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青空にもくもくした雲が浮かび、庭の向日葵が元気に咲いている。リュークとわたしは、休みになると会うようになっていた。
今日は、秋の新作『秋鮭とキノコのキッシュ』と『ごろごろ栗のキッシュ』の試食をお願いしていた。リュークが秋鮭のキッシュに迷わず手を伸ばす。
「リュークってお魚好きだよね?」
「おう、ペンギン獣人だからな」
「リュークって人族じゃなかったの?!」
リュークの返事にびっくりして、目がまんまるになった。
「ん、言ってなかったか?」
「聞いてない! 全然わからなかった……」
「よく言われる。でも、ミーナのこと助けられたのも、泳ぎの得意なペンギンだったからだぜ」
「ペンギンは、水を飛ぶように泳ぐって言うもんね。本当にありがとう」
美味しそうに頬張るリュークをじっと見つめる。
リス獣人のわたしは、耳と尻尾がシマリスっぽい。リュークにペンギンらしさを探しても、クチバシはないし、腕も羽毛は生えていない。じろじろ見ていたら、ニカッと笑ったリュークと目が合った。
「ミーナはわかってないな。このワイルドな髪とイカした金髪が特徴だぜ」
「その髪型、ペンギンの特徴だったんだ!」
「超カッコイイだろ!」
「えっ、怖い人だと思ったよ」
「えっ、マジ?」
鍛冶屋で思っていたことを口にしたら、栗のキッシュを持ったまま固まっている。怖いのに、かわいい。
「うん、マジ。今は怖くないよ。怖い気持ちは、どんぐりと一緒に埋めちゃった」
「なんだそれ」
リュークと視線がぶつかって、一緒に笑う。ずっとこんな時間が続いたらいいなと思うと、心臓がムズムズする。
「ミーナ」
笑っていたリュークの顔がまじめになったので、つられて尻尾を正した。
「俺、鍛冶屋をひらくのが夢なんだ」
「? うん」
「もうすぐ親方から独り立ちの許可が出そうなんだ」
「おめでとう! 今度、お祝いしなくちゃだね」
なぜこんな話が始まったかわからないけど、夢が叶いそうなリュークの話に自然と笑顔になっていく。
「春になったら、故郷に戻って鍛冶屋をやる。故郷に帰ったら、ミーナに会えなくなる」
「え…………?」
リュークと会えなくなるなんて、考えたことがなかった。これからも会えるって思っていたから、驚きすぎて言葉も出てこない。
「俺、ミーナのことが好きだ──ミーナが作るキッシュも旨いし、ちっさい口で食べてる仕草もかわいいし、がんばって働いてる姿も好きだ。ミーナの大事なもんが、全部ここにあるの知ってるから、好きだって言わないで、友達のまま別れようと思ってた。でも、」
言葉を切ったリュークに見つめられる。赤い瞳に熱がこもっていて、目をそらせない。
「やっぱりミーナが好きだ! 俺の故郷で結婚してほしい! でも、だめならキッパリは無理だけど、諦めて故郷に行く」
「……キッパリじゃないんだ?」
「キッパリは無理だろ?」
真面目な話だったのに、リュークが拗ねたように笑うから吹き出してしまった。緊張してたのがほぐれて、素直な気持ちが口からこぼれる。
「わたしもリュークが好き。でも、一緒にリュークの故郷に行くのは、ごめん──自信ない」
ペンギンの住むのは、北にある氷の国。寒すぎると冬眠してしまうリス獣人のわたしが、一年中氷のある国で暮らすのは無理だと思う。
「だよな…………、? えっ、マジ? ミーナ、俺のこと好きなの?」
「えっ、う、うん……」
「ミーナ、悪い! 俺、諦めるの諦めたわ。好きな子に好きって言われて諦めるなんて、絶対無理」
「ええ──っ?!」
「ペンギンは結婚する番相手を決めたら一生変えないんだ。俺は、ミーナがいい。お試しでもいい! 春まででもいい! 俺と付き合ってほしい」
変わり身の早さに素っ頓狂な声をあげたのに、リュークがニカッと笑ったから、つられて笑ってしまった。
向日葵にしましまの種がずっしり実る頃、わたしとリュークは春までの恋人になった。
青空にもくもくした雲が浮かび、庭の向日葵が元気に咲いている。リュークとわたしは、休みになると会うようになっていた。
今日は、秋の新作『秋鮭とキノコのキッシュ』と『ごろごろ栗のキッシュ』の試食をお願いしていた。リュークが秋鮭のキッシュに迷わず手を伸ばす。
「リュークってお魚好きだよね?」
「おう、ペンギン獣人だからな」
「リュークって人族じゃなかったの?!」
リュークの返事にびっくりして、目がまんまるになった。
「ん、言ってなかったか?」
「聞いてない! 全然わからなかった……」
「よく言われる。でも、ミーナのこと助けられたのも、泳ぎの得意なペンギンだったからだぜ」
「ペンギンは、水を飛ぶように泳ぐって言うもんね。本当にありがとう」
美味しそうに頬張るリュークをじっと見つめる。
リス獣人のわたしは、耳と尻尾がシマリスっぽい。リュークにペンギンらしさを探しても、クチバシはないし、腕も羽毛は生えていない。じろじろ見ていたら、ニカッと笑ったリュークと目が合った。
「ミーナはわかってないな。このワイルドな髪とイカした金髪が特徴だぜ」
「その髪型、ペンギンの特徴だったんだ!」
「超カッコイイだろ!」
「えっ、怖い人だと思ったよ」
「えっ、マジ?」
鍛冶屋で思っていたことを口にしたら、栗のキッシュを持ったまま固まっている。怖いのに、かわいい。
「うん、マジ。今は怖くないよ。怖い気持ちは、どんぐりと一緒に埋めちゃった」
「なんだそれ」
リュークと視線がぶつかって、一緒に笑う。ずっとこんな時間が続いたらいいなと思うと、心臓がムズムズする。
「ミーナ」
笑っていたリュークの顔がまじめになったので、つられて尻尾を正した。
「俺、鍛冶屋をひらくのが夢なんだ」
「? うん」
「もうすぐ親方から独り立ちの許可が出そうなんだ」
「おめでとう! 今度、お祝いしなくちゃだね」
なぜこんな話が始まったかわからないけど、夢が叶いそうなリュークの話に自然と笑顔になっていく。
「春になったら、故郷に戻って鍛冶屋をやる。故郷に帰ったら、ミーナに会えなくなる」
「え…………?」
リュークと会えなくなるなんて、考えたことがなかった。これからも会えるって思っていたから、驚きすぎて言葉も出てこない。
「俺、ミーナのことが好きだ──ミーナが作るキッシュも旨いし、ちっさい口で食べてる仕草もかわいいし、がんばって働いてる姿も好きだ。ミーナの大事なもんが、全部ここにあるの知ってるから、好きだって言わないで、友達のまま別れようと思ってた。でも、」
言葉を切ったリュークに見つめられる。赤い瞳に熱がこもっていて、目をそらせない。
「やっぱりミーナが好きだ! 俺の故郷で結婚してほしい! でも、だめならキッパリは無理だけど、諦めて故郷に行く」
「……キッパリじゃないんだ?」
「キッパリは無理だろ?」
真面目な話だったのに、リュークが拗ねたように笑うから吹き出してしまった。緊張してたのがほぐれて、素直な気持ちが口からこぼれる。
「わたしもリュークが好き。でも、一緒にリュークの故郷に行くのは、ごめん──自信ない」
ペンギンの住むのは、北にある氷の国。寒すぎると冬眠してしまうリス獣人のわたしが、一年中氷のある国で暮らすのは無理だと思う。
「だよな…………、? えっ、マジ? ミーナ、俺のこと好きなの?」
「えっ、う、うん……」
「ミーナ、悪い! 俺、諦めるの諦めたわ。好きな子に好きって言われて諦めるなんて、絶対無理」
「ええ──っ?!」
「ペンギンは結婚する番相手を決めたら一生変えないんだ。俺は、ミーナがいい。お試しでもいい! 春まででもいい! 俺と付き合ってほしい」
変わり身の早さに素っ頓狂な声をあげたのに、リュークがニカッと笑ったから、つられて笑ってしまった。
向日葵にしましまの種がずっしり実る頃、わたしとリュークは春までの恋人になった。
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