ホテルエデン

虹乃ノラン

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第三章

遠慮(13)

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 私は客室を出ると、やはりそこら中にホロウたちが生を求め蔓延っている。
 私は同じように鏡で照らし、ホロウたちを撃退していった。
 ホロウたちは消し飛んでいくだけで、中からアケルが出てくることはなかった。
 とにかく、アケルを飲み込んだホロウを探さなきゃ!
 でも、いったいどこにいて、どいつがアケルを飲み込んだホロウなのか見分けがつかない。私はやみくもに迷路の中を駆け回りながらアケルを取り込んだホロウを探す。
 きっと他のホロウと違いがあるはずだ!
「アケルー!」
 私はアケルの名前を叫びながら走った。私の呼び声に反応するかのようにワラワラとホロウたちが集まってくる。
 さすがにこれだけの数のホロウたちを消し去るには手鏡程度の物ではきついと感じた私はその場から離れ、ホロウたちを分散させるしかないと考えた。
 どのホロウも見る限り、他のホロウたちとなんの変わりもなく、どれも一緒に見える。
「いったい、どれがアケルを飲み込んだホロウなのよ!」
 時間が経つにつれ、ホロウたちは分裂しその数をどんどん増やしていく。
 すでにこのフロアはどこを走っても、どこへ逃げても、ホロウのいないところがないほど、その数を増やしていた。
 迷路の中を走り回り、私のスタミナも徐々に切れ始めていた。
 次のフロアまで行かなければ、増殖を続けるホロウたちから逃れ、切れかかったスタミナを回復することなどできないだろう。
 でも、アケルはきっとまだこのフロアをさ迷っているに違いない。
 あぁ、こんなときケルビムがいてくれたなら心強いのに……。
 私をホロウから守るために犠牲になったケルビムを思い、私は心が痛くなった。
 そうだ、ケルビムにもアケルを頼まれてるんだ。せっかく救ってもらったのに、こんな弱音を吐いてたらケルビムに申し訳ない!
 せめてアケルを取り込んだホロウだけでも見つけることができたら……。 
 行く手を阻むホロウたちを消し去りながら私は進む。相変わらず消し去ったホロウたちからはアケルの姿は見えない。私はあのタイミングでホロウから出ることができたけれど、もし出れなかったとしたら?
 それを考えただけでもゾッとした。
 ホロウの中身として取り込まれたはずなのに、いつの間にか意識はホロウに吸い上げられ、私自身がホロウのように中身を求めさ迷い続けたんだから。
 きっと今ごろアケルも自分がいったいどうなってしまうのか不安で堪らないことだろう。とにかくアケルを見つけないと! でも、どうすれば……。
 私の目の前に広い踊り場と、上に続く大きな階段が見えた。がむしゃらに迷路を進むうちに、このフロアの出口に着いてしまったらしい。
 どうして望んでもないときに限ってゴールに着いてしまうのか。
 だめ! アケルを見つけていない以上、まだ先には進めない!
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