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◇
春らしい水色の空に、やわらかな雲が流れている。橋を渡り、恩人のリュークさんが働く鍛冶屋にたどり着いた。
「こんにちは。リュークさんはいらっしゃいますか?」
「リュークに用事? ああ、リュークが助けたリス獣人って君のことかな」
「はい、今日はお礼に来ました」
「もうすぐ戻るから、商品見ながら待ってて」
リュークさんが作ったものを見せてもらう。高そうな剣や刀もあるけど、お洒落な生活雑貨も沢山置いてあった。淡い桜色のタンブラーに惹かれて手に取る。光の当たり方で色が変化するのが楽しくて、くるくるまわす。
こんな素敵なものを作るリュークさんに会うと思うと、胸がそわそわする。
「なあ、タンブラー、回しすぎ」
「っ、す、すみません!」
低い声に、慌てて棚に戻した。振り向くと、逆立てた青髪に金色のメッシュ、赤くて鋭い目つきの男性が腕組みをして睨んでいる。怖くて尻尾がぼわっと膨らみ、立ちすくむ。
「リュークおかえり。リスちゃん、リュークは見た目は少し怖いけど、いい奴だから」
いつの間にか隣に来ていたトナカイ獣人は、わたしの背中を遠慮なく押した。色々心の準備ができていなくて、リュークさんの前に勢いよくつんのめる。
「おい、大丈夫か?」
心配する声にそろりと顔をあげる。リュークさんは、わたしに手を差し伸べてくれていた。
ああ、溺れたときに助けてくれたのは、腕を掴んでくれたのは、リュークさんのこの手だったと実感する。
見た目は怖いけど、優しい人だとわかったら頬が緩んでいく。
「リュークさん、この前は溺れていたのを助けてくださって、本当にありがとうございました! お見舞いのお花、すごく嬉しかったです。キッシュを焼いたので、よかったら食べてください」
感謝の気持ちを込めて、キッシュをぎっしり詰めたバスケットを渡した。
「これ、作ったの?」
「はい! わたしはミーナと言います。街にあるパン屋でキッシュを作っています」
「……ミーナちゃんって言うんだな。元気になってよかった──俺、キッシュすげー好きだから嬉しい」
「本当ですか? 新作も作ったので、みなさんで食べてください」
バスケットをのぞき込むリュークさんに、キッシュの説明をした。赤い瞳をきらきらさせて聞いてくれるリュークさんに、なんだか胸がくすぐったい。
「すげー旨そう。ありがとな」
「こちらこそありがとうございました──わっ!」
帰ろうと思ったら、トナカイの角がニョキっと現れた。バクバク跳ねる心臓を押さえて、トナカイ獣人を見上げた
「ごめんね。へえ、すごく美味しそうだね。ミーナちゃんは、まだ時間あるの?」
「えっ、はい。今日はお休みなので時間は大丈夫ですけど……?」
「新作なら、感想聞きたいんじゃない?」
「あっ、それは聞けたら嬉しいですね……?」
みんなで食べてくれるのかなと首を傾げる。トナカイ獣人は、そうでしょう、とにこにこ笑ってうなずく。
「リュークは今から昼休憩だから、一緒に食べて感想聞いておいでよ」
トナカイ獣人に力強く背中を押される。
戸惑いの声をあげているのに、わたしもリュークさんも店の外に追い出され、唖然とした。リュークさんと顔を見合わせて、吹き出した。
春らしい水色の空に、やわらかな雲が流れている。橋を渡り、恩人のリュークさんが働く鍛冶屋にたどり着いた。
「こんにちは。リュークさんはいらっしゃいますか?」
「リュークに用事? ああ、リュークが助けたリス獣人って君のことかな」
「はい、今日はお礼に来ました」
「もうすぐ戻るから、商品見ながら待ってて」
リュークさんが作ったものを見せてもらう。高そうな剣や刀もあるけど、お洒落な生活雑貨も沢山置いてあった。淡い桜色のタンブラーに惹かれて手に取る。光の当たり方で色が変化するのが楽しくて、くるくるまわす。
こんな素敵なものを作るリュークさんに会うと思うと、胸がそわそわする。
「なあ、タンブラー、回しすぎ」
「っ、す、すみません!」
低い声に、慌てて棚に戻した。振り向くと、逆立てた青髪に金色のメッシュ、赤くて鋭い目つきの男性が腕組みをして睨んでいる。怖くて尻尾がぼわっと膨らみ、立ちすくむ。
「リュークおかえり。リスちゃん、リュークは見た目は少し怖いけど、いい奴だから」
いつの間にか隣に来ていたトナカイ獣人は、わたしの背中を遠慮なく押した。色々心の準備ができていなくて、リュークさんの前に勢いよくつんのめる。
「おい、大丈夫か?」
心配する声にそろりと顔をあげる。リュークさんは、わたしに手を差し伸べてくれていた。
ああ、溺れたときに助けてくれたのは、腕を掴んでくれたのは、リュークさんのこの手だったと実感する。
見た目は怖いけど、優しい人だとわかったら頬が緩んでいく。
「リュークさん、この前は溺れていたのを助けてくださって、本当にありがとうございました! お見舞いのお花、すごく嬉しかったです。キッシュを焼いたので、よかったら食べてください」
感謝の気持ちを込めて、キッシュをぎっしり詰めたバスケットを渡した。
「これ、作ったの?」
「はい! わたしはミーナと言います。街にあるパン屋でキッシュを作っています」
「……ミーナちゃんって言うんだな。元気になってよかった──俺、キッシュすげー好きだから嬉しい」
「本当ですか? 新作も作ったので、みなさんで食べてください」
バスケットをのぞき込むリュークさんに、キッシュの説明をした。赤い瞳をきらきらさせて聞いてくれるリュークさんに、なんだか胸がくすぐったい。
「すげー旨そう。ありがとな」
「こちらこそありがとうございました──わっ!」
帰ろうと思ったら、トナカイの角がニョキっと現れた。バクバク跳ねる心臓を押さえて、トナカイ獣人を見上げた
「ごめんね。へえ、すごく美味しそうだね。ミーナちゃんは、まだ時間あるの?」
「えっ、はい。今日はお休みなので時間は大丈夫ですけど……?」
「新作なら、感想聞きたいんじゃない?」
「あっ、それは聞けたら嬉しいですね……?」
みんなで食べてくれるのかなと首を傾げる。トナカイ獣人は、そうでしょう、とにこにこ笑ってうなずく。
「リュークは今から昼休憩だから、一緒に食べて感想聞いておいでよ」
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戸惑いの声をあげているのに、わたしもリュークさんも店の外に追い出され、唖然とした。リュークさんと顔を見合わせて、吹き出した。
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