敗なの?」
ケルビムは最後に大きく息を吸い、そして一気に吐いた。
「見えないのでございます。突き当たりまで行き、指示を仰ぐため千里様を見上げましたが、あの場所から上を見上げても天井しか見えないのでございます。もちろん千里様の声もまったく聞こえてきませんでした」
そんな! すごくよい作戦だと思ったのに!
「仕方ないわね、ここからアケルの道のりを覚えれるだけ覚えて進むしかなさそうね」
私とケルビムはアケルまでの道のりを記憶しようと再び階下の迷路に目をやったが、すでにそのときにはアケルの姿は辿りきることができないほど先へと進んでしまっていた。私たちがここで随分と時間を使ってしまったせいなのか……。
「行くしかないようでございますね」
ケルビムが私に言った。
「そうね、とりあえず行けるところまで行ってみましょう」
私たちは階段を降りると鉄製の扉をくぐり巨大迷路の中へと入っていった。
「どうしようケルビム⁉ 早くアケルのところまで行かなきゃ!」
私が急かすと、ケルビムは肯き階段を降りようとした。
「ちょっと待って! 私にいい考えがある!」
「おぉ! その考えとは?」
私は自分が閃いた作戦をケルビムに話した。それは誰かひとりがここからアケルまでの道のりを目で追い、それを迷路に入っているもうひとりに上から口頭で伝える作戦だ。
この作戦なら迷うことなく一直線にアケルのところまで辿り着けるはず。
作戦を聞き終わったケルビムが言った。
「さすが千里様! 御名案でございます! さっそくわたくしが下に降りて迷路に入りますので、上からアケル様までの道のりを御指示くださいませ」
そう言うとケルビムは階段を降りて、鉄製の扉を抜けて巨大な迷路の中へと入っていった。
私はさっそくスタート地点からアケルの歩いている場所までの道のりを目で辿った。最初の突き当たりは左だ!
ケルビムがスタート地点から進み最初の突き当たりで私の指示を待つため上を見上げたのが見えた。
「左よ! ひだりー!」
私はジェスチャーを交えてケルビムに叫んだ。しかしケルビムは突っ立ったままだ。「左よ!」と私は繰り返したが、ケルビムは左に進もうとはせず、再び入口の鉄製の扉へと向かい走り出すとそれを抜けて、階段を駆け戻って私のところまでやってきた。
「どうしたの? ケルビム?」
私がケルビムに訊ねるとケルビムは大きく肩で息をしている。呼吸が整ってくるとケルビムが言った。
「千里様! どうやらこの作戦は失敗に終わった模様でございます」
「どういうこと? なぜ失敗なの?」
ケルビムは最後に大きく息を吸い、そして一気に吐いた。
「見えないのでございます。突き当たりまで行き、指示を仰ぐため千里様を見上げましたが、あの場所から上を見上げても天井しか見えないのでございます。もちろん千里様の声もまったく聞こえてきませんでした」
そんな! すごくよい作戦だと思ったのに!
「仕方ないわね、ここからアケルの道のりを覚えれるだけ覚えて進むしかなさそうね」
私とケルビムはアケルまでの道のりを記憶しようと再び階下の迷路に目をやったが、すでにそのときにはアケルの姿は辿りきることができないほど先へと進んでしまっていた。私たちがここで随分と時間を使ってしまったせいなのか……。
「行くしかないようでございますね」
ケルビムが私に言った。
「そうね、とりあえず行けるところまで行ってみましょう」
私たちは階段を降りると鉄製の扉をくぐり巨大迷路の中へと入っていった。
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