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各章のあらすじ

八章目あらすじ

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 『第八章:泡沫のセイレーン』



 16歳になったテリーには忘れられない事件の記憶がある。
 それはベックス家が所有している『絶対に沈まない船』と謳われていた豪華客船『マーメイド号』が沈む沈没事故であった。
 当時、ベックス家は船に乗らなかった。理由はテリーが流行り風邪に当たり、休ませるためであったが、そんな時に事故が起きてしまった。

 多くの乗船客が亡くなったことで、怒りの矛先は船の所有者であるベックス家に向けられた。多額の賠償金を払えきれず、ベックス家は破産への未来へと向かったのだ。

 テリーは愛する人、クレアと関係が結ばれたことにより、いつも以上に意気込み、約一年かけて『厄除け聖域巡りの旅』に出かけることとなった。絶対に風邪を引かずに船で何が起きたかを確かめるために。

 そんな努力も虚しく、当日、テリーは自力で動くことも出来ないほどの深刻な風邪を引いてしまう。しかし、テリーの生きるための執着心はすさまじい。サリアやメニーの手を借りながらも無事に沈没する未来のあるマーメイド号へ乗船。新人クルーのマチェットを率いて、テリーの罪滅ぼし活動が幕を上げる。

 歩き回る中、テリーは憎き因縁の相手、歌手のイザベラと出会う。彼女は工場時代にテリーがギロチン台に連れて行かれるまでテリーを酷く虐めてきた囚人である。麻薬所持、密売の罪で捕まったイザベラは、何故かベックス家全員を恨み、そして夜な夜な必ずうなされている女であった。テリーはそんなイザベラに仕返しをしようとするも熱で頭が働かず、逆にイザベラに親切にされてしまう。
 スランプで歌を作ることが出来ず、なおかつマリッジブルーであった彼女はマーメイド号から飛び降りようとするが、協力しようとしたテリーが逆に船から落ちそうになり、それを助けたことにより、イザベラにとってテリーはどんな形であれ命の恩人となった。

 テリーにとって散々な初日であったが、深夜に殺人事件が起きる。一般人として船に忍び込んでいたクレアとリオン、そして反抗期真っ只中のリトルルビィと再会し、事件の真相を追う。

 被害者には特徴があり、それは全てイザベラの知人であることだった。友人や知人が殺され、何も出来ないことに憤慨するイザベラ。調査をしていくうちに異界へと飛ばされ、人魚=セイレーンに襲われていくテリーたち。何も関係ないアリスやメニーまで巻き込まれ、リオン、ソフィア、リトルルビィが戦闘不能になってしまう。

 責任を感じたテリーは今回はクレアに全て任せようと思った夜、サリアから人魚を作ることができる闇魔法が存在することを聞く。
 翌日、とうとうテリー一人がセイレーンに襲われてしまうが、その時、セイレーンが初めてテリーに言葉を発した。

「母さん、やっと見つけた」

 異界へと飛ばされるテリー。そこで見たのは、立派な魔法陣の上に眠るメニーの姿であった。

 無事に現実世界へ戻ってくるテリー。届けられたリオンの手紙からメニーが行方不明であることを知る。テリーが調査のため部屋から抜け出したところ、無意識にセイレーンから取っていた指輪の正体が、マチェットの恋人のものであることが発覚する。セイレーンの正体は、無理矢理中毒者にされたマチェットの恋人のメグが暴走した姿であった。メグを止めるため、クレアがメグと戦い、また、ドロシーにより最強の魔法をかけられたマチェットがメグにキスをし、無事に暴走を止めることに成功する。

 しかし、謎は残る。誰がメグを中毒者にし、船に乗る前から呪いの飴を所持していたのか。

 それはイザベラの姉のアマンダであった。
 人魚の肉を食べさせると永遠の命が手に入ることから、イザベラに永遠の苦しみを与えるため、アマンダは人魚を作り出そうとしていた。

 アマンダとの激戦を繰り広げるが、そこにアマンダの本来の妹であったイザベラが姿を見せ、姉の暴走を止めた隙にキッドがとどめを刺した。中毒者事件はこれにて終りを迎える。

 だが、畳み掛けるように次の事件がやってくる。中毒者事件が終わっても沈没事故は終わってない。沈んだ元凶である氷山が近づき、パニックになるテリー。しかしどうもこれもまた様子がおかしい。氷山が船を追ってくるのだ。

 全ては仕組まれていたことだった。
 沈没事件の犯人は青の魔法使いであるハゥフル。彼女は昔、人魚姫を騙して声を奪い、人魚たちを言葉巧みに騙し、人間との関係に亀裂の溝を深めた魔法使いであった。

 マーメイド号沈没事件は、人々の悲鳴が聞きたいという彼女の欲から引き起こした出来事であった。

 ハゥフルは西の魔女に相当な恨みを持っており、彼女であると勘違いしたテリーを冷水の海に引きずりこみ、テリーに再び命の危機が訪れてしまう。

 それを見かねたドロシーが、ハゥフルをカドリング島の支配者グリンダの領域へと誘い込み、ハゥフルは悲鳴をあげながらグリンダの手である波に潰され、消息不明となった。

 海の底の奥の底のまた奥の深い底にて、赤の魔法使いグリンダは、テリーの中に渦巻く『呪い』を浄化させ、迎えに来たクレアにテリーを任せる。

 無事にたどり着いたカドリング島には、ベックス家の使用人が待っていた。マチェットとメグに別れを告げ、島で遊ぶ一行。一度目の世界ではもう会うことのなかった幼なじみとの再会。そして使用人たちとの再会。また、クロシェの結婚式を無事に済ませ、最終日の夜、全ての元凶であるオズとの再会を果たす。

 カドリング島では手出しはできないとのことでオズと対面するテリー。果たして悪いのは、人間の願いを叶えているオズなのか。それとも願った上で見返りを求める人間なのか、不穏な空気を残したままオズはどこかへと消えていく。

 部屋に戻るテリー。待っているのはクレア。テリーはそこで自分の一族にまつわる呪いと使命をクレアから聞くことになる。

 二度目の世界でテリーが体調を崩したのは、一族の血にかけられた呪いが原因であった。そしてその内容は、ベックス家に血の繋がった親戚がいない最もな理由であり、囚人となったアーメンガードとアメリアヌが死に至った理由でもあった。

 さらに、自分たちの死の先にはメニーがいる。テリーは正直にクレアにメニーが嫌いであると告白する。嫌いだからこそ大切にしてきたふりをしていたと真実を伝える。クレアはそれを受け入れ、それでもそんなテリーが好きであり、テリーもクレアが好きであると、互いの愛を確認しあった。

 後日、イザベラが舞台に立つ。関係者席にはテリーや、テリーが呼んだ人たちがいる。イザベラはファンに囲まれ、麻薬密売の未来には進まず、歌姫としての未来を突き進んでいた。

 テリーたちが楽しむ中、ベックス家に一通の手紙が届いた。それは過去、ベックス家の馬係であったデヴィッド・マルカーンの弟のピーターからの手紙であり、アトリの村で行われる星祭の招待状であった。

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